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第1章 覚醒
#17 王都ミネルヴァ⑥
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「失礼ですが、あなたは…この村に、なにかゆかりのあるお方なのですか?」
話しかけてきたのは、白いワンピースにつば広の帽子をかぶった清楚な娘である。
少し上げた帽子の陰から、宝石のように澄んだグリーンの瞳がのぞいている。
「いや…あまりひどいありさまなので、ちょっと寄ってみたまで。ゆかりなんて、そんなものは」
娘はルビイより年下に見える。
ならば、20年前のルビイの顔を知っているはずがない。
そう自分に言い聞かせてみたが、胸の鼓動は収まらなかった。
「そういうあなたは、誰なの? どうしてこんなところに?」
少女はそこはかとなく気品にあふれていた。
どこかの貴族の娘だろう、とルビイは思った。
服装も一見質素だが、よく目を凝らして見ると、どうやら生地も仕立ても一流だ。
ほっそりした首にかかる金のネックレスも、きっと純金に違いない。
「私の名はターニャ。ターニャ=オズワルドといいます。このソンミ村には、学校の自由研究の下調べで…。私、歴史学を専攻していて、今、20年前の魔王戦役のこと、色々調べてるんです。ご存知ですか? あの戦役の時、女だてらに大軍を率いて魔王に挑んだいくさ乙女がいたことを…? 彼女がその後、どうなってしまったのか、それをどうしてもつきとめたくて…」
少女の口調が熱を帯びるのと正反対に、ルビイの心は冷えていく。
やっかいな者にでくわしてしまった。
その感が強い。
「悪いわね。私、歴史には興味ないんで」
気のないふりを装って歩きかけた時、いきなり少女が大声を出した。
「待ってください! 村の入口になったあの乗り物、あれ、あなたのですよね? 20年前、魔王戦役が終わった直後、砂漠を走る不思議な機械を見たという証言が、いくつも残っています。そう、ちょうどあなたの乗っているあの鋼鉄の馬のような…」
話しかけてきたのは、白いワンピースにつば広の帽子をかぶった清楚な娘である。
少し上げた帽子の陰から、宝石のように澄んだグリーンの瞳がのぞいている。
「いや…あまりひどいありさまなので、ちょっと寄ってみたまで。ゆかりなんて、そんなものは」
娘はルビイより年下に見える。
ならば、20年前のルビイの顔を知っているはずがない。
そう自分に言い聞かせてみたが、胸の鼓動は収まらなかった。
「そういうあなたは、誰なの? どうしてこんなところに?」
少女はそこはかとなく気品にあふれていた。
どこかの貴族の娘だろう、とルビイは思った。
服装も一見質素だが、よく目を凝らして見ると、どうやら生地も仕立ても一流だ。
ほっそりした首にかかる金のネックレスも、きっと純金に違いない。
「私の名はターニャ。ターニャ=オズワルドといいます。このソンミ村には、学校の自由研究の下調べで…。私、歴史学を専攻していて、今、20年前の魔王戦役のこと、色々調べてるんです。ご存知ですか? あの戦役の時、女だてらに大軍を率いて魔王に挑んだいくさ乙女がいたことを…? 彼女がその後、どうなってしまったのか、それをどうしてもつきとめたくて…」
少女の口調が熱を帯びるのと正反対に、ルビイの心は冷えていく。
やっかいな者にでくわしてしまった。
その感が強い。
「悪いわね。私、歴史には興味ないんで」
気のないふりを装って歩きかけた時、いきなり少女が大声を出した。
「待ってください! 村の入口になったあの乗り物、あれ、あなたのですよね? 20年前、魔王戦役が終わった直後、砂漠を走る不思議な機械を見たという証言が、いくつも残っています。そう、ちょうどあなたの乗っているあの鋼鉄の馬のような…」
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