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後編

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オムは草原で草を食む羊達を見守りながら、チラッと隣を見た。いつも通りの無表情なアニクが、黙々と毛糸を編んでいる。アニクは最近、祖母から編み物を習い始めた。左手が少し不自由なのだが、だからこそ手先を動かしておきたいということで、編み物を始めたようだ。
オムの祖母は編み物が得意で、いつも毛糸を売る店に、ついでに作った手袋やマフラー、ちょっとした小物を売って小遣い稼ぎをしている。
アニクがチッと小さく舌打ちをして、編んでいた毛糸を解き始めた。どうやら編み目の数を間違えたらしい。

オムは草を食む羊達に視線を戻した。とても穏やかな空気が流れている。数日前の激しいセックスが、実はオムの夢だったんじゃないかと思うくらい、いつも通りだ。
オムがアニクに何故セックスをしたのかと尋ねた時、アニクは気紛れ半分と、オムが終の棲家だからと答えた。
オムが終の棲家とはどういうことだろうか。もしかして、アニクはオムのことが好きなのだろうか。セックスをした翌日から、ずっとアニクは普段通りの何を考えているのか分からない無表情で過ごし、いつも通り無口で、本当に必要最低限しか喋らない。
オムは悶々と悩んでいた。もし、アニクに好かれていたとして、オムもアニクのことを好きになれるのだろうか。アニクは『精霊の愛し子』だから結婚ができないのだろう。オムも結婚する相手なんていない。
多分、正式な夫婦にはなれないのだろうが、このままアニクもいる穏やかな暮らしを続けるのもいい気がする。
オムがアニクのことを好きになれるかは分からないが、少なくとも、セックスはできた。身体から始まる関係というものも世の中にはあるらしい。セックスをすることで、情が深まっていくとかなんとか。お喋りな床屋の親父が、そんな事を昔、話していた。

満腹になるまで草を食べた羊達を柵の中へと連れて帰りながら、オムはどうしたものかなぁとぼんやり考えた。

数日後。
今日も朝から雨が降っている。今は雨が多い季節で、暇な日が多い。オムが家の掃除を終えると、居間で編み物をしていたアニクが声をかけてきた。


「おい」

「はい」

「やるぞ」

「え?何を?」

「セックス」

「へぁっ!?」


オムが唐突なアニクの言葉に驚いてピシッと固まると、アニクが途中の編み物をテーブルの上に置いて、椅子から立ち上がった。
首根っこを掴まれ、ずるずるとアニクの部屋に連れて行かれる。
部屋に入れば、アニクがすぐに服を脱ぎ始めた。アニクの古傷もある筋肉質な身体を見ていると、前の激しいセックスを思い出して、思わず股間に血液が集まり始める。
オムがおろおろしていると、全裸になったアニクがベッドに上がり、オムに向かって膝を立て、両足を大きく広げた。もじゃもじゃの陰毛の下のまんすじががっつり見えている。オムは目を泳がせながら、それでもチラチラとアニクのまんすじを見た。あそこがいやらしくて気持ちがいいことは既に知っている。どんどん自分のペニスが硬くなっていくのが嫌でも分かる。

アニクがいつもの無表情で、ちょいちょいと指でオムを手招きした。


「とっとと舐めろ」

「……は、はい」


オムはアニクの言葉に誘われるがままに、フラフラとベッドに近づいた。
ベッドの端の方に座っているアニクの前に膝をつき、間近でアニクのまんこを眺める。おずおずと両手の指でくぱぁとまんこの肉厚の肉襞を広げれば、アニクのまんこは既に濡れて、鈍くてらてらといやらしく光っていた。
オムが思わずゴクッと生唾を飲み込むと、アニクがクックッと低く笑った。

