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学園祭編
事の発端
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「今回の発端……6年に一度、といえば分かるかしら」
何で知っているのかと言うように理事長の顔が強ばる。
「いくら良家が揃う学園だとしてもΩは元々数が少ないし、まして良家のΩとなるとさらに少ない。それに毎年だと不自然さが目立つ。3年だと兄弟姉妹がいると警戒されてしまう。だから6年。
しかも有力なΩの名家が高校に在籍する率が高い年に、代々理事長をしている菅原家と縁戚である理事達によって行われる選別。
菅原一族のαが狙った名家のΩを無理矢理襲い、番って縛り付ける愚かな行為が行われるのが、6年周期であるのよね」
淡々と話してはいるが、あげは姉ぇの瞳には侮蔑の色が見えている。オレも無理矢理番われたΩの事を思うと憤りを感じる。
「理由は「間接的に権力と人脈を広げる為」。一般的にはΩは番になったαに逆らえないと言われている。それは番を解除されたΩの末路が悲惨だからだ。しかし上位αは番を溺愛する傾向にある。そして番のΩは名家である事が多い。
そこに目を付けたのが菅原家だ。名家のΩを番にすればその兄弟の番の相手、αと遠いとはいえ縁付く事ができる。αも番の兄弟の相手となればボンクラでも無下に出来ないからな」
チカ父が苦々しく説明するのを見て、似たような事が帝家でもあったんだなと察する。
「でもそうやって繋がった人脈なんて相手が亡くなったりしたら切れちゃう細いもんだろ?」
「だから6年に一度選別しているのよ」
なるほど、繋がりが切れる前に他の繋がりを見つけるって事か。
「しかしそんな事をしなくても、普通に番契約や婚約を申し込んだ方が手間がかからないのでは?」
「恋愛や運命以外で歴史が浅い一族に、名家のΩが嫁ぐものか。あいつらは自分の価値に誇りを持っているからな。成り上がりなんて見向きもしない。それに幼少から囲われている者も多いぞ」
まあ名家のΩは限りなくβを産むのは低いと言われているし、αの名家はそれを狙って婚姻を申し込むだろうしな。
「で、見向きもされない菅原一族は、50年ほど前にバース性に優しい学校を作った。当時はバース性に特化した学校が無かったから名家は皆学園に入学。笑いが止まらなかっただろうよ」
「でも普通そんな事をしていたら噂が広まるんじゃないか?」
「それは名家が名家であるほど家の恥だと口を噤んだ結果、菅原家一族の行いが露呈しなかったんだ」
悲しいかな今や宮中学園は名家の子達が集う有名校、名家が話を広げなかったからこそ負の連鎖が出来上がってしまったらしい。
「ただ、二度だけその時期失敗している。一度目は24年前、その時は名家のΩを手にする事が出来なかった」
「24年……」
「ああ、柾だ」
「「「えっ」」」
驚いて柾を見ると控えめに頬を染め頷いている。どうやらチカも知らなかったようだ。
「簡単な話だよ。中学の時に鷹親が柾さんをガッツリ頂いて番ってたからだよ」
「カイルさん!」
「言い方!」
真っ赤になって焦るチカ両親に「え~ホントの事でしょ」と戯ける父さん。隣でチカが親の床事情なんて知りたくねぇって言ってますが?
でもそれだといくらαがヒートを強制的に起こさせる誘発フェロモンを放っても、番ったΩには効かないから失敗したって事か。
「二度目は12年前。そう、私や佳加、美紗がいた時期よ」
そうあげは姉ぇが言った途端、部屋の空気がピリピリしたものに変わる。これあげは姉ぇだけじゃなく父さんと宏太の両親からも抑えているけど威圧が出てるな。血が昇って赤くなっていた理事長が真っ青を通り越して白くなって震えている。
オレはチカと宏太から抱き締められ母さんは父さんに、チカ母はチカ父に抱き寄せられているので大丈夫だが、気絶する寸前のギリギリを見極めて威圧を出している辺りがエグい。
「そもそも菅原家はβたまにαが生まれてくる家。そこに初めて生まれたΩが菅原瑞希、あなたね。それはもう一族総出で蝶よ花よと育てられたようね。
Ωは総じて美しく、αに見初められる可能性が高い。今まで無理矢理番ったΩの実家の繋がりからしか振るえなかった権力を、名家のαと番えば堂々と縁戚としてより強い権力を振える。だから皆甘やかした。そして本人もその気になっていた。「Ωだから優秀で格好良いαと番える」と」
あー、周りに言われて女の子が小さい時に白馬の王子様を夢見るように、希望を抱いちゃったのかー。
「しかしここで問題が起きた。時代の流れで中学や高校から海外留学をする名家のαやΩが増えてしまった。特に6年前は名家や目立って優秀な生徒が在籍していなかった。菅原家は焦っただろう、初めて生まれたΩに優秀なαを誑し込ませようとしていたのに。
そして仕方なく12年前目を付けられたのが当時生徒会長をしていた娘だ」
なるほど、話が見えてきた。
名家のαがいない→生徒会長なら優秀だろう→親が医師と薬品メーカーの社長じゃん
って事で狙われたんだろう。それには恋人だった佳兄ぃは邪魔な存在。
ここに佳兄ぃと美紗さんが来ていない時点で、当時理事長は色々とやらかしたんだろうな。
今回積極的に動くくらいあげは姉ぇは怒り続けてるって事は相当だぞ?
