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第4章 洞窟都市グロッタ

#19 呪われた土地⑭

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 正面入り口は開いたままだった。

 鉄鋲で補強された木製の門扉は破壊され、バラバラになった状態で村の敷地内に倒れ込んでいる。

 ルビイとマグナが先頭に立ち、2列に並んで中に踏み込んだ。

 アニムスは短剣と円盾、アニマは手首に装着する携帯用ボウガン、エリスは賢者の杖という装備である。

 ルビイの後ろには、鞭をかまえたサトがぴたりとくっついてきていた。

 周りの建物はしんと静まり返っている。

 静寂の中、聞こえてくるのは風が砂を巻き上げる音だけだ。

 耳に全神経を集中し、聴覚を研ぎ澄ます。

 が、やはり風の唸り以外は何も聞こえない。

 日は西の空に沈み、闇が濃くなりかけている。
 
 時間的に、魔物の活動が活発になる頃である。

 早く落ち着く場所を見つけないと、やっかいなことになる。

「オークの仕業だな」

 マグナが歯軋りするような口調で吐き捨てたのは、広場に一歩足を踏み入れた時のことだった。

「確かにね。やつらのやり口に間違いないわ。それにしても、ひどすぎる」

 広場の中央に積み重ねられているのは、血まみれになった村人たちの亡骸である。

 老人もいれば、女子どももいる。

 五体満足の者はほとんどなく、皆身体の一部を引き千切られたか食われているようだ。

「やつらは殺し自体を楽しんでいる。許せない。まさに唾棄すべき悪魔どもだ」

 マグナの声は憤りで震えている。

 いつも冷静で無表情なマグナだが、今は彼女なりに怒りに燃えているのだろう。

「うえ、吐きそうだ」

 口と鼻を押さえてアニムスがうめいた。

 死体の山はすでに腐敗しかけていた。

 中には身体の一部が白骨化しているのもあり、そのせいで臭気がものすごい。

「残酷すぎます。こんなの、いくらなんでも、あんまりです。神さまどうか、彼らの魂に神のご加護を」

 エリスが胸の前で両手を組み合わせ、天に祈るように目を閉じた。

 が、そんな中で意外にドライだったのが、最も年下のアニマである。

 アニマは死体の山の回りをぐるぐる歩き回っていたが、やがてルビイのもとに戻ってくると、よく光る大きな目でルビイを見上げて言ったのだ。

「だけどさ、やっぱりおかしいよ。どうしてオークまで死んでるの? 広場のあちこちに転がってるのは、人間の死体じゃないよ。みんなオーク。どれも、今朝見たやつとおんなじ殺され方してるみたいなんだけど」
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