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第4章 洞窟都市グロッタ
#34 黄金都市の秘密⑤
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そこからの行程は、拍子抜けするほど平穏なものだった。
ゆるい傾斜を、6人は言葉少なにただ黙々と歩いた。
岸壁の上から攻撃されたらひとたまりもない。
そう思って常に周囲に注意を払ってきたものの、数時間もの間何も起こらないと、さすがにルビイの緊張も緩んできた。
岸壁の表面には所々張り出した部分があり、そこに見張りが常駐していてもおかしくなさそうなのだが、魔王の下僕の代表格であるオークやゴブリンはおろか、ねずみやコウモリの姿もない。
「ここにも謎の暗殺者の手が伸びてたのかもな」
ルビイの前を歩きながら、マグナが言った。
「本来は魔物でいっぱいだったところを、何者かが始末したのかもしれん」
「てことはさ」
浮き浮きした口調で後ろのアニムスが反応した。
「グロッタの中もそれと同じじゃない? オークはみんなやられちゃっててさ、おいらたち、何もしなくてもゴールの市政庁まで行けちゃったりして」
「もしそうならば」
マグナが振り向いた。
「我々は、オークの軍団より強力なその何者かと戦うはめになるだろう。そんな正体不明の敵より、どちらかといえば俺は、筋肉馬鹿のオークどものほうがやりやすいが」
「筋肉馬鹿ねえ。マグナの口からその言葉が出るとは思わなかったよ」
「…坊主、俺に喧嘩売ってるのか?」
しばらく行くと、隧道の先に山肌に開いた洞窟が見えてきた。
どうやらあれが、グロッタ下層の採掘場への入口らしい。
「気をつけて。到着したみたいよ」
足を止め、ルビイが注意を促した時だった。
洞窟の中から、鈍い音が響いてきた。
「下がって!」
振り返ると、ルビイは線路の真ん中を歩いていたエリスを横抱きにして壁際に飛びのいた。
「やん、ルビイさまったら、いきなりそんなあ」
ルビイの腕の中で、エリスが甘えた声を上げる。
その声をかき消すように、背中の後ろを轟音が駆け抜けていった。
「トロッコだな」
轟音が遠くに消えていくと、マグナの声がした。
「しかし、変だ。なぜ無人で動いている?」
「無人?」
ルビイはマグナのほうに顔を向けた。
音からしてトロッコだろうと見当はついたが、線路のほうに背中を向けていたせいで、ルビイ自身は何も見えなかったのである。
「ああ。誰も乗っていなかった。大量の土砂以外はな。普通、ポイント切り替えや停車の操作のために、土工がひとりふたりは乗ってくるものだが」
「どういうこと?」
「さあ、わからない。自動制御のトロッコが発明されたというなら、話は別だが」
自動制御のトロッコ?
心の隅に、何かがひっかかった。
が、それが何なのか、ルビイは結局思い出せないままだった。
ゆるい傾斜を、6人は言葉少なにただ黙々と歩いた。
岸壁の上から攻撃されたらひとたまりもない。
そう思って常に周囲に注意を払ってきたものの、数時間もの間何も起こらないと、さすがにルビイの緊張も緩んできた。
岸壁の表面には所々張り出した部分があり、そこに見張りが常駐していてもおかしくなさそうなのだが、魔王の下僕の代表格であるオークやゴブリンはおろか、ねずみやコウモリの姿もない。
「ここにも謎の暗殺者の手が伸びてたのかもな」
ルビイの前を歩きながら、マグナが言った。
「本来は魔物でいっぱいだったところを、何者かが始末したのかもしれん」
「てことはさ」
浮き浮きした口調で後ろのアニムスが反応した。
「グロッタの中もそれと同じじゃない? オークはみんなやられちゃっててさ、おいらたち、何もしなくてもゴールの市政庁まで行けちゃったりして」
「もしそうならば」
マグナが振り向いた。
「我々は、オークの軍団より強力なその何者かと戦うはめになるだろう。そんな正体不明の敵より、どちらかといえば俺は、筋肉馬鹿のオークどものほうがやりやすいが」
「筋肉馬鹿ねえ。マグナの口からその言葉が出るとは思わなかったよ」
「…坊主、俺に喧嘩売ってるのか?」
しばらく行くと、隧道の先に山肌に開いた洞窟が見えてきた。
どうやらあれが、グロッタ下層の採掘場への入口らしい。
「気をつけて。到着したみたいよ」
足を止め、ルビイが注意を促した時だった。
洞窟の中から、鈍い音が響いてきた。
「下がって!」
振り返ると、ルビイは線路の真ん中を歩いていたエリスを横抱きにして壁際に飛びのいた。
「やん、ルビイさまったら、いきなりそんなあ」
ルビイの腕の中で、エリスが甘えた声を上げる。
その声をかき消すように、背中の後ろを轟音が駆け抜けていった。
「トロッコだな」
轟音が遠くに消えていくと、マグナの声がした。
「しかし、変だ。なぜ無人で動いている?」
「無人?」
ルビイはマグナのほうに顔を向けた。
音からしてトロッコだろうと見当はついたが、線路のほうに背中を向けていたせいで、ルビイ自身は何も見えなかったのである。
「ああ。誰も乗っていなかった。大量の土砂以外はな。普通、ポイント切り替えや停車の操作のために、土工がひとりふたりは乗ってくるものだが」
「どういうこと?」
「さあ、わからない。自動制御のトロッコが発明されたというなら、話は別だが」
自動制御のトロッコ?
心の隅に、何かがひっかかった。
が、それが何なのか、ルビイは結局思い出せないままだった。
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