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44:臆病者の想い

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休日の朝。
セガールはいつもの時間に目覚めると、起き上がって、暫しの間、ぼーっとしていた。日課をしなくてはいけないのだが、今日はちょっとやる気が起きない。セガールの頭は、2日前の夜から、ずっとふわふわしたままだ。

カールと、抜きっこを通り越して、めちゃくちゃ舐め合ってしまった。カールの精液も飲んじゃったし、セックスに近い行為をしてしまった。言い訳をするならば、カールが甘えるように鼻を擦りつけてくるから、可愛くて愛おしくて堪らなくなり、気づけばカールの身体に跨って、カールの若々しい肌を舐めていた。

セガールはカールの肌の熱さや味わって飲み込んだ精液の味を思い出して、大きな溜め息を吐きながら、自分の股間を見下ろした。
ちょっと思い出すだけで、朝勃ちしていたペニスがより元気になった。ちょっと引っ込みがつかないレベルで、ガチガチに勃起しちゃっている。
セガールは一瞬だけ悩んだ後、パジャマのズボンとパンツをずり下げて、若い頃よりもゆるい角度で勃起している自分のペニスを掴んで、先走りを塗り広げるようにしながら、ぬこぬことペニスを扱き始めた。
朝から一発抜くなんて、10代20代の若造じゃあるまいし。セガールは自嘲しながら、2日前の夜のカールを思い出して、夢中でペニスを弄った。

カールが好きだと自覚してしまった途端、これである。なんと言うか、もう本当にどうしようもない。カールとのエスカレートした行為を、開き直るには勇気が足りない。かといって、無かったことにはしたくない。カールもセガールのペニスを咥えて、舐めてくれた。ペニスだけでなく、色んなところを舐めて、数え切れないくらいキスをした。
カールには、好かれていると思う。だが、それがセガールと同じ方向性なのかは分からない。確かめたい気もするが、年の差や男同士であること、世間体、その他諸々、二の足を踏んでしまう要因が多過ぎて、行動に移す勇気が出ない。セガールは、どうやら自分が思っていた以上に不器用で、臆病者だったらしい。

セガールは低く呻いて、自分の掌に精液を吐き出すと、大きな溜め息を吐いて、ベッドのヘッドボードに置いているティッシュを手に取り、ティッシュに精液を擦りつけた。ティッシュを丸めてゴミ箱に向かって放り投げ、ずり下ろしていたパジャマのズボンとパンツを引き上げると、セガールはのろのろとベッドから下りた。
今日は3人で眼鏡屋に行く予定である。今頃、カールは日課の筋トレをしているだろう。カールと一緒に筋トレをしたい気持ちが半分、顔を合わせるのが気まずい気持ちが半分といったところである。
何はともあれ、まずは手を洗わねば。セガールは室内用のスリッパを履いて、ペタペタと部屋から出た。

いつも通りを装って、筋トレを終えたカールと一緒に朝食を作り、シェリーを起こして、3人で朝食を食べる。朝食の後片付けをして、洗濯物を干すと、セガールはカールとシェリーと一緒に家を出た。
シェリーを真ん中に、3人並んで走って丘を下りていく。シェリーはまた少し足が速くなっている気がする。もう少し速くなったら、もうシェリーの足に追いつけなくなるだろう。シェリーの成長が嬉しい反面、少しだけ切なくて寂しい。

街に到着すると、部下から聞いた評判がいい眼鏡屋へ向かう。眼鏡なんて、今まで縁が無かった。視力はずっとよかったので、自分の老いを感じてしまい、益々カールへの想いを封じ込めたくなってくる。
シェリーと眼鏡の話しをしているカールをチラッと横目に見て、セガールは2人に気づかれないように小さく溜め息を吐いた。

