教授と助手の楽しい性活

丸井まー(旧:まー)

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10:尻軽野郎の猛省

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 アベルは、頭の痛みで目が覚めた。ガンガン痛む頭を手で押さえて、のろのろと起き上がると、ズキンッと腰に久しぶりに感じる痛みが走った。へなへなと再び寝転がり、おぉぉぉぉ……と意味のない声を上げていると、マチューに声をかけられた。
 のろのろと起き上がって、声がした方を見れば、マチューは全裸でシーツの上に胡座をかいていた。思わず、マチューの股間を見てしまう。マチューのペニスは、萎えていても太くて長い。思わず、ほぁぁ……と朝からテンションが上がってしまう。朝からいいものが見れた。今日はいい1日になりそうだ。

 アベルが暢気にマチューの股間をガン見していると、ふと、昨夜の事を思い出した。アベルは、自分の顔から、さぁーっと血の気が引くのを感じた。嫌な汗がぶわっと背中を流れ始める。
 アベルは、しゅぱっとマチューと向かい合うように正座をして、そのままシーツに額がつく程、深々と頭を下げた。


「この度は誠に申し訳ありませんでしたっ!!」

「あ、ちゃんと記憶があるんですね。あれだけ酔ってたから、てっきり忘れてるかもなぁと」

「う、うわーーん! ごめんよー! マチューくーーん! 助手やめないでぇぇぇぇ!! 口をきいてくれないのも嫌だぁぁぁぁ!!」

「見事に食われました」

「ぐぼはっ。……うっ、うっ、酒に逃げた昨日の僕を殴り殺したい……」

「えっ!? ちょっ、泣かないでくださいよ!!」

「うぇっ、うぇっ、うーー。君、君にだけは手を出さないって決めてたのにぃぃ……」

「お、落ち着いて! とりあえず落ち着いてください!」

「うぇぇぇぇ……ごめんよぉ! ほんとにごめんよぉ! 最低最悪の駄目な大人でごめんなさいぃぃぃぃ!!」

「ガチ泣き!? ちょっ、マジですか!? おおおお落ち着いて!!」

「わーーーーーーん!! 僕なんか腹上死しちゃえばいいんだーー!!」

「そこで腹上死ってあたりが、教授ですよね。って、ほんとに落ち着いてください。うっかり流された僕も悪いんで」

「マチュー君は何も悪くないよぉぉぉぉ!! 駄目人間のクズな僕が全部悪いんだぁぁぁぁ!!」


 アベルは、本気で泣いていた。目の前でマチューがあわあわしているが、後悔し過ぎて、いっそ死にたいレベルである。マチューにだけは、手を出すつもりは無かった。愛を育んでからセックスをしたいというマチューの意思を踏み躙ってしまった。マチューを傷つけてしまった。後悔なんて言葉じゃ済まないくらい、酷い後悔で胸の奥と胃がギリギリと痛む。
 泣いて謝って済む話ではない。アベルは、ガチ泣きしながら、なんとか償えないか、必死で考えた。


「うっ、うっ、僕、金玉とります」

「なんで!? なんでそんな話になるんですか!!」

「僕の性欲のせいで君を傷つけたからだよぉ!! もう金玉とるぅぅぅぅ!! だから助手はやめないでぇぇぇぇ!!」

「やめませんっ! やめませんから! 金玉はとらないでください!!」

「じゃあ、気が済むまで殴りまくってください!!」

「殴りません!! ちょっと本気で落ち着きましょう。はい。お手手出してー」

「うぁい」

「はい。深呼吸ー。吸ってー。吐いてー」

「すー、はー、すー、はー」

「はい。その調子です。続けてください」

「すー、はー、すー、はー」

「とりあえず鼻水拭きましょうね」

「うん」

「頭は痛みますか?」

「めちゃくちゃ痛い」

「他に痛いところとかは?」

「腰痛い」

「二日酔いの薬と湿布が薬箱にありましたよね。用意するので、とりあえずお風呂に入ってきてください。朝ご飯は食べられそうですか?」

「……胃が痛くて無理」

「じゃあ、温かいミルクだけ用意しますね。教授。お話し合いは、今夜します。今日も普通に仕事なので、一先ず、頭を切り替えてください」

「はい」


 アベルは、マチューにティッシュで、涙や鼻水垂れ流しの鼻周りを拭かれた後、マチューに手を握られたまま、ベッドから下りた。マチューが着替えを衣装箪笥から出してくれたので、受け取って、よたよたと歩いて、階下の風呂場へと向かう。

