花咲く少年達

丸井まー(旧:まー)

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五話

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 冬季休暇前の定期試験まで10日を切った。今日は例の如く、イスマエルの家で、アダルフォの試験対策という名の叩き込み作業をしている。以前に比べたら、アダルフォも少しは魔術以外の勉強もするようになったが、それでも試験前に突貫で叩き込まないと、赤点ギリギリの教科が多い。イスマエルは心を鬼にして、朝からひたすらアダルフォに勉強を教えていた。
 昼食を終えて勉強を再開した後、午後のお茶の時間の前に、アダルフォの集中力が完全に途切れた。アダルフォがローテーブルにガンッと額をぶつけて、べそべそと泣き言を言い始めた。


「イス~。もう無理よ。あたいの頭じゃこれ以上入らないわー」

「なんで女言葉? 大丈夫。大丈夫。少し休憩したら、ルフォならまだまだイケる」

「マージーかー。うぅ……範囲広すぎ……教科多すぎ……今回は赤点になる点数も高めじゃーん。なんでよー」

「来年からは進学組と就職組に分かれるからじゃない? 高等学校に進学するなら、魔術の勉強だけじゃ無理だね。特に基礎教科はしっかりした成績を取っておかないと、来年の教室分け試験も厳しいよ?」

「うぅ……がんばる……高等学校行きたいし……」

「一緒に頑張ろ。ルフォならなんかなるよ」

「自分じゃなくてイスを信じるわー。俺」

「ははっ。んー。少しでもやる気が出るように、またご褒美決める?」

「是非ともぉ!!」

「ははっ。また未成年ご禁制の本にする? それか、いっそセックスしてみる?」

「せっくす」

「この間、店番している時に、男同士のセックスについて書かれてある本を見つけたんだ。ローションは、僕達じゃ売ってもらえないだろうけど、多分水魔術で代用できるし、僕も君も防音結界は張れるから、用意しなきゃいけないのは、汚れたシーツについてお爺ちゃんにどう言い訳するかくらいかな?」

