一年間ハッスルしないと死ぬ魔法をかけられたんだが、相手は心底嫌いな奴ぅぅ!!

丸井まー(旧:まー)

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13:癒やされるー

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 ライアンは目覚めると、ふと、いいことを思いついた。ベッドのヘッドボードに置いてある時計を見れば、まだ午前のお茶の時間くらいである。

 漸く、地獄の一週間が終わり、今日は疲労回復の為の休暇2日目だ。昨日は、午前中はずっと寝て過ごし、昼食後も少し昼寝をして、気合で勃起させて必要最低限のセックスをしたら、夕食を食べて、早々と寝た。

 ライアンは勿論、レックスも、相当疲労が溜まっている。こうなったら、癒やされに行くしかない。具体的に言うと、街の公衆浴場に行く。街の公衆浴場は、かなりデカい風呂場があり、有料でマッサージをしてくれるサービスもある。疲れきった身体を広い風呂場でゆっくり温め、マッサージで癒やされたい。公衆浴場には、安くて美味しい食堂もある。

 ライアンは、隣で寝ているレックスをベッドから蹴り落とした。レックスが疲労の色が濃い顔でのろのろと立ち上がり、メンチを切ってきた。


「朝っぱらから何しやがんだごらぁ。殴り合う余裕がねぇ時にちょっかい出すな。チンカス野郎」

「おい。今すぐ公衆浴場に行くぞ」

「俺の話聞いてた?」

「てめぇの話なんぞ心底どうでもいい。公衆浴場に行って、デカい風呂に入って、マッサージをしてもらう。ついでに、公衆浴場の食堂で美味いもんを食う」

「何それ最高じゃねぇか」

「すぐに準備しろ。俺はとにかく癒やされたい」

「てめぇの発案ということにイラッとするが、同感だ。切実に癒やされたい。もうマジで心底疲れきってんだよ……」

「癒やされに行くぞ」

「行く」


 ライアンは疲労で重怠い身体で、いそいそと公衆浴場に行く準備をした。朝食は、昼食も兼ねて公衆浴場の食堂で食べればいいだろう。食堂では酒も売っているので、マッサージをしてもらった後に、久しぶりにのんびり酒を飲んでもいい。
 ライアンは、鞄に着替え等を詰め込むと、心なしかゆらゆらしているレックスと共に、ふらふらとした足取りで公衆浴場へ向かった。

 今は平日の午前中だからか、公衆浴場の風呂場はほぼ貸し切り状態だった。身体と頭を洗った後、ライアンは、のんびりと少し熱めのお湯を堪能していた。温かいお湯で、じわじわと疲労が溜まった身体が解れていく。あーっ、と意味のない声を上げながら、ライアンは肩までしっかりお湯に浸かって、浴槽の縁に頭を預けた。何気なくチラッと見れば、少し離れたところにいるレックスも、似たような体勢でお湯に浸かっていた。


「生き返るー。ここは天国か」

「心底うぜぇが同感」

「おい。下手くそ野郎。いっそ家でもお湯を張るか」

「お子ちゃまチン毛野郎。入浴剤を買って帰るぞ。疲れに効くやつ」

「てめぇにしてはいい案だ。将来ハゲ野郎」

「身体の解れ具合がシャワーと段違いでやべぇ」

「そーれーなー。お湯に浸かるって最高過ぎる。もう適当にシャワーを浴びるだけじゃ満足できねぇ」

「そろそろ上がって、マッサージしてもらうか」

「俺、全身リラックスコース。ちょっと高ぇけど」

「俺もそれだ。真似すんな」

「てめぇが真似すんな。この全身の疲れをマッサージで優しく解して癒やされてぇんだよ」

「1年……長ぇなぁ……定期的に此処に通わねぇと、マジで保たねぇわ」

「腹立つことに同感。ロリババアめ。逆剥けできろ」

「ロリババアの尿切れが悪くなりますように」


 ライアンは、ロリババアの尿切れが悪くなることを祈りながら、デカい浴槽から出た。脱衣場でほこほこの身体を拭いて服を着たら、マッサージコーナーへと向かう。

 マッサージコーナーも空いていたので、待たずにマッサージを受けられることになった。専用のベッドに寝転がり、首や肩からマッサージを始めてもらう。


「お客さん、凝ってますねー」

「あー。まぁ。全身ゴリゴリやっちゃってください」

「気合入れてゴリッゴリやりますね!」

「お願いしゃーっす」


 マッサージをしてくれる初老の男が、本当に全身をゴリゴリ解しまくってくれた。ライアンは、気持ちよ過ぎて、すぐに寝落ちた。

 初老の男に起こされて、ベッドから下りて床に立つと、身体が随分と軽くなっていた。朝はあんなに身体が重かったのに、本当にビックリする程身体が軽い。
 ライアンは満面の笑みを浮かべて、少し多めに代金を支払った。次に来た時にも是非ともよろしく頼むと、初老の男にお願いをしておいた。