どことなく上機嫌なアニクを目だけで見上げながら、おずおずとアニクのまんこに舌を這わせる。ねろーっとまんこの穴からクリトリスへと舐め上げ、ぷっくりとしたクリトリスをチロチロと舐めると、アニクが気持ちよさそうに溜め息を吐いた。いやらしい匂いがする。
オムはアニクのクリトリスを舐め回しながら、指でアニクの濡れたまんこの穴の表面を撫で、ゆっくりと中指をまんこの穴の中に押し込んでいった。アニクのまんこの穴は狭くて、熱くて、ぬるぬるした膣壁が指に絡みついてくる。指の腹が腹側の微かにざらついたところに触れると、アニクがビクッと足を震わせ、オムの頭をくしゃりと撫でた。
目だけで見上げれば、アニクが口角を上げ、目を細めていた。


「そこをもっと擦れ。……あ゛ーーっ、そう、そうだ。クリトリスももっと強く舐めろ。は、あぁっ……」


いやらしい匂いが濃くなる。愛液がどんどんアニクの中から溢れ出てきて、指を動かす度に、くちくちくちくちといやらしい音がする。
オムは酷く興奮して、アニクのまんこの穴から指を引き抜き、アニクの股間に伏せていた顔を離した。その場で立ち上がって、性急にズボンとパンツを脱ぎ捨てた。ぶるんっとガチガチに勃起したペニスが窮屈だったパンツの中から開放されて、オムは小さく熱い溜め息を吐いた。

アニクがオムのペニスを見て、クックッと低く笑いながら、ころんと後ろに倒れた。オムはベッドに上がり、大きく広げたアニクの足の間を陣取って、勃起している自分のペニスを片手で掴んで、アニクの熱い濡れたまんこの穴にペニスの先っぽを押しつけ、アニクの両足の膝を両手で掴んで、ゆっくりと腰を動かし、アニクのまんこの穴にペニスを押し込んだ。ペニスが熱くてぬるぬるした柔らかい膣壁に包まれていく。酷く気持ちがよくて、オムは堪らず喘ぎ混じりの溜め息を吐いた。ペニスを深く押し込んでいけば、肉の壁にペニスの先っぽがぶつかる。そこをトンッと突けば、アニクの身体がビクッと震えて、膣壁が蠢いて、オムのペニスにまとわりつき、キツく締めつけてきた。

我慢なんてできない。オムはアニクの顔の両側に手をつき、本能が赴くままに激しく腰を振り始めた。真下にあるアニクの顔が、いつもの無表情ではなく、楽しそうな笑みを浮かべている。アニクが笑っているのを見るのは、これで二度目だ。一度目は、前回のセックスの時である。
アニクがするりとめちゃくちゃに腰を振っているオムの首に逞しい両腕を絡め、オムの顔を自分の胸元に引き寄せた。


「乳首も舐めろ」

「はっ、はっ、んっ、んっ」

「は、あ゛ーーっ、そう、いい子だ。あ゛ぁぁっ!もっとだ!もっと突けっ!いいっ!いいっ!吸えっ!あ゛ぁっ!!」


オムは、逞しく盛り上がったアニクの胸筋の下の方にある、ちょこんとした淡い赤褐色の乳首を乳輪ごと吸いながら、ガンガンまんこの中の肉の壁をペニスの先っぽで突き上げまくった。アニクが楽しそうに喘ぎながら、激しく動かしているオムの腰に両足を絡めた。


「あ゛っ!あ゛っ!いいっ!いいっ!あ゛ーーっ!いくっ!いくいくいくいくっ!!あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!」


アニクが乳首を吸うオムの頭を抱きしめ、ビクビクンッと身体を震わせた。繋がっている下腹部に熱い液体が勢いよくかかるのが分かる。アニクの膣壁がぎゅうっとキツく締まり、オムは我慢できずに、一際強くアニクのまんこの穴の奥深くの肉の壁をペニスの先っぽでぐりぐりしながら、そのまま精液をぶち撒けた。

荒い息を吐くオムの顔をアニクが両手で掴んで、噛みつくような勢いでオムの唇に吸いついてきた。口内に熱いアニクに舌が入ってきて、めちゃくちゃに口内を舐めまわされる。
アニクが唇を触れ合わせたまま、囁いた。


