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第2章 跪いて足をお舐め

#61 愛と性のファシズム②

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 リングに立つと、津波のような喧騒が押し寄せてきて、ルビイを包み込んだ。

 もちろん、この場合、ルビイにかけられるのはそのほとんどがブーイングの声だ。

 それが、反対側の入口からマリウスが登場すると、爆発するような大歓声に変わった。

 ルビイはマントを脱いだ。

 マリウスが一歩前に進み出る。

 リングの中央で対峙するふたりに、

「それでは、第30回、武闘会決勝を行います」

 タキシード姿の司会者が、厳かな声で宣言した。

「ファイト!」

 鋭い開始の合図に、マリウスが素早く左に動いた。
 
 細身の剣を片手に、軽いステップを踏んでルビイの隙を狙っている。

 ルビイは動かない。

 こぶしにナックルをはめた両腕を脇に垂らし、ただ眼だけでマリウスの動きを追っている。

「来ないの? おじけづいたのかしら?」

 挑発すると、マリウスの顔色が変わった。

 無言でリングを蹴ると、一気に間合いを詰めてきた。

 突き出された剣の一撃を、最小限の動きでかわしてやる。

 たたらを踏んで立ち止まろうとするマリウスの背中を、長い右足を振り上げて軽くキックした。

「うわあっ!」

 バランスを崩し、ロープ際まで吹っ飛んで、ロープにしがみつくマリウス。

「何してるの? 全国民が見てるのよ? 憧れの皇子さまが、そんな無様でどうするの?」

 せせら笑ってやった。

「く、くそう」

 マリウスが悔しそうに唇を噛みしめ、よろよろと立ちあがる。

「本気で戦うって言ったのはあなたでしょ? 手加減はしないって」

 ルビイは観衆に聞こえないように声のトーンを下げた。

「ならば私を殺すつもりでかかってきなさいよ」
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