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33:報告と喜び

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翌日。
城に帰って2人でこっそりロヴィーノに会いに行き、家族全員でロヴィーノの部屋に集合して報告すると、それはもう喜ばれた。大喜びのロヴィーノがジャンに勢いよく抱きついて頬にキスをすると、フリオもアルジャーノもフェルナンドも次々とジャンに抱きついてキスをした。ジャンは驚いていたが、それでもとても嬉しそうに笑っていた。そのまま全員仕事を放り出して、こっそり城の貯蔵庫から酒を拝借してきて酒盛りになった。皆終始笑顔で、フェリは嬉しくて堪らなかった。ここにクラウディオもいればもっといいのに。フェリはクラウディオにジャンを早く会わせたくて仕方がなくなった。

ジャンは将軍を辞めるにあたり、引き継ぎなど様々な雑事があるため、今回はジャンを置いて、フェリは風の宗主国から旅立った。まずはクラウディオに報告しなければならない。フェリは真っ直ぐサンガレアへと向かって飛んだ。






ーーーーーー
風竜をかっ飛ばして、いつもより早くサンガレアに着いた。マーサの家の庭に降り立つと、マーサが出迎えてくれた。フェリは風竜から飛び降りた勢いのまま、マーサに抱きついた。


「マーサッ!」

「おかえりー!兄さん」

「ただいまっ!マーサ!俺はやってやったぞ!」

「お!ついにジャン将軍を落とした?」

「おうともよ!」

「やったじゃぁぁん!!兄さん!おめでとう!!」

「はははっ!」


フェリは笑いながらマーサを抱き上げて、その場でくるくる回った。マーサが嬉しそうに楽しそうに笑いながら、フェリの髪を優しく、くしゃくしゃ掻き回す。フェリが少し落ち着いてマーサを下ろすと、マーサが優しくフェリの頬を撫でた。


「本当によかったね、兄さん」

「うん」

「クラウディオ分隊長には今から報告?」

「うん。今仕事だよな?」

「いや、今日は確か休みだよ。出掛けてなかったら家にいるんじゃないかな」

「じゃあ、行ってくるよ」

「うん。いってらっしゃい」


笑顔のマーサに見送られて、フェリはクラウディオの家に向かって飛び立った。

クラウディオの家の玄関で呼び鈴を押すと、すぐにラフな格好をしたクラウディオが出てきた。フェリは勢いよくクラウディオに飛びついた。


「クラウディオッ!」

「フェリ!おかえり」

「ただいま!」

「いいことでもあったのか?」

「聞いて驚け!ジャンが伴侶になったぞ!」

「……ははっ!そうか!でかしたぞ!フェリ!」


クラウディオが嬉しそうに笑ってフェリを抱き上げて、フェリの顔中に何度もキスをしてくる。フェリはそれをクスクス笑いながら受けとめた。いつまでも玄関先でじゃれているわけにもいかないので、クラウディオがフェリを抱き抱えたまま居間に移動し、椅子に座ってフェリを自分の膝にのせた。


「……何年も頑張ったな、フェリ」

「うん」

「これで神子の務めの時も1人じゃない」

「うん」


クラウディオが本当に嬉しそうに穏やかに微笑んだ。ここまでクラウディオに想われているのが、嬉しくて堪らない。本当はフェリに伴侶が増えるのは嫌なはずだ。でも自分のことよりもフェリのことを心配して優先してくれる。本当に優しい男だ。フェリはうまく言葉にできない感情が溢れてきて、ぎゅうぎゅうとクラウディオに強く抱きついた。クラウディオも強く抱き締めてくれる。


「仕事の引き継ぎとかあるし、ジャンも飛竜に乗ってくるから、次こっちに帰るのはいつもより少し時間が空くかも」

「うん。構わない」

「子供達も喜んでくれたよ」

「だろうな。ジャン将軍のことを俺に教えてくれたのは子供達だし」

「うん」

「早く会いたいな。いい男なんだろ?」

「うん。優しい感じ」

「楽しみだ。なぁ、いっそ家を建てようか」

「家?」

「皆で住める家。小さくなるだろうけど、飛竜も一緒に過ごせるように竜舎も隣接して作るんだ」

「街中にはそんな土地ないだろ?」

「郊外に建てればいい。竜舎の隣に馬小屋も作って、俺は馬で通勤すればいいし。マーサ様に声をかけたら喜んで協力してくれるぞ。最近家は建ててないしな」

「本当にいいのか?」

「あぁ。前から皆で過ごせる大きめの家が欲しかったんだ。マーサ様に家の周囲に結界を張ってもらったら警備上の不安もなくなるし。早速明日マーサ様のところに2人で行こう」

「うん!」


クラウディオが本当に楽しそうに話ながら、フェリに頬擦りした。フェリもクラウディオの首に腕を回してピタリとくっつく。
フェリの家族が1人増えた。もしかしたら、これからまた増えるかもしれない。窮屈な城ではなく、のびのびと過ごせる我が家ができる。きっと子供達も喜ぶはずだ。フェリはクラウディオの頬を両手で包んで、そっと触れるだけのキスをした。クラウディオのおでこと自分のおでこをコツンとくっつけた。


「クラウディオ」

「うん」

「俺幸せだよ」

「俺もだよ、フェリ」


2人で見つめあいながら、穏やかに笑いあった。

翌日にマーサのところに2人で行き、家の話をすると即答で協力すると言ってくれた。早速図面を引くとマーサが道具を持ち出して、いつもマーサと一緒に家を建てたりするクラークも参加してクラウディオと3人でどんな家にするか、話し合い始めた。フェリは家のことはよく分からない。メインで住むのはクラウディオなのだから、クラウディオが住みやすい家にしてくれたらいいと思う。あえて希望を言うなら、家族皆で入れるようなデカイ風呂があると嬉しい。クラウディオ達はフェリの希望に頷いて、細かな間取りや設計について、夜遅くまで話し合った。ちょうどいい土地をマーサが知っていたので、そこを明日にでもおさえ、マーサの愉快な趣味仲間に声をかけ、材料が揃い次第、家を建て始めることになった。
あっという間に進んでいく話にフェリは驚くが、ここの人達はいつも大体こうだ。こうと決めた時の行動がおそろしく早い。
次に来たときには、ある程度家が出来ているのではないだろうか。ジャンも子供達もきっと驚く。
フェリはジャンを連れてくるのが楽しみで仕方がなかった。
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