23 / 48
七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ
はじめての厄災封印らしいですよ
しおりを挟む「ばかなぁ! ばかなぁ、ばかなぁ、ばかなぁ! この体が! この巨体が! 吹き飛ぶだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
いまだ吹き飛ぶ勢いがとまらないオイディプスが叫ぶ。俺はあふれ出る力に手こずりながら、オイディプスを追い空中を駆けていく。
「我が! 我が! 我が! 我が! ワレガワレガワレガァァァァァァァァ!」
オイディプスが翼を広げ上空へ方向を変え飛び上がる! 俺も合わせて向きを変え――やっちまった。力のコントロールに気を取られ戦いに集中しきれてなかった――大きく開いたドラゴンの口にエネルギーが集まっていく。いまさら方向転換しても間に合わねぇ! このまま突っ込む!
「間ぁにあえぇぇぇぇ!」
思考が! 体の……スピードに追い……ていかれる! 空……気を蹴る……足に更に力を込め……る! ドラゴンの……口……の力が! 力が弾ける! 口の中が! 輝いて! その顎に!!
「と……ど、――届けぇ!!!」
闇雲に振り抜いた拳が顎まで届いた!かち上げたオイディプスの顎の中でブレスが発動する。くぐもった爆音――口端から漏れた爆風が俺を吹き飛ばす。砕けた牙のかけらが俺の体のあちこちに突き刺さってくる。
「ワレガ!ワレガ!ワレワレレレレレレレレ!!」
オイディプスが羽ばたいて爪を振りかざす。口の中でブレスが爆発したのにまだ動くのかよ。手や足で空気を押して衝撃波を起こして体勢を立て直す。爪じゃ防御の方法もない。人の皮膚じゃただ裂かれて終わりだ。
爪を振るう腕の軌道を避けて、胸に向けて突進する。胸――心臓あたりに手のひらを添え、腰を落とし深呼吸。鋭く吐く息とともに――放つ。足場を固める地面がないのなら、空気を踏み固めればいい! 今までにない強さで空気を踏み込む。
――ズゥゥゥゥン。
手応えあり。口から大量の血を吹き出し、オイディプスの目から輝きが消える。
「――マスターに提言。箱の行使を推奨――」
「あぁ、わかった」
俺は落ちながらも、なんとか箱を取り出して蓋を開けた。ドラゴンが徐々に光に変って、開かれた箱の中に吸い込まれていく。光の中にたくさんイメージ浮かび上がり、俺の周りを回っている。
――光の鎖で繋がれ、泣き叫ぶ蒼い鱗のドラゴンが映っている。
「人よ、何故だ! 何故、私の子を奪う。何故、私を裏切る」
「全ては我が国を盤石にせんが為――貴方の雛達をより強靭にしなければなりません」
「国を護る役目は果たしてきたではないか!」
「これから国を大きくするためにも、貴方の力が必要なのです」
言いながら女が笑う。液体が入った円筒が四本。それぞれに浮かぶ子供のドラゴンが苦しんで叫んでいる。ドラゴンの子を思う心と絶望が、悲しみになって俺の中に流れ込んでくる――。
――意識を失い暴れるドラゴンと剣を構えた男が映っている。
「俺も親。お前の嘆きはわかるがその鎮め方を知らん――悪く思うな!」
「ウォォォォォォォォォォォン――」
さっきのドラゴンだ。意識がなくただめちゃくちゃに暴れている。威力はあるが隙の多いドラゴンの攻撃を避けながら、男の剣が幾度も振るわれる。嘆きと痛みが混ざり合い、苦しみになって俺の中に流れ込んでくる。
――荒野に佇む竜の像が映っている。
竜の子を実験に使っていた女が竜の石の横で佇んでいた。女の体が崩れ落ち、飛び出した光が竜の体を一周すると、竜の額に吸い込まれていった。石がボロボロと崩れ落ち、石の中から蒼い鱗の竜が現れた。
――蒼い鱗のリザードマン――ライオスが映っている。
街の郊外。足元には夫婦と思われる男女と一人の子供が死んでいる。三人の頭に、腕に、足に、体に、真っ黒な針が幾本も突き刺さっている。そしてすぐ、黒い針が消えた。
――泣き叫ぶ辺境伯が映っているのもあった。
両膝をつき、泣きながら小さな子供の遺骸を抱きしめている。
辺境伯に青い布を巻いたライオスが近づいて、数度言葉をかわして立ち去った。
辺境伯はライオスから渡された薬瓶を思いっきり壁に投げつけた。
――町の郊外、たくさんの人が石化の病で苦しんでいる映像もあった。
――エウリュアがメディの看病をしてる様子もあった。
――小屋の中に横たわる子供達もあった。
これは――厄災の記憶なんだろう。【悲哀の厄災】が起こした一連の出来事が、まとまりもなくただイメージとして俺の周りを回ってる。ありきたりだけど、人々の悲しみそのものが【悲哀の厄災】のエネルギーってことなんだろう。ドラゴンも辺境伯も街の人々も、エウリュアもメディもニックもデジーもヤニス達も、ただ厄災に利用されていただけだったってことか。これが箱に封じられた厄災か。
目まぐるしく変わる映像達が全て箱に吸い込まれた。そして、雲ひとつない月明かりの空から俺は落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜
自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる