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第2章 地獄の底を這いまわれ
♯20 淫売窟②
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急な階段を下った先は、薄暗い通路だった。
通路の突き当りに鋼鉄の扉があり、その向こうには寒々とした石造りの空間が広がっていた。
小人たちはルビイを部屋の真ん中にある大理石のテーブルの上に横たえると、せわしく何かの準備を始めた。
周囲の様子をうかがおうにも、首の筋肉がいうことをきかなかった。
部屋の空気はひんやりと冷たく、嫌な匂いが漂っていた。
生臭い、大量の魚が腐ったような臭い。
そこに、わずかながら、糞便の臭気がこもっている。
ともすれば恐怖で叫びそうになる自己を、ルビイは必死で抑え込んだ。
魔王討伐の遠征に出て以来、初めて家族に会いたい、と思った。
ルビイは大陸の西のはずれにある小国の出身である。
羊や牛の放牧を主な生業とする村で祖母、父、母、妹の5人で暮らしていた。
優しかった祖母、何も言わず、いつも見守ってくれていた父、そして、親友のように仲の良かった母…。
何よりも、幼い妹が恋しかった。
私がいなくなって、妹はさぞかし寂しい思いをしていることだろう。
もう一度会って、ぎゅっと抱きしめたい。
あの、いい匂いのする柔らかな身体を抱きしめて、私の名を呼ぶ可愛らしい声を聴いてみたい…。
だが、それにはここをなんとしてでも抜け出さなくてはならないのだ。
さっきの会話からして、女主人の意図がひどくおぞましいものであることは明らかだった。
ネオ・ホンコンの魔窟。
フリークス。
頭のおかしい客たち。
胃腸をきれいにする…?
具体的には何のことかわからない。
でも、これから行われるであろうことは、おそらく死より残忍な行為なのだ。
通路の突き当りに鋼鉄の扉があり、その向こうには寒々とした石造りの空間が広がっていた。
小人たちはルビイを部屋の真ん中にある大理石のテーブルの上に横たえると、せわしく何かの準備を始めた。
周囲の様子をうかがおうにも、首の筋肉がいうことをきかなかった。
部屋の空気はひんやりと冷たく、嫌な匂いが漂っていた。
生臭い、大量の魚が腐ったような臭い。
そこに、わずかながら、糞便の臭気がこもっている。
ともすれば恐怖で叫びそうになる自己を、ルビイは必死で抑え込んだ。
魔王討伐の遠征に出て以来、初めて家族に会いたい、と思った。
ルビイは大陸の西のはずれにある小国の出身である。
羊や牛の放牧を主な生業とする村で祖母、父、母、妹の5人で暮らしていた。
優しかった祖母、何も言わず、いつも見守ってくれていた父、そして、親友のように仲の良かった母…。
何よりも、幼い妹が恋しかった。
私がいなくなって、妹はさぞかし寂しい思いをしていることだろう。
もう一度会って、ぎゅっと抱きしめたい。
あの、いい匂いのする柔らかな身体を抱きしめて、私の名を呼ぶ可愛らしい声を聴いてみたい…。
だが、それにはここをなんとしてでも抜け出さなくてはならないのだ。
さっきの会話からして、女主人の意図がひどくおぞましいものであることは明らかだった。
ネオ・ホンコンの魔窟。
フリークス。
頭のおかしい客たち。
胃腸をきれいにする…?
具体的には何のことかわからない。
でも、これから行われるであろうことは、おそらく死より残忍な行為なのだ。
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