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#27 敵か味方か⑦
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女刑事とともに廊下を駆け戻った明は、角を曲がったとたん、棒を呑んだようにその場に立ちすくんでしまった。
「ニラさん、どうしちゃったんですか?」
女刑事の声が裏返った。
取調室代わりの事務所のドアは開け放たれ、中からもうもうと白い煙のようなものが這い出ている。
韮崎と言う名の老刑事は、その煙から逃れようとするかのように、対面の壁に背をつけ、廊下に坐りこんでいた。
その細い目は今や恐怖と驚愕に見開かれ、開いたドアの中を凝視している。
嫌な予感がした。
「何があったのかしら?」
腰だめに拳銃を構える女刑事。
「さ、紗英・・・大丈夫か?」
ようやく金縛りが解け、明は女刑事に続いてへっぴり腰で事務所の中を覗き込んだ。
煙が薄れると、事務所内の様子が少しずつ見えてきた。
その驚くべき光景に、明はあんぐりと口を開けた。
部屋の中央で、スチール製の事務机が二つに折れている。
いや、正確に言うと、天板の真ん中が溶けて、崩れ落ちるように両側からぐにゃりと傾いているのだ。
煙はそこから上がっている。
まるで超強力な酸で溶かしたみたいだ、と明は思った。
「勝手に呼び捨てにしないでよ」
奥の壁に背中を預けてもたれていた紗英が、明を見て冷ややかな声で言った。
「ご、ごめ・・・。つ、つい・・・」
明は頭を掻いた。
見たところ、変わりはないようだ。
紗英が無事だったことに、自分でも驚くほど安堵していた。
「大丈夫? 何があったの? これは何?」
畳みかけるように女刑事が訊ねると、
「さあ」
紗英は両手を広げて、小首をかしげてみせた。
その態度は余裕綽々で、どこか女刑事をからかっているようでもある。
「それは、あそこでおしっこちびってる、あのオジサンに訊いたらどうですか?」
「ニラさん、どうしちゃったんですか?」
女刑事の声が裏返った。
取調室代わりの事務所のドアは開け放たれ、中からもうもうと白い煙のようなものが這い出ている。
韮崎と言う名の老刑事は、その煙から逃れようとするかのように、対面の壁に背をつけ、廊下に坐りこんでいた。
その細い目は今や恐怖と驚愕に見開かれ、開いたドアの中を凝視している。
嫌な予感がした。
「何があったのかしら?」
腰だめに拳銃を構える女刑事。
「さ、紗英・・・大丈夫か?」
ようやく金縛りが解け、明は女刑事に続いてへっぴり腰で事務所の中を覗き込んだ。
煙が薄れると、事務所内の様子が少しずつ見えてきた。
その驚くべき光景に、明はあんぐりと口を開けた。
部屋の中央で、スチール製の事務机が二つに折れている。
いや、正確に言うと、天板の真ん中が溶けて、崩れ落ちるように両側からぐにゃりと傾いているのだ。
煙はそこから上がっている。
まるで超強力な酸で溶かしたみたいだ、と明は思った。
「勝手に呼び捨てにしないでよ」
奥の壁に背中を預けてもたれていた紗英が、明を見て冷ややかな声で言った。
「ご、ごめ・・・。つ、つい・・・」
明は頭を掻いた。
見たところ、変わりはないようだ。
紗英が無事だったことに、自分でも驚くほど安堵していた。
「大丈夫? 何があったの? これは何?」
畳みかけるように女刑事が訊ねると、
「さあ」
紗英は両手を広げて、小首をかしげてみせた。
その態度は余裕綽々で、どこか女刑事をからかっているようでもある。
「それは、あそこでおしっこちびってる、あのオジサンに訊いたらどうですか?」
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