落ち着いた雰囲気の眼鏡屋に到着すると、カールとシェリーが何故か目を輝かせ、2人でセガールを挟んで、楽しそうに陳列してある眼鏡のフレームを眺め始めた。


「セガールさん。これ、試しに着けてみてください」

「ん?あぁ」


カールが楽しそうに、丸い銀縁の眼鏡を差し出してきた。言われるがままに着けてみると、なんとも言えない勝手悪さを感じた。視界に眼鏡のフレームが入るのが、違和感しかない。
眼鏡をかけてカールを見れば、カールがパァッと顔を輝かせた。


「おぉ!似合いますね!渋くて格好いいです!」

「そうか?」

「パパ。次はこっち」

「あぁ」


セガールは丸い銀縁の眼鏡を外して、今度は黒縁の丸っこい四角いフレームの眼鏡をかけた。カールとシェリーが、楽しそうに話し合い始めた。


「さっきの丸いのもいいけど、こっちもアリじゃない?」

「確かに。でも、細めのフレームの方が顔立ちに映える気がする」

「あっ。これは?この四角い細いやつ」

「お。いいじゃん。セガールさん。セガールさん。次はこっちで」

「あぁ」


セガールは楽しそうな2人に勧められるがままに、いくつも眼鏡を試着した。
結局、カールが一番似合うと満面の笑みで言い切った、銀縁の細めの四角いフレームを選んだ。そんなに重くもないし、眼鏡用のチェーンを着けて、首から下げても問題ない。視力を測定してもらったが、細かい文字を見る時以外は、別に眼鏡は必要ない。老眼用のレンズを作ってもらい、選んだフレームに嵌めてもらって、セガールの老眼鏡が完成した。

眼鏡が出来上がるのを待つ間、暇だったので、セガールはカールにも眼鏡をかけさせてみた。シェリーと2人で似合いそうなフレームを探し、カールにかけさせて遊ぶ。眼鏡をかけたカールは、落ち着いた色合いの深い青い瞳も相まって、なんだか知的に見えた。いつもの明るい雰囲気も好きだが、知的で落ち着いた雰囲気もアリである。
セガールは地味にはしゃぎながら、楽しそうな顔で笑っているカールを眺めて、小さく胸を高鳴らせた。

3人で昼食を食べに行き、図書館へと向かう。今日は世間一般的には平日なので、図書館に行ってもリールはいなかった。シェリーが少し残念そうにしていたが、沢山の本棚を見れば、目を輝かせて本を選び始めた。
リールとは一度一緒にピクニックに行ったことがある。リールは、礼儀正しくて、大人しいが優しくて賢い子だと思った。セガールとしては、シェリーに恋はまだまだ早いと思うのだが、いつかシェリーが結婚をするのならば、リールのような優しくて穏やかな男がいいんじゃないかと、ちょこっと思った。
その事をカールに溢すと、カールが穏やかに笑って同意してくれた。カールは、まだ本好き仲間な若い2人を、微笑ましく見守るつもりらしい。セガールはそのまま本好き仲間のままでいてほしいのだが。

セガールは児童書コーナーで本を選んでいるシェリーに一声かけてから、仕事に関係する専門書があるコーナーに向かった。
面白そうな天候に関する専門書を手に取って、パラパラと頁を捲っていると、気づけば隣にカールがいた。
カールがセガールに顔を近づけて、小さな声で話しかけてきた。


「それ、面白そうですね」

「あぁ。一緒に読むか?」

「はい。そんなに分厚くないから、再来週の修理した船の試し航海までには読めそうですね」

「……回し読みじゃなくて、夜に一緒に読むか?」

「あ、いいですねー。酒を飲みながら読みます?」

「あぁ。晩飯の買い物のついでに、軽めの酒を買って帰ろう」

「はい。夜の楽しみができましたね」

「あぁ」


カールが楽しそうな笑みを浮かべたので、セガールもつられて小さく笑った。
カールと一緒に本を読むのは、楽しそうだし、素直に嬉しい。
セガールは小さな声でカールと話しながら、すぐ近くにいるカールから香るカール愛用の爽やかな香水の匂いに、胸をときめかせた。

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