婚約破棄?その言葉待ってました!(歓喜)

ネコフク

文字の大きさ
12 / 18

話し合い後

しおりを挟む
「これで分かったであろう、ライノールはイリスリアと婚約破棄、そこの女と結婚して慰謝料を払う。話は以上じゃ。2人をライノールの部屋に閉じ込めておけ。荷物はまとめさせるゆえ明日の朝王宮から出ていくのじゃ」

 さっと手で合図をすると、護衛騎士が暴れる2人を引きずりながら部屋を出て行く。

「あ、側妃殿も回収しておくれ」

「承知いたしました」

 これまた騒ぐ側妃を護衛騎士が引きずっていく。先ほどの2人は元気に暴れていても身軽だったので軽く引きずっていたが、側妃は物理的に無理だったのか2人がかりで重そうにズルズルと引きずっていく。引きずられた跡が毛足の長い絨毯に残っているのがなんとも物悲しい。

 騒ぎの元が居なくなると部屋はやけに静かに感じるが、残った全員どっぷり疲れていた。

 いや、1人だけ頬を染めながらソワソワ王妃を見ている人物がいる。イリスリアへの謝罪以外全く存在感がなかった国王だ。言葉を発せずただただ王妃をうっとり見つめていた国王に、短時間でイリスリアと公爵は見方を変えた。力関係は王妃>国王なのだと。

 王妃は国政にほとんど口出ししない。しても的外れな事や我を通すわけではないので、公務以外の関係なのだろうと察したが、だったらここでそれを出さないでほしいというのが本音だ。内輪の話し合いだからとポロリとそんな姿を漏らさないでほしいと心の中で公爵は嘆息する。

「まさかあんなに無知だったとはのう」

 労りなのか何かの期待なのか、いやらしい手つきで王妃の手を擦る国王を無視し、先ほどのライノールの無知さを嘆く。側妃の子供に王位継承権が無いというのは貴族の子供でも知っている事だからだ。

 もし王妃が子を成さなかった場合、王位継承権を持っている王弟や王姉、王妹が王の座に就く事になっているが、それも知らないだろう。

「王子教育すらまともに受けていないのにどこからあの自信はきたのでしょうね」

 普段の言動を思い出しルクレが首をひねる。

「おおかたティファス殿がおだてたのであろう。彼女も未だに側妃教育が終わっておらんからの」

「「「「えっ⁉」」」」

 側妃になりもう20年近く経つはずなのにと護衛含め部屋に居る全員が驚いて王妃を見ると、扇から出ている目がすわっている。

「「は⁉」じゃない!あれでも一応王の側妃じゃ、何故把握しとらんのじゃ!」

 スパーン!!

「はい!すみませんでしたぁぁぁ!!」

「もうこれはお仕置きじゃな。今夜は眠れないと思え」

「はひっ!」

 さっと扇を閉じ頬を打ち据え、そのまま扇で顎をクイッと持ち上げられた王の瞳は潤み期待に満ちている。

 ((だから何を見せられているんだろう・・・・・・))

「では後日手紙を送るゆえ今日は皆解散!」という王妃を抱え急ぎ足で出て行く国王に、ただただ唖然としているイリスリアと公爵の向かいでルクレは眉を下げ苦笑いをするしかなかった。

 話し合いはどうしようもない終わり方をしてしまい、イリスリアと公爵はモヤモヤしながら帰る事となる。

 その夜ライノールとマリアは閉じ込められている部屋から逃走しようとしたが速攻確保され、それを報告しようとしたが、国王と王妃はお取り込み中であった為に報告は翌朝でいいかと2人は簀巻すまきにし、部屋に放置されたという。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜

万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された

王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりません~知能指数が離れすぎていると、会話が成立しない件

碧井 汐桜香
恋愛
天才マリアーシャは、お馬鹿な王子の婚約者となった。マリアーシャが王妃となることを条件に王子は王太子となることができた。 王子の代わりに勉学に励み、国を発展させるために尽力する。 ある日、王太子はマリアーシャに婚約破棄を突きつける。 知能レベルの違う二人の会話は成り立つのか?

婚約破棄は先手を取ってあげますわ

浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。 ※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。  更新は飛び飛びになります。

聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。

佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。 二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。 クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。 その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。 「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」 「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」 「僕を騙すつもりか?」 「どういう事でしょう?」 「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」 「心から誓ってそんなことはしておりません!」 「黙れ!偽聖女が!」 クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。 信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。 ――目覚めたら一年前に戻っていた――

その婚約破棄喜んで

空月 若葉
恋愛
 婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。  そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。 注意…主人公がちょっと怖いかも(笑) 4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。 完結後、番外編を付け足しました。 カクヨムにも掲載しています。

悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。

お前との婚約は、ここで破棄する!

ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」  華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。  一瞬の静寂の後、会場がどよめく。  私は心の中でため息をついた。

【完】婚約破棄ですか? これが普通ですよね

えとう蜜夏
恋愛
王国の夜会で第一王子のフィリップからアマーリエ公爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。よくある婚約破棄の一場面です。ゆるっとふわっと仕様です。 Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

処理中です...