「イスは俺とセックスしてもいいの? ていうか、どっちが挿れる方?」

「僕はどっちでもいいよ。ルフォのご褒美だし。……ぶっちゃけ、興味ないですか。セックス」

「ぶっちゃけ興味ありありですよ。セックス」


 ローテーブルに頬をつけていたアダルフォが、むくりと起き上がり、じっとイスマエルを見つめてきた。イスマエルもなんとなく見つめ返しながら、こてんと首を傾げた。


「僕とセックスするのは嫌かな? それなら別のご褒美を考えるけど」

「全然嫌じゃないっす! 男同士のセックスの仕方の本って、今持ってる?」

「あるよ。しれっと買ったから」

「マジか」

「いやほら。僕達、興味津々なお年頃だから、つい」

「イスは俺に抱かれてもいいの?」

「ルフォならいいかな。ルフォは酷いことしないし、ぶっちゃけ、お尻も興味があります。春画本でお尻弄られるの気持ちよさそうに書かれてたから」

「正直で素晴らしい。えっと、えっと、じゃあ、今度のご褒美は、セックスということで」

「うん。いいよ」

「よっしゃ! 俺! ちょー頑張る!! 気持ちいいことしたい!」

「その意気その意気。じゃあ続きやろうか」

「どんとこいやぁ!!」


 イスマエルは夕食の支度の時間まで、休憩なしで、やる気に燃えるアダルフォに、試験に出そうな事をひたすら叩き込んだ。

 男同士のセックスの仕方の本を見つけたのは、本当に偶然だった。入荷したばかりの本を並べている時に、一般書と成人向けの本がたまたま混ざっており、その成人向けの本が、男同士のセックスの仕方が載っている本だった。イスマエルは好奇心に負けて、アインがトイレに行っている隙にこっそりとその本を買い、自分の部屋のベッドの下に隠した。その日の夜に、じっくりとその本を読んでみて、ふと、アダルフォとならセックスをしてみたいな、と思った。アダルフォになら、別に何をされても構わない。前戯のようなことは既に頻繁にしているし、していないことと言えば、尻を弄るくらいのものだ。アダルフォといつも読んでいる春画本には、主人公の女生徒の尻を弄る描写もある。春画本の中の女生徒は、気持ちよさそうにあんあん喘いでいるから、尻も気持ちがいいものなのだろう。更に、男同士のセックスの仕方の本によれば、男の直腸内には前立腺とかいう、すっごい快感を得られるところがあるらしい。イスマエルは尻に興味津々になった。とはいえ、自分で弄るのは少し怖い。アダルフォが一緒にしてくれるのなら安心できる。
 イスマエルは特に深く考えずに、アダルフォとセックスしようと決めた。

 定期試験が無事に終わり、試験結果が返ってきた。イスマエルはいつも通り主席だったが、アダルフォの成績がすごいことになった。成績優秀者10名までは、職員室の前の掲示板に張り出されるのだが、アダルフォは、まさかの総合10位に入っていた。イスマエル達が暮らす街は、この辺りじゃ一番大きく栄えていて、人口も多い。中等学校も複数あり、イスマエル達は、その中でも一番大きな中等学校に通っている。一学年が大体200人位いて、その中で、上位10位以内に入ってしまった。イスマエルもビックリするどころではなかったが、アダルフォの方が驚いていた。『奇跡が起きたぁぁぁぁ!』と、掲示板の前で思いっきり叫んでいた。ご褒美効果どんだけだと、イスマエルは呆れると同時に、アダルフォは本当に頑張ってたもんなぁと嬉しくなった。

 アダルフォのご褒美は、冬季休暇に入ってから、することになった。時間がゆっくりとれる方がいいからということで、冬季休暇に入ったら、イスマエルの家に連泊することになった。昼間は魔術の勉強や店の手伝いを一緒にして、夜はセックスをする予定である。セックスをすること以外をアインに伝えたら、アインがとても喜んだ。アダルフォが来ると、普段は静かな家が、とても賑やかになる。いつでも元気がよくて、頑張り屋で、意外と細かいことにも気がつくアダルフォを、アインはとても気に入っているので、アダルフォが家に来ると、本当に喜ぶ。
 イスマエルは、ワクワクしながら、冬季休暇が始まるのを待った。





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 早朝。アダルフォは、いそいそと鞄に着替えや教科書などを詰め込み、パンパンになった大きな鞄を持って、家を出た。今日から待ちに待った冬季休暇である。冬季休暇は半月あるので、年越し3日前までは、イスマエルの家で過ごす。年明け3日以降は、イスマエルがアダルフォの家に来てくれる予定である。いつもなら、他の友達とも遊ぶ日をつくるが、今年の冬季休暇は、全部誘いを断った。遊びたい気持ちもないではないが、それ以上に、イスマエルと一緒に勉強したり、古書店の手伝いをしたり、一緒に家事の手伝いとかして過ごしたい。それから、イスマエルとセックスがしたい。好奇心も大いにあるのだが、それよりもイスマエルにもっと深く触れてみたいという思いの方が強い。確信はまだ無いのだけど、多分、アダルフォはイスマエルのことが肉欲込みで好きなのだと思う。つまりは、恋愛感情を持っているということになる。セックスがしたいから好きという訳ではなく、好きだからセックスがしたい。自分でも上手く表現できないが、イスマエルともっと一緒にいたいし、もっと色んなことを話して、もっと深く触れ合いたい。イーダンのことがあったからか、アダルフォは、自分が男を好きになったことを、ごく自然なことだと受け入れた。だって、イスマエルのことが大好きだから。真面目なところも、努力家なところも、意外とお茶目なところも、いつだって凛と背筋を伸ばしている姿も、笑うとほわっと柔らかくなるところも、全部恰好よくて、全部可愛いと思う。格好よくて可愛いだなんて、イスマエルは最強だ。
 アダルフォは家から出ると、粉雪が舞う中、全速力でイスマエルの家に向かって走り出した。

