臓物少女

戸影絵麻

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#35 奇妙な潜伏生活⑦

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 紗英は風呂に入ったまま、もう1時間も出てこない。
 明の放った精液が、太腿に付着したせいである。
「うっそ、きっもっ!」
 むっちむちの太腿にどろりと貼りついた糊状の液体を気味悪げに見下ろして、紗英は言ったものだ。
「なにしてくれんのよう! あたしが妊娠したらどうしてくれるの???」
 鼻息も荒くそう言い放つなり、風呂場に飛び込んでいってしまったのである。
「やっちまった・・・」
 床に飛び散った白濁液をティッシュで拭きながら、明はつぶやいた。
「俺はクズだ・・・ダメなやつだ・・・」
 痩せこけた尻を剥き出しにして這いつくばり、己の精液を拭くる全裸の男。
 これほどマヌケな生き物も、この世にないだろう。
 今の俺に比べれば、水族館の深海コーナーの水槽に棲み、7年間何も食べないでいるというダイオウグソクムシのほうがよっぽどマシだ。
 いや、むしろ、ダイオウグソクムシのほうこそ、俺と比べられるのは迷惑か。
 あっちはあっちでぬいぐるみになったり、Tシャツにデザインされたりと、それなりに人気者なのだから。
 風呂場から聴こえるシャワーの音はいっこうに止まらない。
 あの中に豊満ボディを晒した全裸の紗英がいるかと思うと、なぜかペニスがまたしても頭をもたげてくる。
 若さの証と言えば聞こえがいいが、これは単に俺が助平な窃視症患者予備軍である証拠に過ぎない。
 ああ、こうなれば死んだほうがマシか。
 メロスなら「やんぬるかな」とつぶやいて寝てしまうところだが、あいにく一回程度の射精ではそこまで疲弊しないものだ。
 あれこれ思い悩んでいると、
 ピンポーン!
 玄関のほうでインターホンが鳴ったので、明は半ば夢遊病状態で裸のまま歩いていき、ついうっかりドアを開けてしまった。
「誰?」
「ゲ」
 カエルの潰れるような声がしたので顔を上げると、目と鼻の先に驚愕に目を見開いた笹原刑事が立っていた。
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