床下ダンジョンは刻の部屋〜平凡男の成り上がり〜

15話 なぜ

スライム騎士が消滅した後に残ったのは深い青色の魔石
大きさはスライムの魔石の2倍くらいはある。
一体いくらで売れるか楽しみだな

そして、一緒に落ちていたのは
ジェル素材の座布団
いや、スライム素材の座布団？

ゲームのようにアイテム名が表示されてくれればいいのだが、そんな便利なシステムは無い。
調べるにはアイテム鑑定士に頼まないといけない。
確か1個につき5万円が相場だったような
ちょっと高いし、家に戻ったらゆっくり調べてみよう。
何はともあれ、これは俺の初ボス討伐の戦利品だ。

それにしても嬉しいな
俺がダンジョンのボスを倒すなんて、こみ上げてくるものがあるな。

ボスがいなくなったボス部屋
入った扉とは別に奥にもう一つ扉がある。
おそらくあの扉から下の階層？上の階層？に行けるのだろう。
少しだけ覗いてみようか悩むな
う～～ん……よし！少しだけ覗いてみよう。

好奇心に負けた俺はゆっくりとボス部屋の最奥の扉を開いた。
扉を開けると階段が下へと続いている。
灰色の石灰岩のような階段はまるで遺跡みたいだ。

俺は一応短剣を構えて、一段一段ゆっくりと降りていく。
すると再び扉があった。
これが2階層の階段だな。

どうやら階段間は魔物は出てこなさそうだ。
ゆっくりと扉を開ける。

開けた先は土色の岩肌の洞窟
1階層と同じだな
1階層同様ならば通路と大部屋みたいな感じだろうか
少しばかり進んでみる。

あった。案の定、道の先が開けた場所が見える。
さて，どんな魔物がいるのだろうか？
俺は足音を殺して、広場を覗き込む

ーーいた。

広場にいたのは半透明の赤色のスライム1体。
大きさは1階層のスライムと同じくらい
まさかの色違いスライムとはな

赤スライムはぴょんぴょんと飛び跳ねている。
1階層のスライムと違ってアクティブな奴だな。
強いのだろうか？
うーん、戦ってもいいが、とりあえず今日は闘うのはやめて帰ろう。
楽しみは次の時に取っておこう。

俺は来た道を引き返し、階段を登り、1階層のボス部屋に戻った。

しかし、ボス部屋の扉を開けた瞬間、思考が固まった。

ーーなぜ？

なぜお前が居るんだ！？
部屋の中央にスライム騎士が立っていた。

いや、待て待て待て！
何故お前がいるんだよ！
俺はナイフを構えて臨戦体勢になりながらも考える。

まさか部屋を出る事でリスポーンするのか？
鉄アレイで開けたままにしていた扉も閉まっているし……
マジか……って事は地下2階に行って帰る場合、行きと帰り2回倒さないとダメなのか……
エグいほどのクソ仕様だな

でも、ポジティブに考えると好きなだけ倒せるって事だ。
俺は思考を無理やりポジティブに変える。
サラリーマン時代に自分の心を守る為に身に付いた得意技だ。

というわけで修行と思って戦うとしよう

サクッと終わらせたい俺は【移動】を3回使用し、一気に接近する。

レベルアップにより【移動】は連続5回までインターバル無しで使えるようになった。
かなり有能なスキルになってきたと思う。
　しかし、【移動】のスキルは瞬間移動のように一気に距離を移動するスキル。視野が一気に切り替わる為、以前の俺ならば2回連続がギリギリだった。

だが、レベルアップの影響だろうか
連続使用しても視野がしっかりと確保できている。
これならば5連続【移動】も問題なくできそうだ。

今の位置はスライム騎士が溶解液を飛ばしてくる距離。
さぁ、打ってこい！

スライム騎士は俺の計算通り、剣を持たない左手から溶解液の弾を飛ばしてきた。

来た。

俺は弾の軌道を見極め、サイドステップで横に避け
【移動】を5連続で使用
【移動】間の視点の切り替えもしっかり見える。

瞬時にスライム騎士の背後に移動した俺
未だスライム騎士は反応できていないようで左手は筒状のままだ。
俺は無防備な核に短剣を突き刺す。
スライム騎士が粒子となり、消失する。
深い青の魔石がその場に落ちる。

流石にレベルアップはしないか。
今回はドロップアイテムはないようだ。
どうやらドロップアイテムは毎回落ちるわけでは無いらしいな

それにしてもレベルアップすごいな。
めっちゃ余裕で倒せた。

一時はどうしたものかと思ったがな。

さぁ、お家に帰ろっと！

俺のダンジョンボスデビューは少し予定外な部分はあったが無事終わった。