 イスマエルの家の古書店に入ると、イスマエルが緑色のエプロンを着けて、店の中の掃除をしていた。店内には、今は、客はいない。アダルフォは、アダルフォが来たことに気づいて控えめな笑顔で近寄ってきたイスマエルに、むぎゅっと抱きついた。


「おっはよー」

「おはよう。もしかして、外は雪が降ってた?」

「うん。ちょっとね」

「温かい飲み物つくろうか」

「んー。大丈夫。鞄置いて、コートだけ脱いでくる。今日は、午前中は店の手伝いだろ? 一緒にやるー」

「ありがと。エプロンを用意しておくよ」

「うん。あっ! アイン爺ちゃん! おはよー! 今日からお世話になりまっす!」


 店の奥のカウンターから出てきたアインに挨拶をすると、アインが優しく微笑んだ。


「おはよう。アダルフォ君。こちらこそ、よろしくね。本当にいいのかい? お店の手伝いまでしてもらって」

「面白そうだから、やってみてぇっす! あと、面白そうな本を発見したら買いてぇし」

「ふふっ。じゃあ、お願いしようね」

「あっ。母ちゃんが作ったお菓子が大量にあるんで、一緒に食いましょー。母ちゃん、気合入れ過ぎて、家中が甘い匂いで充満するくらい大量生産したんすよ」

「おやおや。それは嬉しいね。ありがたく頂くよ」

「お菓子は台所に置いときまーす。全部日持ちする焼き菓子っす」

「お願いするよ。ふふっ。お茶の時間が楽しみだね」


 アインが本当に嬉しそうに笑って、アダルフォの頭をやんわりと撫でた。アインは笑うと、イスマエルにちょっと似ている。祖父と孫だからだろう。アダルフォは重い鞄を片手に家の方に行き、イスマエルの部屋でコートを脱いでから、手土産にと渡された大量の焼き菓子を台所に置き、店へと戻った。

 午前中はイスマエルと一緒に店の掃除をしたり、本棚に本を並べたりして過ごし、イスマエルと2人でお喋りしながら昼食を作った。料理本を片手に初挑戦した牛肉の煮込みはアインにとても好評で、今度は夕食の時に作ることになった。ワインのお供にしたいらしい。午後からは、洗濯物を取り込んで夕食の支度を始める時間まで、黙々と2人で勉強をした。アダルフォは、将来、薬事魔術師になったイスマエルと一緒に、小さな診療所をやりたいという夢ができた。その為には、まずは高等学校に進学しなければならない。魔術以外の勉強は嫌いだが、自分の夢を叶える為にも、イスマエルとずっと一緒にいる為にも、なんとか頑張らなければいけない。アダルフォは、時折、どうしても分からないところをイスマエルに聞きながら、勉強に励んだ。

 夕方になると、暖炉がある居間に干していた洗濯物を取り込んで畳み、イスマエルと一緒に夕食を作り始めた。なんだかいつもの日常って感じがして、本当に今夜セックスをするという感じがしない。イスマエルも普段通りだし、特別なことをする筈だけど、特別って感じがしない。なんだか、日常の延長線上で、ごく自然にそうするのが当たり前みたいに感じてしまう。これはアダルフォがイスマエルのことが好きだからなのだろうか。恋愛感情の『好き』ってもっと、ドキドキして、ちょっとしたことでもそわそわして、落ち着かないものだと思っていた。イスマエルといると、ドキッとすることは確かに何度かあったが、それ以上に、気分が落ち着くことの方がずっと多い。イスマエルの側は本当に居心地がよくて、いつも一緒にいたいくらいである。
 アダルフォはイスマエルとお喋りしながら夕食を作り終え、店から帰ってきたアインを笑顔で出迎えた。

