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第5章 百合はまだ世界を知らない
#31 杏里と第2の猟奇殺人事件③
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「ガイシャは、宮原愛花14歳。港第三中学校の3年生です」
車を走らせながら、岡部巡査があらましを説明した。
「発見者は母親。今朝8時頃、いつまでたっても起きてこないので、部屋を見に行ったところ、ベッドで血まみれになって死んでいる娘を発見した、とそういうことで…」
車窓を流れ過ぎる風景を見るともなく眺めながら、杏里はやりきれない胸の痛みを覚えている。
娘の死体を発見した時の母親の慟哭と悲しみを想像するだけで、胸が苦しくなってくる。
「昨夜10時に就寝するまで、愛花ちゃんに異常はなかったそうです。明日から、やっと学校へ行けるんだ。そう言って喜んでいたそうです」
被害者の宮原愛花は、杏里の予想通り、1か月ほど前に摩耶の個人医院で心臓移植の手術を受けていた。
杏里と韮崎が摩耶に会いに行った時、ちょうど手術中だったのが、愛花だったというわけだ。
「ちなみにそれから今朝になってガイシャが死体で発見されるまで、住居は完全な密室状態だったということです。玄関のドアにも、ふたつあるサッシ窓にも、みんな内側から鍵がかかっていたそうです。なのに、ガイシャの死体からは、すっかり内臓が抜き取られていた…。これは、いったいどういうことなのでしょうか?」
岡部は自分なりに悩んでいるようだ。
救いを求めるようなまなざしを、バックミラー越しに投げてくる。
「密室なんてものは、意味がないと思います」
ためていた息を吐き出すように、力の抜けた声で杏里は答えた。
またしても密室。
となると、やはりこれは、外道の仕業である可能性が高い。
そうであるならば、これまでのいくつかの事件がそうであったように、密室などというものは無意味である。
「換気扇、トイレ、水道の蛇口。外界とつながっている場所は、探せばいくらでもありますから」
「え? でも、そんなところ、子どもでも通れませんよ?」
「もちろん、人間の子どもなら」
杏里は下唇を噛みしめた。
「それ…どういうことですか?」
岡部の眼に、不審者を見るような光が宿る。
「まるで、犯人が人間じゃないみたいに、聞こえますが…」
唇を噛み締めたまま、杏里は答えなかった。
車を走らせながら、岡部巡査があらましを説明した。
「発見者は母親。今朝8時頃、いつまでたっても起きてこないので、部屋を見に行ったところ、ベッドで血まみれになって死んでいる娘を発見した、とそういうことで…」
車窓を流れ過ぎる風景を見るともなく眺めながら、杏里はやりきれない胸の痛みを覚えている。
娘の死体を発見した時の母親の慟哭と悲しみを想像するだけで、胸が苦しくなってくる。
「昨夜10時に就寝するまで、愛花ちゃんに異常はなかったそうです。明日から、やっと学校へ行けるんだ。そう言って喜んでいたそうです」
被害者の宮原愛花は、杏里の予想通り、1か月ほど前に摩耶の個人医院で心臓移植の手術を受けていた。
杏里と韮崎が摩耶に会いに行った時、ちょうど手術中だったのが、愛花だったというわけだ。
「ちなみにそれから今朝になってガイシャが死体で発見されるまで、住居は完全な密室状態だったということです。玄関のドアにも、ふたつあるサッシ窓にも、みんな内側から鍵がかかっていたそうです。なのに、ガイシャの死体からは、すっかり内臓が抜き取られていた…。これは、いったいどういうことなのでしょうか?」
岡部は自分なりに悩んでいるようだ。
救いを求めるようなまなざしを、バックミラー越しに投げてくる。
「密室なんてものは、意味がないと思います」
ためていた息を吐き出すように、力の抜けた声で杏里は答えた。
またしても密室。
となると、やはりこれは、外道の仕業である可能性が高い。
そうであるならば、これまでのいくつかの事件がそうであったように、密室などというものは無意味である。
「換気扇、トイレ、水道の蛇口。外界とつながっている場所は、探せばいくらでもありますから」
「え? でも、そんなところ、子どもでも通れませんよ?」
「もちろん、人間の子どもなら」
杏里は下唇を噛みしめた。
「それ…どういうことですか?」
岡部の眼に、不審者を見るような光が宿る。
「まるで、犯人が人間じゃないみたいに、聞こえますが…」
唇を噛み締めたまま、杏里は答えなかった。
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