伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜

超高校級の小説家

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ライラックさんの診療所で働くことが決まってから、一緒に村長さんにご挨拶に向かいました。

ここランタナ村では村長さんの許可が無いと村に住むことはできないそうです。怪しい者に居付かれても村に良い事はありませんから、なんとなく理解しました。

村長さんは最初はあまり良い顔はしませんでしたが、ライラックさんの頼みということで許可してくれました。ライラックさんの信用のおかげです。

それから、私を助けてくれたマルクさんの家に行ってお礼を言いました。奥様のハンナさんと、私を見つけてくれたノーラちゃんに歓迎されて、ハンナさんの手料理をご馳走になりました。昨日から何も食べていなかったので少し食べすぎたかもしれません。

昨日は隣の村にあるハンナさんの実家に行った帰りだったらしく、親切な人達に偶然見つけてもらえて良かったと思います。

こうして村に住み始めてから半年ほどが経ちました。

一日一回の診療報酬も毎日患者さんが来るわけでは無いのですが、それなりに貯まってきました。服や肌着をたまに新調する以外にお金の使い道が無いのです。

ライラックさんとも気楽に話せるようになったので、彼のこともいろいろ聞かせてもらいました。以前は夫婦で王都に住んでいたらしいのですが、奥様を亡くされてからここに移住して来たそうです。かなり気まずくなったので詳しくは聞けませんでした。

私は先日16歳になりました。貴族のままでいたら、そろそろ見合い等させられていた歳になります。マトリカリア家の長女なのに治癒魔法を使えない私に嫁の貰い手があったかはわかりませんが。

ノーラと話している時に誕生日が過ぎたことを口にしてしまったので、ノーラが「お祝いしないと!」と言い出して、今は二人で森に果物を探しに来ています。ハンナさんが作るケーキの材料にするのだそうです。

「フリージアも16歳になったのなら、お嫁に行きたいとか思わないの?」

道すがらノーラにそんなことを聞かれました。ノーラはまだ9歳なのですが、割と耳年増で世話焼きです。仲の良い両親を見ているためか、本人は早く結婚したいそうで実に気の早いことです。

「特にそうは思いませんけど、そもそも相手がいないです」

「えー?フリージアってすっごく美人だからすぐに見つかると思うけどなあ。ライラックさんとかどう?」

「え?」

そういえばひとつ屋根の下で暮らしていますが、歳が離れているためか全く意識したことはありませんでした。
それから、私は別に美人じゃないと思うのですが。

「流石に歳が離れ過ぎてませんか?ライラックさんも私なんか小娘くらいにしか見てないと思いますよ」

「10歳くらいしか違わないはずだから、別に普通だよ?ライラックさんかっこいいし!」

確かに整った顔立ちをしていますけど……特にそういったことは考えていないです。
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