箱の中身は最後の希望らしいですよ

いのうえもろ

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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ

剣士足跡

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 俺達は荷物を置くと今後のことを相談した。王城に嘆願書を持っていくにしても、謁見の手続きをしなければいけない為、今日は無理だ。

「で、今日はどうするんだ?」

「謁見の手続きは辺境伯の使いが先に来て進めてるらしいし、今日することは特に無いよ。ねぇ、お姉ちゃん」

「そうねぇ……。あ、私は冒険者ギルドに行ってみる。王都なら姉さんの情報が何かあるかも」

 エウリュアとメディの姉、ステンは、父親である英雄が死んだあと行方不明になっている。国内の情報が集まる王都の冒険者ギルドなら何か情報があるかもな。

「そういうことなら俺もいく」

「メディは留守番しておくね。ちょっと調べたいことあるから」

「わかった、んじゃいこうエウリュア」

「メディひとりで大丈夫?」

「大丈夫だよお姉ちゃん。いってらっしゃーい」

 心配そうなエウリュアをなだめて宿をでると、路地をぐるっとまわって冒険者ギルドに入る。ここの冒険者ギルドは半分が食堂も兼ねているらしい。椅子に座った冒険者達が、見慣れない俺達を値踏みをするような目でみてきやがった。――ので、ちゃんと睨み返しておく。あ、目をそらした。俺の勝ち。
 エウリュアが情報を聞きに受付へ相談してる間、俺はクエストを張り出している掲示板を眺めることにした。

「えーと、スライム駆除銅貨一〇枚、薬草採取銅貨五枚プラス薬草一〇枚追加毎に銅貨五枚――碌なのがないな」

「この街は初めてかい?今の時間じゃ良い案件はとっくになくなっているよ」

 軽装の女がニヤニヤしながら俺に近づいてきた。腰には短剣と小さめの革袋がたくさん。盗賊シーフかな?

「――誰だい?」

「おっと失礼、あたいはシーマ。見た目通りの冒険者だよ。初めて見る顔なんでちょっとご挨拶にね」

 そういって肩に手をまわしてくる。顔が近い。もう一方の手で体をぺたぺた触ってくるr。どうせ俺のサイフを探してるんだろう。だが残念、俺のサイフは【箱】のなかだ。

「ふむ、おばさんはこの辺長いの? グリンソードって聞いたこと無い?」

「おばっ……あたいはまだ二〇代だよ! グリンソード?聞いたことな――いや、あいつか? 笑いながら剣をぶん回す」

「おぉ? さっすが美人のお姉さん! その話詳しく聞かせて!」

「――あんたも大概な性格してるっぽいね。いいよ。でも大した話じゃないからエール一杯でどうだい?」

「OK! ほらよ!」

 俺は、懐の見えないところで箱に触り銅貨二八枚を取り出すとシーマに手渡した。

「一体、どこにしまって――まぁいい、聞いた話なんだけどね」

 シーマの話によると、戦場を渡り歩くやたら強い女の剣士があるそうだ。そいつは笑いながら長大な剣を軽々と振り回し、笑いながら戦うらしい。

「一週間前、前線に向かうために北の門から出ていった――ってのが最後の情報だね。」

「ありがとう!」

「すごく嬉しそうだね。あんたの女なのかい?」

「俺の彼女の姉だよ。きっと喜んでくれる」

「そうかい、ご馳走様。よろしくやってくれ」

 シーマはそう言って、銅貨をジャラジャラ言わせながら食堂に向かっていった。

「今の女の人、誰?」

 エウリュアが戻ってきた。俺が女と話してたことで期限が悪そうだ。

「エウリュア、お姉さんの情報あったか?」

「一週間前までは、この街でクエストを受けていたみたい。最近は来ていないって」

「それだけか?」

「それだけ。で、さっきの女の人は誰?」

「一週間前か――時期は合うな。さっきの人はシーマ。グリンソードお姉さんのお姉さんのことを聞いたら少し教えてくれた」

「それほんと!?」

「どうだろう。でも一週間前っていうギルドの情報と一致してるし信用してもいいんじゃないかな」

「わかった。詳しく聞かせて」

 ステンの情報をエウリュアに伝えると、前線――とつぶやいて固まってしまった。ステンの安否が心配なんだろう。

「とりあえず、北門からいける今の前線ってどこになるのかわかるか?」

「ここから北で戦場に近い街。うーん、街道もたくさんあるし――」

「そっか。じゃあ王様にあったらそれとなく聞いてみるか」

 そうして、話しながら俺達は、宿屋に戻ったのだった。
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