 熱いシャワーを浴びながら、アベルは、ずーーーーんっと沈んでいた。やらかしてしまった。後悔と罪悪感で溺れ死にそうである。本当の本当に、マチューにだけは手を出す気はなかった。酒に逃げた昨日の自分を殴り殺したい。
 アベルは、涙が溢れる顔をバシャバシャと洗い、とりあえず頭を切り替えようとした。
 今日も普通に講義がある。私生活の大失態で落ち込んで、学生達に中途半端な講義をする訳にはいかない。マチューに、正式に謝罪をして、今後、償っていく方法を考えるのは、とりあえず仕事をきっちりやった後だ。
 アベルは、パシーンッと自分の頬を強く叩くと、手鼻をかみ、顔を洗い直してから、シャワーを止めた。

 アベルが身支度を整えて居間に行くと、ほんのり湯気が立っているマグカップと、いつもの二日酔いの薬、湿布、メモ書きが、テーブルの上に置いてあった。メモ書きを読めば、『一度自宅に帰らないといけないので、先に出ます。二日酔いの薬は必ず飲んでください。湿布を自力で貼れない場合は、研究室に持ってきてください。講義の前に、研究室で貼ります』と書いてあった。
 傷つけてしまったのに、マチューはどこまでも優しくて、気遣いができる。不味い二日酔いの薬を一気飲みした後、マグカップに手を伸ばして、一口飲めば、ほんのり蜂蜜の香りと共に、柔らかい甘さが口の中に広がった。蜂蜜入りの温かいミルクを飲むと、なんだか、ほっとする。

 アベルは、またじんわり涙が滲みそうになるのをぐっと堪え、マチューが用意してくれた湿布を腰に貼り、出勤の準備をして、家を出た。
 本当に、どうやったら、昨夜の過ちを償えるのだろうか。大事な大事な助手のマチューを、よりにもよって自分が傷つけてしまった。
 マチューは嫌だった筈だ。アベルみたいな汚い尻軽野郎に童貞を食われるなんて。マチューを傷つけた自分自身が許せない。本当に金玉をとって、性欲を無くしてしまおうか。アナルの快感を覚えきってしまっているので、本当に金玉をとるだけで性欲が無くなるのかは疑問に思うところだが、こんなに自分自身が許せなくて、吐きそうな程嫌いだと思うのは、生まれて初めてだ。
 どんなに『尻軽野郎!』と罵られても、アベルは気にしたことが無かった。恋人がいても、別の誰かとセックスをするのに罪悪感を抱いた事は無いし、それを悪い事だとも思っていなかった。が、マチューに手を出してしまったのは、完全に駄目な事だし、許されない事だ。マチューは、本当に将来有望な優秀な助手で、一人前の研究者になるまでは、手元で大事に育ててやりたかった。重い後悔と罪悪感で、胃がギリギリする。
 アベルは、何度も溜め息を吐きながら、研究室に向かった。

 研究室に入ると、マチューが既に来ていた。いつも通りの顔をしたマチューが、入り口で固まっているアベルに声をかけてきた。


「おはようございます。腰に湿布は貼れました?」

「え、あ、うん。まぁ、なんとか?」

「それなら、よかったです。今日の講義の資料は出してあります。午後から教授会議があるので、そっちの資料も机の上に置いてあります」

「……ありがとう。マチュー君」

「いえ。教授」

「は、はい……」

「お話し合いは夜です。今は、仕事に専念されてください」

「うん」


 アベルは、一度大きく深呼吸すると、自分の机の所へ行き、マチューが用意してくれていた講義用の資料を持って、研究室を出た。
 とにかく、今は仕事に専念しなければ。
 アベルは、頭を切り替えて、講義を行う教室へと入った。

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