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38話 タムタムの武器
しおりを挟む「到着したぞ」
「ニャ……」
モルワン武具店の近くのパーキングに到着した。
タムタムは到着する少し前から鼻をムズムズ動かし、辛そうにしている。
理由は分かっている。
車内であっても猫の嗅覚がモルワン武具店のあの激臭を感じ取ったのだろう。さすがは猫だ。
あの臭いは人間ですら相当キツい臭いだからな。
「行けるか?」
あまりに辛そうなので心配になるな
ティッシュを鼻に詰めてやるわけにもいかないしな。
だが少しすると臭いに順応してきたのだろう。
「……ニャ」
少しばかり枯れた鳴き声で行けると伝えてきた。
こいつがここまで辛そうなのは逆に新鮮だな。
「中は更に臭いけど耐えてくれよ。腕は最高の武具職人だから」
タムタムについて説明が必要だろうけど、きっと最適な武器を見繕ってくれるはずだ。
「ニャ」
短くわかったと鳴くタムタム。
俺はタムタムにリードをつけて、車内から出てモルワン武具店へと向かった。
「おうっ!」
店内に入るといきなり声がかかった。
汚れたつなぎと黒いバンダナ、モルワンの店主だ。
相変わらず強面かつ声がデカい。やっぱり圧がすごいな
「お久しぶりです」
俺は軽く頭を下げ挨拶をする。
「あぁ?この前来たばかりじゃねぇか!……うん?それにしても短い期間でお前さん、一段と強くなったじゃねぇか!それに横のはなんだ?テイムした魔物か?」
「いや、こいつはただの猫ですよ」
見た目は普通の猫には見えないよな。
小さな虎のようなフォルムで毛並みとかフワフワのサラサラのモフモフだし。
「ニャ」
猫だよとばかりに鳴くタムタム
かなり臭いには慣れたらしい。
「マジかよ…これまたとんでねぇニャンコロだな」
珍しく口を開けて驚く店主
ちなみに店主の言うテイムした魔物とは、その名の通り冒険者によって手懐けられた魔物だ。
テイムされた魔物は、簡単に言うとポケ●ンみたいな感じで主人の命令に従い、戦ってくれるらしい。
また魔物をテイムする方法は2種類の方法があり、一つはスキル【魔物使い】の能力によるテイム。
もう一つは、数年前に開発された新技術"テイムピン"
魔物にテイムピンと呼ばれる特殊なピンを刺す事でテイムできるらしい。刺す場所や魔物の状態などで成功率は変動するらしく、最低ランクの物でも一つ数千万円もする高級品だ。
確かにドラゴンをテイムするとかロマンではあるが、俺はいらないな。
と思考が脱線してしまった。
「で今日はこの猫、タムタムって言うんですけど……お分かりの通り少し特殊でして、口外無用でお願いしたいのですがーー」
俺は店主にタムタムがレベルアップをした経緯を話した。
加えて、人語を人並みに理解できる高い知能を持っている事や具体的には話していないが強力なスキルを持っていると言う事も話した。
勿論、家のダンジョンの秘密は隠してだが。
話を聞き終わったモルワンの店主はタムタムをジッと鋭い視線で見つめる。
少しばかりタムタムが後ろずさる。
わかるよタムタム。この人の無言って怖いよな。
「なるほどなぁ、こいつは確かに他言無用の内容だ。今の冒険者界隈ではテイムした魔物が主流だが覚醒動物も需要はある。ニャンコロのような覚醒動物は今でもかなりレアだからな。一昔前は闇オークションで高値で取引されていたらしいしな。今は法がしっかりとしているとは言え、あまり周りに流布しない方がええな」
闇オークション……怖い世の中だ。
タムタムの事は基本隠す方針でいこう。
怖い人に狙われるのとか嫌だしな。
あぁ、秘密がどんどん増えていく…
「で今日はタムタム用の武器を売ってもらいたいのですが」
俺は伺い立てるように話を切り出す。
「あぁ、ええぞ。そのニャンコロに武器を作ってやる」
やった。案外簡単に引き受けてくれた。
って、うん?
「作る?売るの間違いじゃなくて……」
このthe職人みたいな男がタムタムの為に武器をつくるだって?
聞き間違いか?
「あぁ作るだ。ここにある武器は人間用だからな。ニャンコロの為の武器はねぇ。ねぇなら作るしかないだろ。そのニャンコロは言葉は分かるようだが意志を伝える事はできるか?」
「ニャン!」
珍しく強く返事するタムタム
どうやら武器を作ってもらえることが嬉しいのだろう。
羨ましい…
「文字はまだ無理そうですが、絵とか図でなら伝えれるそうです」
「そうか、十分だ」
そう言うと店主はくるっと向きを反転し、店の奥へと消えていった。
「あれ?待っとけばいいのか?」
「ニャア?」
俺とタムタムは見つめ合い首を傾げる。
「ニャンコロだけ来い!」
うん??タムタムだけ?
「ニャン」
行ってくると鳴いたタムタムは店の奥へトコトコ歩いていった。
取り残された俺。
どうすればいいんだろうか?
手持ち無沙汰な俺は近くにあった埃まみれの椅子に腰掛ける。
おそらくどういう武器にするかの打ち合わせだろうし数十分で帰ってくるだろう。
だが考えがあまかった。
その後も1時間経てども彼らが戻ってくる事は無かった。
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