 順番に風呂に入ってから、アダルフォはイスマエルと一緒に部屋に引き上げた。いつもだったら勉強をしたり、一緒に本を読んだりするが、今夜するのはセックスである。アダルフォは、イスマエルが風呂から出てくるのを待つ間に、いよいよセックスをするんだなと、なんだか急にそわそわし始めた。ドキドキして、落ち着かない。セックスなんて、春画本の世界の中のものだ。イスマエルにもっと深く触れたら、自分もイスマエルもどうなってしまうのだろう。セックスは大人にならないとしちゃいけないというイメージが強い。品のない下ネタで友達と盛り上がることはあっても、実際にセックスをしたことがあるという子は周りにいない。大人の階段を上っちゃうのかと思うと、なんだか期待で胸がうずうずする。

 アダルフォがベッドの上で小さくお山座りして待っていると、イスマエルが部屋に入ってきた。濡れた黒髪を拭きながら部屋に入ってきたイスマエルの寝間着姿に、思わずドキッと心臓が跳ねた。昼間はなんともなかったのに、急速に緊張が高まっていく。
 ベッドの壁際で小さくなっているアダルフォを見て、イスマエルが小さく笑った。


「もしかして、緊張してるの?」

「おうよ。めちゃくちゃしてるわ」

「ははっ。僕も」

「えーー! うっそだぁ! すげぇ普段通りじゃん」

「そうでもないよ。朝からずっと緊張してた」

「マジか」

「マジ」


 クスクスと笑いながら、イスマエルがベッドに近づいてきて、ベッドの下から紙袋を取り出した。ベッドのシーツの上に紙袋を置いて、イスマエルが中から薄めの本を取り出した。そろっと動いて、シーツの上に置かれた本の表紙を覗き込めば、筋肉ムキムキの男同士が裸体で絡み合っている絵が描かれていた。


「おおぅ……筋肉もりもり……絵面がすげぇな」

「すごいよねー。とりあえず一緒に読もうか」

「うん。あ、先に服は脱いどくか。裸で布団に包まった方があったけぇし」

「そうだね」


 イスマエルが躊躇なく寝間着のシャツのボタンを外し始めたので、アダルフォも寝間着にしている厚めのシャツのボタンを外した。下に着ていた肌着も脱いで、ズボンもパンツと一緒に脱ぎ捨てる。服を脱いだ途端、部屋の冷気に身体が包まれて、一気に身体が冷えていく感覚がする。


「寒いっ! イス! 早く! 早く布団に入ろう!!」

「うん」


 アダルフォはベッドに上がってきたイスマエルと一緒に、布団に潜り込んだ。イスマエルのすべすべした肌が触れると、温かくて、なんだかほっとする。そういえば、全裸でくっつくのは初めてだ。ドキドキもするが、それよりも不思議と安心感の方が大きい。
 アダルフォが布団の中で、むぎゅーっとイスマエルを抱きしめると、イスマエルがクスクスと楽しそうに笑った。


「ルフォ。先に部屋に防音結界を張ろう」

「おう。俺がやってみていい? 微妙だったら補強してよ」

「いいよ」


 アダルフォは殆ど頭まで潜り込んでいた布団から顔を出し、ふーっと息を大きく吐いて、集中して防音結界魔術を発動させた。自分では結構上手くいったかと思ったが、よくよく結界を視てみれば、微妙に小さな穴のようなところが何か所もあった。アダルフォはガクッと項垂れ、情けない声でイスマエルを呼んだ。


「イス~。補強お願いしまっす。上手くいったと思ったんだけどなー」

「前より上手くなってるよ。ちょっとだけ補強するね」

「おねがーい」


 イスマエルが防音結界魔術を発動させた。イスマエルの魔術はキレイだ。防音結界が上書きされて、より強固なものになったのを確認すると、アダルフォは枕元に男同士のセックスの仕方が書いてある本を置いた。


「イスはもう読んだ?」

「一通りは目を通したよ」

「うっし! じゃあ、まずはお勉強だ!」

「うん」


 アダルフォはドキドキしながら、イスマエルとぴったりくっついて、真剣に本を読み始めた。
 小半時程で読み終わった本を閉じて、アダルフォはなんとなくイスマエルに抱きついた。


