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第一章 黒い髪のメイド
メイドの日常(5.1)
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「いいのかマリア?」
カールさんは少し驚いたような表情をしています。
「いいのよ、この話は屋敷で働く一部の人には既に知られていること。それにマルカム様のお世話をしているナーシャには知っていてもらいたかったのよ。これはちょうどよい機会だわ」
そういうとマリアさんは、カールさんへの依頼とマルカム様のお母様でありますアルネ様について、話を始めたのです。
「カールへの依頼内容は、ケネス様の奥様であるアルネ様の当時お持ちになっていた、さまざまな魔道具を回収することです。」
「ナーシャ、アルネ様はケネス様とお会いする前は、王国の宮廷魔術師として活躍されていたことは話には聞いているわね」
そうなのです。アルネ様は宮廷魔術師として王都で活躍されていましたが、ただすぐにおやめになられて、その後はケネス様の奥様としてこのエルクの街にお住みになられるようになったと、こちらで長年働く庭師の方に聞いたことがあります。
その後マルカム様を生んだ直後に病に倒れてしまい、若くして鬼籍に入られた……。そうお聞きしておりました。
「アルネ様は王都に綺羅星のように現れた魔術師でした。宮廷魔術師として王都入りしてわずか2年で、第二位の座まで上り詰めたのです」
「第一位は宮廷魔術師の統括を長年勤め上げられてきた方だったので、その座は名誉職のような位置にありました。アルネ様は実質ダルリア王国最強の魔術師であったといっていいでしょう」
私は驚きました。宮廷魔術師であったことは知っていたのですが、まさか実質No1の実力をお持ちだったとは思いもしません。ただアルネ様長女カリン様の魔術の実力を考えてみると、そのお話は納得のできるものでした。
「その宮廷魔術師として、目覚しい活躍をしていたさなか、アルネ様はケネス様と恋におちたのです」
「アルネ様は私の一目ぼれだった、と笑ってお話になられておりました。ケネス様も同じことを言っておられましたけれどね」
「ただ当時ケネス様はエルクの次期君主として、既にフィアンセが決まっておりましたこともあり、周囲の大反対がありました」
「半ば強引にケネス様は周囲の反対を断ち切り、アルネ様とご結婚されました。そのときの騒動といったらこのアルピン家はもう倒れてしまうのではないかというくらいの大変なものだったのですよ」
マリア様は当時の騒動を思い返しているのでしょう。苦笑いの表情をしています。
「そしてケネス様とご結婚がきまり、しばらくしてカリン様を身ごもられますと、アルネ様は宮廷魔術師をあっさりと引退したのです」
「当時、女性の宮廷魔術師は子供が生まれるとその職をやめるような慣例はありました。ですけれど、アルネ様は当時第二位の席についていました。周りは当然、そのまま宮廷魔術師にとどまり続けると思っておりました」
「ただアルネ様は、私は生まれつき身体が弱く、子供を生み育てることと宮廷魔術師の仕事の双方をこなすことは難しい……。そのようなことをおっしゃっておりました」
「その後、カリン様が生まれ平穏で幸せな日々のなかすくすくとお嬢様は成長し、アルピン家の皆が笑顔ですごす日々が永遠と続くものと思っておりました」
「その幸せの最中、あの忌まわしき隣国ルバ王国との大戦が始まるのです……」
カールさんは少し驚いたような表情をしています。
「いいのよ、この話は屋敷で働く一部の人には既に知られていること。それにマルカム様のお世話をしているナーシャには知っていてもらいたかったのよ。これはちょうどよい機会だわ」
そういうとマリアさんは、カールさんへの依頼とマルカム様のお母様でありますアルネ様について、話を始めたのです。
「カールへの依頼内容は、ケネス様の奥様であるアルネ様の当時お持ちになっていた、さまざまな魔道具を回収することです。」
「ナーシャ、アルネ様はケネス様とお会いする前は、王国の宮廷魔術師として活躍されていたことは話には聞いているわね」
そうなのです。アルネ様は宮廷魔術師として王都で活躍されていましたが、ただすぐにおやめになられて、その後はケネス様の奥様としてこのエルクの街にお住みになられるようになったと、こちらで長年働く庭師の方に聞いたことがあります。
その後マルカム様を生んだ直後に病に倒れてしまい、若くして鬼籍に入られた……。そうお聞きしておりました。
「アルネ様は王都に綺羅星のように現れた魔術師でした。宮廷魔術師として王都入りしてわずか2年で、第二位の座まで上り詰めたのです」
「第一位は宮廷魔術師の統括を長年勤め上げられてきた方だったので、その座は名誉職のような位置にありました。アルネ様は実質ダルリア王国最強の魔術師であったといっていいでしょう」
私は驚きました。宮廷魔術師であったことは知っていたのですが、まさか実質No1の実力をお持ちだったとは思いもしません。ただアルネ様長女カリン様の魔術の実力を考えてみると、そのお話は納得のできるものでした。
「その宮廷魔術師として、目覚しい活躍をしていたさなか、アルネ様はケネス様と恋におちたのです」
「アルネ様は私の一目ぼれだった、と笑ってお話になられておりました。ケネス様も同じことを言っておられましたけれどね」
「ただ当時ケネス様はエルクの次期君主として、既にフィアンセが決まっておりましたこともあり、周囲の大反対がありました」
「半ば強引にケネス様は周囲の反対を断ち切り、アルネ様とご結婚されました。そのときの騒動といったらこのアルピン家はもう倒れてしまうのではないかというくらいの大変なものだったのですよ」
マリア様は当時の騒動を思い返しているのでしょう。苦笑いの表情をしています。
「そしてケネス様とご結婚がきまり、しばらくしてカリン様を身ごもられますと、アルネ様は宮廷魔術師をあっさりと引退したのです」
「当時、女性の宮廷魔術師は子供が生まれるとその職をやめるような慣例はありました。ですけれど、アルネ様は当時第二位の席についていました。周りは当然、そのまま宮廷魔術師にとどまり続けると思っておりました」
「ただアルネ様は、私は生まれつき身体が弱く、子供を生み育てることと宮廷魔術師の仕事の双方をこなすことは難しい……。そのようなことをおっしゃっておりました」
「その後、カリン様が生まれ平穏で幸せな日々のなかすくすくとお嬢様は成長し、アルピン家の皆が笑顔ですごす日々が永遠と続くものと思っておりました」
「その幸せの最中、あの忌まわしき隣国ルバ王国との大戦が始まるのです……」
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