王道学園にさせてなるものかっ!

ネコフク

文字の大きさ
72 / 79
学園祭編

あげは姉ぇは影のフィクサー

しおりを挟む
「まあ12年前の事は今でも腹立たしいから内容は省くけど、結果佳加と美紗は在学中に番ってそのまま海外の学校へ編入したから失敗に終わったのよね」

 そう言って嗤うあげは姉ぇに当時の事を思い出したのか、理事長が白かった顔を再度赤くし睨んでいる。

「お前のせいだろうが!毎回毎回邪魔しやがって!」

「それはそうよ。弟と親友の恋路を邪魔するやからは排除のみ。そもそも何で私がそこまで的確にやれたと思ってるの?
 ……もしかして美紗の指示で動いてたと思ってたのかしら?無理無理、美紗は佳加の事になるとポンコツかオーバーキルの2択しかなくなるのよねぇ」

 確かに美紗さんはあげは姉ぇがため息をついてしまうほど、佳兄ぃに関してダメダメなんだよな。

「当時学園を裏で牛耳っていたのは私。生徒会長は美紗に任せて、佳加の側を離れないようにする為に書記をしてたのよ。だってアンタ入学時から佳加を目の敵にしてたでしょ。
 それはそうよね、蝶よ花よと育てられプライドが山のように高くなってたのに、学園に入ったら見目麗しいΩばかりなんだもの。悲しいかな自分は平凡なんだって気付いてしまった。
 そして学年一美形Ωと言われていた佳加に嫉妬したのよね」

 弟から見ても全方位華やかな美形双子な姉弟は、学園でそりゃあもう人気だったのは想像できる。はっきりしっかり者のαの姉にほわほわ癒やし系のΩの弟。現にあげは姉ぇは今も所属していた演劇部に下僕ゲフン……動かせる生徒がいる。

「それは今置いといて、その時の失敗を根に持ってて今回甥と宏太を番わせて愛加を、私を悔しがらせようとしたって感じかしら。
 しかしここで2つイレギュラーが起きた。
 1つは立花樹、彼が理事のツテで転入して来て場を引っかき回した。焦ったでしょうね、なんせ彼が理事から渡されていた抑制剤はαを引きつける作用を持っていたから」

「あの抑制剤は欠陥品よ。確かにαを引きつけるフェロモンを出す作用はあるけど、番持ちのαには嫌な匂いと感じとってしまうもの。ただ、学園の生徒の殆どが番持ちではなかったから立花樹に群がっただけよ」

 さすが製薬会社社長、本人も薬剤師の資格を持ってるだけあって宏太母の言葉は納得がいく。
 あの匂いに惑わされなかったのは、2人ほど犠牲者(笑)が出たけど役員の殆どが番持ちだったから。それが功を奏し、生徒会の崩壊はまぬがれたって事だ。それがなければ巷で流行している『王道学園』になっていたかもしれない。

「そしてもう1つは甥である菅原祐希が宏太ではなく、惟親に惚れたこと。
 姫川うちに苦渋を舐めさせる為に宏太をターゲットにしたのに、惟親に惚れた菅原祐希が独断で動いた。
 でもあの子アンタより賢いわ。アンタみたいに虐め抜くんじゃなくて、上手く立ち回って自分を被害者に見せて周りの同情を買ってたからね。ふふっドラマの真似したのかしら。制作させ放送した甲斐があったわねぇ」

「は、まさか……」

 クスクスと笑うあげは姉ぇに理事長は愕然としている。最近学園モノのドラマが多く放送されているのが意図的なものだったと気付いたんだろう。
 そしてそんなあげは姉ぇをうっとり見つめるヨハン。ホント視界の邪魔でしかないな。

「まあ殆どあの子達が考えて動いてたのかもしれないけど、アンタや他の理事も手を貸してたわよね。スター製薬から薬の授受、ゴロツキの手配、学園祭で出した弁当への発情促進剤の混入……これだけでも事件として成り立つわ」

「あげは僕へのフェロモンテロも追加してくれ」

「そうね、でも事件にしたら私刑が出来ないから。私が個人的に仇を取るわ。穴という穴にコンクリートを詰めてカチ割ってあげる」

「あげは……」

 怖えぇぇぇぇ!詰めるだけじゃなくカチ割るのかよ!ヨハン手を握ってうっとりするな!あげは姉ぇの会心の笑みに騙されてるぞ!エグい刑を執行しようとしてるぞ!ほら、理事長が短い悲鳴を上げて下がれない後ろに下がろうとしてるぞ。

「エッグ……」

「僕達はまだそこの域まで行ってないよね」

「精進せねば」

 いや、そこの域に達しなくていいからな!?ほらチカ母が怖くてプルプルしてるぞ。うちの両親は……イエーイってハイタッチしとるーーー!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!

野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ 平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、 どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。 数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。 きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、 生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。 「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」 それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――

番に囲われ逃げられない

ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。 結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

隣の番は、俺だけを見ている

雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。 ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。 執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。 【キャラクター設定】 ■主人公(受け) 名前:湊(みなと) 属性:Ω(オメガ) 年齢:17歳 性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。 特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。 ■相手(攻め) 名前:律(りつ) 属性:α(アルファ) 年齢:18歳 性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。 特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。

処理中です...