臓物少女

戸影絵麻

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#2 邂逅

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 久しぶりの休日だった。
 といっても、大してやることがあるわけではない。
 午前中は近くの池に釣りに行った。
 そこは池というより沼に近く、午前中いっぱい粘って釣果はフナ二匹とザリガニ5匹だった。
 悪くはない。
 ポリバケツの中の戦利品を見て明は思ったものだ。
 これだけでもきょうの夕食として十分だ。
 大学を中退後、コンビニのバイトだけで食いつないでいるうちに20代後半になってしまった。
 この極貧生活おいて、食費が浮くということはある意味吉兆であるといえた。
 が、そんなささやかな幸福感も、その日の夕方、予想外の訪問者のおかげであっという間に消し飛んだ。
 明は祖父の遺した丘の上のあばら家に独り暮らしである。
 耐震基準などはまるで無視した、築50年は優に超えている木造平屋建てで、広いだけが取り柄のあばら家だ。
 そのすりガラスの嵌まった玄関の引き戸をこじ開けるようにして、その二人組は乱入してきたのだった。
「やはりまだここに住んでいたのか」
 玄関の上がり框に立ち尽くす明を見上げ、埃だらけの白衣を着た初老の男が言った。
「覚えてるか。俺だ。おまえの父の佐平だ」
 マジか。
 心の中でつぶやき、明はあんぐりと口を開けた。
 父は明を残して、10年前に失踪した。
 母はそのずっと前に家出していたから、明は完全に独りになった。
 大学をやめたのはそのせいだ。
 その父親が、今頃ノコノコ何の用だ?
 それにー。
 アキラの眼は、土気色の父の顏より、その腕に抱かれた少女に釘づけだった。
 なんだこの女は?
 ムチャクチャ可愛いけど・・・。
 なんで血まみれなんだろう?
 
 
 
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