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第1章 覚醒
#13 王都ミネルヴァ②
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「臓器を提供したんだっておっしゃってました」
怯えの色をそのあどけない顔に浮かべて、サトが答えた。
「臓器?」
ルビイは驚きに目を見開いた。
「多分、肺だと思います。時々、胸が苦しそうですから」
「提供って、いったい誰に?」
口に出してから、ふと気づいた。
これがスナフの言っていた代償なのだ。
元の世界に戻るために、”神”と交渉したその結果ということなのだ。
「それで10年寿命が縮んだと、笑ってらっしゃいました。できれば、ルリさまが目覚めるまで生きていたいって。間に合って、本当によかったです」
「そんな…」
ルビイは胸を塞がれる思いだった。
スナフは精巧な義手と義足をつくる技術と引きかえに、10年分の命を”神”に譲り渡したというわけなのだ。
なんて残酷な神様なのだろう。
やることが魔王と大差ない。
そんな気さえするほどだ。
「そのお洋服、よくお似合いです」
陰惨な話題を打ち切りたかったのだろう。
鏡台の鏡に映ったルビイを見て、サトが言った。
ルビイが選んだのは、ブラックの細身のパンツとフリルのついた純白のブラウス。
そしてグレーのベストにモスグリーンの短いジャケットである。
性別をあいまいにするには、もってこいの組み合わせだ。
「出かけてくるわ」
小柄なサトの頭に手を置いて、ルビイは言った。
「朝食は、戻ってきてから食べるから」
怯えの色をそのあどけない顔に浮かべて、サトが答えた。
「臓器?」
ルビイは驚きに目を見開いた。
「多分、肺だと思います。時々、胸が苦しそうですから」
「提供って、いったい誰に?」
口に出してから、ふと気づいた。
これがスナフの言っていた代償なのだ。
元の世界に戻るために、”神”と交渉したその結果ということなのだ。
「それで10年寿命が縮んだと、笑ってらっしゃいました。できれば、ルリさまが目覚めるまで生きていたいって。間に合って、本当によかったです」
「そんな…」
ルビイは胸を塞がれる思いだった。
スナフは精巧な義手と義足をつくる技術と引きかえに、10年分の命を”神”に譲り渡したというわけなのだ。
なんて残酷な神様なのだろう。
やることが魔王と大差ない。
そんな気さえするほどだ。
「そのお洋服、よくお似合いです」
陰惨な話題を打ち切りたかったのだろう。
鏡台の鏡に映ったルビイを見て、サトが言った。
ルビイが選んだのは、ブラックの細身のパンツとフリルのついた純白のブラウス。
そしてグレーのベストにモスグリーンの短いジャケットである。
性別をあいまいにするには、もってこいの組み合わせだ。
「出かけてくるわ」
小柄なサトの頭に手を置いて、ルビイは言った。
「朝食は、戻ってきてから食べるから」
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