「抜け」


オムは絡みついてくる膣壁の感触が気持ちよくて、まだまだアニクの中に入っていたかったが、伏せていた身体を起こし、アニクのまんこの穴からペニスを引き抜いた。アニクのまんこを見下ろせば、まんこの穴から、こぽぉっとオムの白い精液が溢れだした。酷くいやらしい光景に、ペニスがまたゆるく勃起し始める。
アニクが身体を起こし、その場で四つん這いになった。アニクがムッキリとした尻肉を片手で掴んで広げた。精液が垂れるまんこの穴も、周りにちょろっと毛が生えた赤黒いアナルも丸見えになる。


「突っ込め」


オムは荒い息を吐きながら、ゆるく勃起したペニスを片手で扱き、完全に勃起させると、アニクの尻を片手で掴んで、まんこの穴に再びペニスを押し込んだ。アニクが満足気な溜め息を吐き、自分の尻肉から手を離した。
オムはアニクの肉厚の尻肉を両手で掴んで広げながら、また激しく腰を振り始めた。下を見下ろせば、アニクのアナルが皺を大きく伸ばしたり、細かくしたりしながら、収縮している。何故だか、それが酷くいやらしく思えて、オムはめちゃくちゃに腰を振りながら、アニクの愛液で濡れたアナルに親指を突っ込んだ。


「あ゛ぁ!?」


まんこよりもキツくて狭いアナルに親指が締めつけられ、膣壁が蠢き、オムのペニスにキツく絡みついてくる。オムはぐにぐにとアナルに挿れた親指を動かしながら、夢中で腰を激しく振った。ここにペニスを挿れても気持ちよさそうだ。あまりにも狭い穴なのでペニスが入るか分からないが。
アニクの野太い喘ぎ声が、外から聞こえてくる雨音と共に室内に響く。
オムはアニクのアナルから親指を引き抜き、引き締まったアニクの腰を両手で掴んで、パンパンパンパンッとアニクの尻に下腹部を激しく叩きつけるようにして、アニクのまんこの奥深くの肉の壁をペニスで突きまくった。気持ちよくて、酷く興奮して、堪らない。

オムは疲れ果てて寝落ちるまで、アニクの熱と快感に溺れた。





------
オムが目覚めると、アニクがオムを抱きしめるようにして寝ていた。お互いに全裸で、足を絡めるようにして、ぴったりとくっついている。肌に触れているアニクのしっとりと汗で濡れた肌の感触が、なんだか心地いい。
外から雨音が聞こえてくる。
ざぁぁっと降っている雨音に耳をすませながら、オムはじっとアニクの寝顔を見つめた。長い睫毛が伏せられているアニクの寝顔は、なんだかいつもより穏やかで、無防備で、少しだけ幼く見えた。

オムはアニクに自分のことが好きなのか聞こうかと思ったが、少しだけ悩んで、聞かないことにした。
これで『普通』とか『別に』とか言われたら、なんだかショックで暫く立ち直れない自信がある。
オムがアニクの終の棲家だというのなら、別にアニクの気持ちを聞かなくても、アニクはきっとずっとオムの側にいてくれるのだろう。

正直、アニクが何を考えているのか、全然分からない。アニクはいつだって無表情で、いつだって無口だ。笑うところなんか、セックスをしている時しか見たことがない。アニクはセックス以外でも笑うのだろうか。どうやったら、セックス以外でアニクの笑顔を見ることができるのだろうか。
オムはアニクの穏やかな寝顔を眺めながら、アニクの笑顔が見たいな、と思った。

雨が多い時期は、雨が降る度にアニクとセックスをした。雨の季節を過ぎても、数日おきにセックスをしている。
オムはアニクと一緒に羊の毛刈りをしながら、アニクに話しかけた。