 ライアンが、軽くなった身体でご機嫌にマッサージコーナーから出ると、レックスもすぐに出てきた。レックスの疲労の色が濃かった顔が、随分とスッキリしている。レックスが機嫌よさげに、ライアンに声をかけてきた。


「マッサージ最高だな! おい!」

「まぁな。腹減った」

「俺も腹減った。久しぶりに酒も飲みてぇ」

「食堂行くぞ。昼時を少し過ぎてるから、そろそろ空き出す頃だろ」

「うぃーっす」


 身体が軽くなって、なんだか暫く落ち気味だった気分も軽くなった気がする。レックスと罵り合う気すら起きないくらいだ。ライアンはご機嫌に、食堂へと向かった。

 広めの食堂は、半分くらい席が埋まっていた。ライアンは、レックスと二人がけの席に座ると、置いていたメニュー表を開いた。


「とりあえず、発泡酒と揚げ鶏」

「俺も発泡酒。イカ焼き食いてぇ」

「奮発して特上ステーキも頼む」

「やべぇな。俺も奮発しよーっと」

「真似すんな」

「うるせぇ。胃袋が特上のお肉を待ってんだよ」


 ライアンは、テーブルの下で地味にレックスと蹴り合いながら、笑顔で近寄ってきた店員に注文を伝えた。

 先に運ばれてきた冷たい発泡酒を一気に飲み干す。ぶっはぁっと大きく息を吐いてから、ライアンは幸せな溜め息を吐いた。熱めの風呂で程よく汗をかいてマッサージで解れた身体に、冷たい発泡酒が染み渡る。こんなに幸せでいいのだろうか。なんだか、自分の中の幸せ基準値がだだ下がりしている気がする。ここ暫く、ずっと地獄のような日々を過ごしていたからだろうか。
 向かい側でレックスも発泡酒を一気飲みして、あ゛ーっと、おっさんみたいな声を上げた。


「昼間酒最高。すんませーん。発泡酒お代わりー」

「俺もお代わりでー」

「はーい! ありがとうございまーす!」


 店員の元気で明るい笑顔が、見ていて大変気持ちがいい。実に素晴らしい接客である。揚げたての揚げ鶏と共に、二杯目の発泡酒を運んできてくれた。
 熱々の揚げ鶏は、齧りつけば、熱々の肉汁が口の中に広がり、ふわっと食欲をそそるニンニクの香りが鼻に抜ける。味付けは塩コショウだけのようで、シンプルに美味い。はふはふと肉汁溢れる鶏肉を咀嚼しながら、きゅーっと冷たい発泡酒を飲み込めば、口の中が幸せいっぱいになる。ライアンは、後片付けがちょっと面倒なので、基本的に揚げ物はしない。実家にいた頃は、父親と弟が好きだったから揚げ物もしていたが、全寮制の軍学校に入学して以降揚げ物をしていないので、多分、今は揚げ物のコツをすっかり忘れていると思う。

 向かい側では、ガツガツとレックスが美味しそうに揚げ鶏やイカ焼きを食べている。ライアンも負けじと、揚げ鶏とイカ焼きを食べた。イカ焼きも、バターの香りがよくて、とてもシンプルな味付けなのが逆にいい。噛めば噛む程、イカの旨味が口の中に広がっていく。発泡酒とも相性抜群である。

 揚げ鶏とイカ焼きを食べ終える頃に、特上ステーキが運ばれてきた。分厚くデカい牛肉は、程よい焼き加減で、特上というだけあって、肉が柔らかく、バランスよくついた脂が甘くジューシーで、最高に美味い。食堂の店主オリジナルだという玉ねぎベースのソースも素晴らしく肉に合っていて、本当にめちゃくちゃ美味い。
 ライアンは、レックスと共に、無言でガツガツと特上ステーキを食べきった。本当に美味いものを食っている時は、不思議と会話が無くなるものである。ライアンは、お口の中と胃袋が幸せ過ぎて、随分と久しぶりに満たされた気分になった。

 満腹になると、今日は荷物持ち(レックス)がいるから、市場へ行き、多めに食材を買った。途中にある入浴剤等も扱っている薬屋で、疲労回復に効くという入浴剤も買った。

 ライアンは、久々に軽い身体で、ご機嫌に家に帰った。
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