「なんか、思ってたより生々しい」

「生々しいことをする為の本だからかなぁ」

「ですよねー。……イス」

「ん?」

「とりあえず、ちゅーしたいです」

「いいよ」


 アダルフォはもぞもぞと布団の中で身動ぎして、イスマエルと向かい合い、イスマエルの背中に腕を回して、足を絡めて、ぴったりくっついた。イスマエルの柔らかい身体に、なんだかドキドキむらむらしてくる。イスマエルが『ちょっと待って』と言って、眼鏡を外して、ベッドのヘッドボードの上に置いた。イスマエルが眼鏡を外すと、ちょっとだけいつもより幼く見える。いつもが大人びた雰囲気だからかもしれない。
 眼鏡を外したイスマエルが、アダルフォに顔を寄せ、すりっと鼻先をアダルフォの鼻先に擦りつけた。間近に見えるイスマエルの青い瞳を縁どる睫は、意外と長い。アダルフォは、じっとアダルフォを見つめているイスマエルの青い瞳を見つめながら、イスマエルの唇に、静かに触れるだけのキスをした。ふにっとした柔らかい感触に、ドキッと胸が高鳴る。心臓がバクバク激しく動き始めて、下腹部に熱が溜まっていく。
 アダルフォは照れくさいのを誤魔化すように、へらっと笑った。


「ちゅーしちゃった」

「ルフォ。もっと」

「うん」


 イスマエルが目尻を赤く染めて、唇を触れ合わせたまま囁いた。イスマエルの熱い吐息が唇にかかり、ふわっとイスマエル愛用の歯磨き粉の薄荷の爽やかな匂いがした。益々、心臓がドキドキしてくる。
 アダルフォはイスマエルと見つめ合いながら、何度も唇をくっつけ、ちゅくっと優しくイスマエルの下唇を吸った。イスマエルも、真似するように、アダルフォの下唇を吸ってくれる。なんだか楽しくなってきた。イスマエルもそうなのか、青い瞳が笑っている。ちゅく、ちゅくと、戯れ合うように何度も唇を吸い合って、2人揃って、はぁっと熱い吐息をもらした。

 おずおずと舌を伸ばして、つーっとイスマエルの下唇を舌でなぞれば、イスマエルも舌を口から出して、アダルフォの舌にちょんっと触れさせた。ぬるりと舌を擦り合せるように舌を絡めると、なんだかそれだけでじんわり気持ちがいい。お互いに舌を伸ばして、夢中でぬるぬると絡め合う。ぴったりくっつけている下腹部に、お互いに勃起して熱く硬くなっているペニスが当たっている。アダルフォはぬるぬると舌を擦り合せながら、イスマエルの腰を抱いて、より下腹部を密着させた。お互いの下腹部と勃起したペニスが擦れ合う。イスマエルもアダルフォの背中に腕を回し、背骨に添うように、腰から上へと背中をやんわりと撫でてきた。ぞわぞわっと微かな快感が背を駆け抜ける。アダルフォは腰をくねらせてイスマエルの下腹部やペニスに自分のペニスを押しつけながら、イスマエルの口内に舌を潜り込ませた。春画本に書いてあったように、歯並びがいい歯列を舌先でなぞり、歯の裏側を擽って、上顎をねっとりと舐め回す。間近にあるイスマエルの青い瞳が、気持よさそうにとろんとしてきた。イスマエルの唾液を啜って、イスマエルの熱い口内を舌で探る。上顎をねろねろ舐め回すと、イスマエルの腰が微かにビクビクッと震えた。
 イスマエルが、舌を絡めながら、今度はアダルフォの口内に舌を入れてきた。アダルフォの真似をするように、ぎこちなくイスマエルの舌が口内を動き回る。上顎をねっとりと舐められると、確かに気持ちがいい。歯の裏側を舌先でなぞられるのも好きだ。
 アダルフォは完全に息が上がるまで、夢中でイスマエルといやらしいキスをした。


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