「あの……」

「あ?」

「えっと……これが終わったら、少しだけ出かけませんか?」

「どこに」

「えっと、草原の奥の方に、杏の木があるんです。その、ばあちゃんが好きなので、少し採りにいきませんか」

「別に構わん」

「あ、はい」


アニクが黙々と羊の毛を刈りながら、ぶっきらぼうに了承してくれた。
今日予定していた羊の毛刈りが終わると、刈った羊の毛を作業小屋に運び入れ、オムはアニクを連れて、馬に乗って草原へと出かけた。
草原を並んで馬で駆け、杏の木がある場所に行く。ここはオムが小さな頃から好きな場所だ。草原の隅に杏の木が何本かあり、集落から少し離れているから、滅多に人が来ない。オムは子供の頃から気弱だったから、たまに村の同年代の子供達に酷く揶揄われることがあった。そんな時は此処に来て、1人で泣いていた。

杏の木には、ちょうど食べ頃の杏が沢山生っていた。杏を採って、持ってきていた籠に入れていく。
オムはとびきり美味しそうな杏を手に取ると、おずおずとアニクに差し出した。


「あの、えっと、美味しいですよ」

「ん」


アニクがオムの手から杏を取り、無造作に杏に噛みついた。もぐもぐ咀嚼しているアニクの目が、少しだけ細くなった。多分、気に入ってくれたのだと思う。
オムはちょっと嬉しくなって、ヘラッと笑った。
2人で篭いっぱいに杏を収穫すると、茜色に染まる草原を家を目指して馬で駆けた。
隣を走るアニクが、オムに声をかけてきた。


「おい」

「はい」

「また来るぞ。まだ採れそうな実が残っていた。ばあちゃんが好きなんだろう」

「は、はい!……アニクさんも杏、好きですか」

「普通」

「あ、はい」


チラッとアニクの顔を見れば、ほんの少しだけ口角が上がっていた。
多分だけど、杏が好きなんじゃないだろうか。
オムは嬉しくなって、だらしなくゆるみそうな唇をむにむにと動かした。

アニクとまた杏を採りに行こう。今は毛刈りの季節で忙しいが、少しくらいなら構わないだろう。
今年も、来年も、それから先も、アニクと一緒に杏を採れたらいい。
オムは自然とそう思って、我慢しきれず、小さく口角を上げた。




------
アニクは草原でオムの隣で寝転がっていた。穏やかな晴れ渡る空を見上げながら、大きく欠伸をする。草を食む羊達は今日も元気だ。
チラッと隣にいるオムを見上げれば、オムが穏やかなのほほんとした顔で羊達を眺めていた。ゆるやかな空気が流れている。

アニクはオムに見られないように、声を出さずに小さく笑った。
オムの家で暮らし始めて、もう10年だ。オムは結婚せずに、相変わらずアニクと一緒に暮らしている。アニクは穏やかな生活にすっかり慣れた。穏やかで代わり映えのない日々が愛おしい。

もう少ししたら、雨が多い季節が来る。雨の季節を過ぎたら、杏の季節がやって来る。今年も2人で杏を採りに行く。
他の事は家族も一緒にやるのに、オムは杏の収穫だけはアニクと2人だけでやる。それがちょっと特別な気がして、アニクは杏の収穫をとても気に入っている。

アニクは、のほほんとしたオムの横顔を見上げながら、穏やかな笑みを浮かべた。
オムの側はとても心地いい。アニクの終の棲家は、オムの側だ。オムがいる所がアニクの終の棲家になる。

『好き』だの『愛してる』だの陳腐な言葉を言うつもりはないし、オムに言わせるつもりもない。ただ、側にいられたらそれでいい。
アニクは心地よい風に吹かれながら、小さく欠伸をして、アニクだけの『終の棲家』で、穏やかな午睡を楽しんだ。



(おしまい)
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みんなの感想(1件)

朝倉真琴
2023.04.16 朝倉真琴
ネタバレ含む
丸井まー(旧:まー)
2023.04.19 丸井まー(旧:まー)

感想をありがとうございますっ!!
本当に嬉しいです!!

心の同志ーー!!とハグしたい気持ちでいっぱいです!!
お愉しみいただけて、本当に本当に嬉しいです!!!!
嬉し過ぎて語彙力が死んでおり、この!喜びを!うまくお伝えできないのがとてももどかしいです!!

お読み下さり、本当にありがとうございました!!

解除
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