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第6章 ネオ・チャイナの野望
#44 前哨戦⑨
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「なるほど、ネオ・ホンコンの政務官か」
左手で相手の襟首をつかみ、右手に握った大剣を振りかざして、ルビイは白粉だらけの宦官の顔を睨みつけた。
「なら、すぐに伝令を飛ばして、ネオ・チャイナ軍とコウライ軍に兵を引き上げさせるんだな。おまえが、ここで死にたくなければ、だが」
「そういうおまえこそ誰なのです? いきなりこんな・・・無礼にもほどがある」
宦官リン・シュウの顔からはすっかり血の気が引いてしまっている。
唇に塗った紅が剥げて頬にはみ出し、不気味さに拍車をかけている。
「知りたければ教えてやろう。私はミネルヴァ特殊部隊隊長、ルビイ、スナフキン。あいにく、あんたたちが包囲しているゾハクは、私の旧友なんでね。放っておくわけにはいかないのさ」
ルビイは宦官の髪をつかんで吊り上げると、喉笛に大剣の刃を押し当てた。
「なんと! 西の王都ミネルヴァが、面と向かってわれらネオ・チャイナに反旗を翻すというのですか? そんなことをしたら、それこそ戦争ですぞ? これはミネルヴァ王の意志と取ってよいのですか?」
「今言ったばかりだろう。王の意志でも執政官の命令でもない。私は旧友の命を助けに来た。ただそれだけのことだ」
「王都としての政治的判断ではなく、あくまでもおまえ個人の事情だと、そう信じろとでも?」
「その通り。さあ、ぐずぐずしていると、貴様のこの白粉臭い首が胴体から離れることになるが、それでもいいのかな? まあ、どの道、貴様の軍勢も、今頃は主転童子率いる鬼族の乱入で、ガタガタになってる頃だろうがな」
ルビイが握った大剣の刃が滑り、喉仏の飛び出た宦官の首に血の筋をつけた。
「わっ! やめなさい! 痛い! 痛いったら!」
喚き出す年増のオトコオンナ。
自分可愛さ優先のその醜態は、とても見るに堪えぬほどだった。
「わかった! わかったから、乱暴はやめて! 出します! 味方軍に、即刻引き上げるよう、伝令を飛ばしますから、そんな痛いことはもうやめて!」
その頃ー。
上空では、カイトに乗ったアニムスが、地上のマグナと連絡を取り合っていた。
「ルビイ、うまくやったみたいだね。敵軍が引いていくよ。それこそ、潮が引くみたいにさ」
「ああ。鬼どもにも礼を言わねばな。さあ、轟天号を動かして綱を引くから、おまえたちもそろそろ下りてこい」
「だね。もう少し眺めてたいけど、ここ、けっこう寒くてさ。ちょうど催してきたところだよ」
「何の話をしてるんだ。ん? それより、あれはなんだ?」
苦笑混じりのマグナの声が、途中からトーンを変えた。
その時だった。
風の音をつんざいて、妹のアニマの悲鳴が聞こえてきた。
「お兄ちゃん、見て! ヤバいよ! アレって…うわ、ぎゃああああああっ!」
驚いて振り向いたアニムスは、見た。
アニマのカイトが、巨大な漆黒の影に呑み込まれてしまうのをー。
左手で相手の襟首をつかみ、右手に握った大剣を振りかざして、ルビイは白粉だらけの宦官の顔を睨みつけた。
「なら、すぐに伝令を飛ばして、ネオ・チャイナ軍とコウライ軍に兵を引き上げさせるんだな。おまえが、ここで死にたくなければ、だが」
「そういうおまえこそ誰なのです? いきなりこんな・・・無礼にもほどがある」
宦官リン・シュウの顔からはすっかり血の気が引いてしまっている。
唇に塗った紅が剥げて頬にはみ出し、不気味さに拍車をかけている。
「知りたければ教えてやろう。私はミネルヴァ特殊部隊隊長、ルビイ、スナフキン。あいにく、あんたたちが包囲しているゾハクは、私の旧友なんでね。放っておくわけにはいかないのさ」
ルビイは宦官の髪をつかんで吊り上げると、喉笛に大剣の刃を押し当てた。
「なんと! 西の王都ミネルヴァが、面と向かってわれらネオ・チャイナに反旗を翻すというのですか? そんなことをしたら、それこそ戦争ですぞ? これはミネルヴァ王の意志と取ってよいのですか?」
「今言ったばかりだろう。王の意志でも執政官の命令でもない。私は旧友の命を助けに来た。ただそれだけのことだ」
「王都としての政治的判断ではなく、あくまでもおまえ個人の事情だと、そう信じろとでも?」
「その通り。さあ、ぐずぐずしていると、貴様のこの白粉臭い首が胴体から離れることになるが、それでもいいのかな? まあ、どの道、貴様の軍勢も、今頃は主転童子率いる鬼族の乱入で、ガタガタになってる頃だろうがな」
ルビイが握った大剣の刃が滑り、喉仏の飛び出た宦官の首に血の筋をつけた。
「わっ! やめなさい! 痛い! 痛いったら!」
喚き出す年増のオトコオンナ。
自分可愛さ優先のその醜態は、とても見るに堪えぬほどだった。
「わかった! わかったから、乱暴はやめて! 出します! 味方軍に、即刻引き上げるよう、伝令を飛ばしますから、そんな痛いことはもうやめて!」
その頃ー。
上空では、カイトに乗ったアニムスが、地上のマグナと連絡を取り合っていた。
「ルビイ、うまくやったみたいだね。敵軍が引いていくよ。それこそ、潮が引くみたいにさ」
「ああ。鬼どもにも礼を言わねばな。さあ、轟天号を動かして綱を引くから、おまえたちもそろそろ下りてこい」
「だね。もう少し眺めてたいけど、ここ、けっこう寒くてさ。ちょうど催してきたところだよ」
「何の話をしてるんだ。ん? それより、あれはなんだ?」
苦笑混じりのマグナの声が、途中からトーンを変えた。
その時だった。
風の音をつんざいて、妹のアニマの悲鳴が聞こえてきた。
「お兄ちゃん、見て! ヤバいよ! アレって…うわ、ぎゃああああああっ!」
驚いて振り向いたアニムスは、見た。
アニマのカイトが、巨大な漆黒の影に呑み込まれてしまうのをー。
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