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第6章 ネオ・チャイナの野望
#64 堕ちた少年①
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アネモネは不機嫌だった。
何よりもの誤算は、アニマの生理である。
もとよりアニマは、その幼い外見からして、少女性愛者たち専用の娼婦に仕上げるつもりだった。
それがいきなり初潮が来てしまったというのだから、計画は台無しというわけだ。
小児性愛者の輩は、初潮を迎えた娘には興味がない。
生理が来た時点で、その娘はすでに少女ではなく、大人の女とみなすからだ。
彼らは成人女性を忌み嫌っている。
下手に座敷に出して、途中でアニマが第二次性徴期を迎えた娘だとバレたら、烈火のごとく怒り出すに違いない。
「さて、どうしたものかねえ」
アネモネは、座卓の上に頬杖をつき、煙管から紫煙をくゆらせ、独りごちた。
ここは店の奥。
アネモネ専用の”事務所”である。
廊下のほうからは、客と戯れる娼婦たちの嬌声が、途切れ途切れに聴こえてくる。
とりあえず、生理が終わるまで様子を見るしかない。
幸い、あの子は見かけはアレだから、しばらく”生娘”の振りをさせて軽いお座敷から経験させていくか…。
そんなことに思いを巡らせていた時だった。
「あのう、ご主人様」
声がして振り向くと、通用口に番頭が立っていた。
「なんだえ? このクソ忙しい時に…」
怒鳴りつけようとしたアネモネは、途中でウっと声を呑み込んだ。
番頭の隣に、少年がひとり、所在なげに佇んでいることに気づいたからである。
年の頃は12歳くらいだろうか。
ウェーブのかかった茶色っぽい髪をした、小柄な少年である。
美しい顔立ちをしているが、麻薬常習者のように、目の焦点が定まっていない。
しかも、なぜか、全裸の上に薄物を羽織っただけという奇妙な格好をしている。
半透明な着衣から、ところどころ、乳首やへそが透けて見えてしまっているのだ。
「さっき、変なやつが来まして…この子を、ここで働かせてやってほしいと、そう言うんで…」
恐縮し切った恭しさで、番頭が説明する。
「働かせる?」
アネモネは眼を剥いた。
「そいつは、うちがどんな店かわかって言ってるの?」
「ええ、まあ」
番頭の顏に下卑た笑みが浮かんだ。
「このガキ、男相手でも女相手でも両方イケるように、しっかり仕込んであるそうです。だから、ほら、見てやってくだせえ」
男が少年の薄物の裾をめくった。
とたんに跳ね上がった猛々しいモノを目の当たりにして、アネモネは絶句した。
「おお…」
すごい。
なるほど、幼い顏とのギャップがたまらない。
しかもこの子の顔、どこかで見たことがあるような…。
「いいわ。使いましょう。ところでその、その子を連れて来た変な奴って言うのは?」
アネモネの言葉に、悪戯を見つかった子供のように、肩をすくめる番頭。
「さあ…それが…。こいつを置いたまま、どっかへ行っちまったんで。頭から黒いフードを被った、男か女かもわからねえ、なんか不気味な野郎でしたけど」
何よりもの誤算は、アニマの生理である。
もとよりアニマは、その幼い外見からして、少女性愛者たち専用の娼婦に仕上げるつもりだった。
それがいきなり初潮が来てしまったというのだから、計画は台無しというわけだ。
小児性愛者の輩は、初潮を迎えた娘には興味がない。
生理が来た時点で、その娘はすでに少女ではなく、大人の女とみなすからだ。
彼らは成人女性を忌み嫌っている。
下手に座敷に出して、途中でアニマが第二次性徴期を迎えた娘だとバレたら、烈火のごとく怒り出すに違いない。
「さて、どうしたものかねえ」
アネモネは、座卓の上に頬杖をつき、煙管から紫煙をくゆらせ、独りごちた。
ここは店の奥。
アネモネ専用の”事務所”である。
廊下のほうからは、客と戯れる娼婦たちの嬌声が、途切れ途切れに聴こえてくる。
とりあえず、生理が終わるまで様子を見るしかない。
幸い、あの子は見かけはアレだから、しばらく”生娘”の振りをさせて軽いお座敷から経験させていくか…。
そんなことに思いを巡らせていた時だった。
「あのう、ご主人様」
声がして振り向くと、通用口に番頭が立っていた。
「なんだえ? このクソ忙しい時に…」
怒鳴りつけようとしたアネモネは、途中でウっと声を呑み込んだ。
番頭の隣に、少年がひとり、所在なげに佇んでいることに気づいたからである。
年の頃は12歳くらいだろうか。
ウェーブのかかった茶色っぽい髪をした、小柄な少年である。
美しい顔立ちをしているが、麻薬常習者のように、目の焦点が定まっていない。
しかも、なぜか、全裸の上に薄物を羽織っただけという奇妙な格好をしている。
半透明な着衣から、ところどころ、乳首やへそが透けて見えてしまっているのだ。
「さっき、変なやつが来まして…この子を、ここで働かせてやってほしいと、そう言うんで…」
恐縮し切った恭しさで、番頭が説明する。
「働かせる?」
アネモネは眼を剥いた。
「そいつは、うちがどんな店かわかって言ってるの?」
「ええ、まあ」
番頭の顏に下卑た笑みが浮かんだ。
「このガキ、男相手でも女相手でも両方イケるように、しっかり仕込んであるそうです。だから、ほら、見てやってくだせえ」
男が少年の薄物の裾をめくった。
とたんに跳ね上がった猛々しいモノを目の当たりにして、アネモネは絶句した。
「おお…」
すごい。
なるほど、幼い顏とのギャップがたまらない。
しかもこの子の顔、どこかで見たことがあるような…。
「いいわ。使いましょう。ところでその、その子を連れて来た変な奴って言うのは?」
アネモネの言葉に、悪戯を見つかった子供のように、肩をすくめる番頭。
「さあ…それが…。こいつを置いたまま、どっかへ行っちまったんで。頭から黒いフードを被った、男か女かもわからねえ、なんか不気味な野郎でしたけど」
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