何で知っているのかと言うように理事長の顔が強ばる。
「いくら良家が揃う学園だとしてもΩは元々数が少ないし、まして良家のΩとなるとさらに少ない。それに毎年だと不自然さが目立つ。3年だと兄弟姉妹がいると警戒されてしまう。だから6年。
しかも有力なΩの名家が高校に在籍する率が高い年に、代々理事長をしている菅原家と縁戚である理事達によって行われる選別。
菅原一族のαが狙った名家のΩを無理矢理襲い、番って縛り付ける愚かな行為が行われるのが、6年周期であるのよね」
淡々と話してはいるが、あげは姉ぇの瞳には侮蔑の色が見えている。オレも無理矢理番われたΩの事を思うと憤りを感じる。
「理由は「間接的に権力と人脈を広げる為」。一般的にはΩは番になったαに逆らえないと言われている。それは番を解除されたΩの末路が悲惨だからだ。しかし上位αは番を溺愛する傾向にある。そして番のΩは名家である事が多い。
そこに目を付けたのが菅原家だ。名家のΩを番にすればその兄弟の番の相手、αと遠いとはいえ縁付く事ができる。αも番の兄弟の相手となればボンクラでも無下に出来ないからな」
チカ父が苦々しく説明するのを見て、似たような事が帝家でもあったんだなと察する。
「でもそうやって繋がった人脈なんて相手が亡くなったりしたら切れちゃう細いもんだろ?」
「だから6年に一度選別しているのよ」
なるほど、繋がりが切れる前に他の繋がりを見つけるって事か。
「しかしそんな事をしなくても、普通に番契約や婚約を申し込んだ方が手間がかからないのでは?」
「恋愛や運命以外で歴史が浅い一族に、名家のΩが嫁ぐものか。あいつらは自分の価値に誇りを持っているからな。成り上がりなんて見向きもしない。それに幼少から囲われている者も多いぞ」
まあ名家のΩは限りなくβを産むのは低いと言われているし、αの名家はそれを狙って婚姻を申し込むだろうしな。
「で、見向きもされない菅原一族は、50年ほど前にバース性に優しい学校を作った。当時はバース性に特化した学校が無かったから名家は皆学園に入学。笑いが止まらなかっただろうよ」
「でも普通そんな事をしていたら噂が広まるんじゃないか?」
「それは名家が名家であるほど家の恥だと口を噤んだ結果、菅原家一族の行いが露呈しなかったんだ」
悲しいかな今や宮中学園は名家の子達が集う有名校、名家が話を広げなかったからこそ負の連鎖が出来上がってしまったらしい。
「ただ、二度だけその時期失敗している。一度目は24年前、その時は名家のΩを手にする事が出来なかった」
「24年……」
「ああ、柾だ」
「「「えっ」」」
驚いて柾を見ると控えめに頬を染め頷いている。どうやらチカも知らなかったようだ。
「簡単な話だよ。中学の時に鷹親が柾さんをガッツリ頂いて番ってたからだよ」
「カイルさん!」
「言い方!」
真っ赤になって焦るチカ両親に「え~ホントの事でしょ」と戯ける父さん。隣でチカが親の床事情なんて知りたくねぇって言ってますが?
でもそれだといくらαがヒートを強制的に起こさせる誘発フェロモンを放っても、番ったΩには効かないから失敗したって事か。
「二度目は12年前。そう、私や佳加、美紗がいた時期よ」
そうあげは姉ぇが言った途端、部屋の空気がピリピリしたものに変わる。これあげは姉ぇだけじゃなく父さんと宏太の両親からも抑えているけど威圧が出てるな。血が昇って赤くなっていた理事長が真っ青を通り越して白くなって震えている。
オレはチカと宏太から抱き締められ母さんは父さんに、チカ母はチカ父に抱き寄せられているので大丈夫だが、気絶する寸前のギリギリを見極めて威圧を出している辺りがエグい。
「そもそも菅原家はβたまにαが生まれてくる家。そこに初めて生まれたΩが菅原瑞希、あなたね。それはもう一族総出で蝶よ花よと育てられたようね。
Ωは総じて美しく、αに見初められる可能性が高い。今まで無理矢理番ったΩの実家の繋がりからしか振るえなかった権力を、名家のαと番えば堂々と縁戚としてより強い権力を振える。だから皆甘やかした。そして本人もその気になっていた。「Ωだから優秀で格好良いαと番える」と」
あー、周りに言われて女の子が小さい時に白馬の王子様を夢見るように、希望を抱いちゃったのかー。
「しかしここで問題が起きた。時代の流れで中学や高校から海外留学をする名家のαやΩが増えてしまった。特に6年前は名家や目立って優秀な生徒が在籍していなかった。菅原家は焦っただろう、初めて生まれたΩに優秀なαを誑し込ませようとしていたのに。
そして仕方なく12年前目を付けられたのが当時生徒会長をしていた娘だ」
なるほど、話が見えてきた。
名家のαがいない→生徒会長なら優秀だろう→親が医師と薬品メーカーの社長じゃん
って事で狙われたんだろう。それには恋人だった佳兄ぃは邪魔な存在。
ここに佳兄ぃと美紗さんが来ていない時点で、当時理事長は色々とやらかしたんだろうな。
今回積極的に動くくらいあげは姉ぇは怒り続けてるって事は相当だぞ?
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