大きな薬師

丸井まー(旧:まー)

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昼食はサンガレア領の特産品である野菜をふんだんに使った料理が人気なお店で食べた。

人数が多いため、いくつかのテーブルに分かれて座り、賑やかな雰囲気で食事をとった。ミーシャは、リー達火の国一行と双子達と同じテーブルだった。

休暇中だからと、酒好きの将軍達も軽い酒を飲んでいた。
聞くに、他の国では酒好きの母を筆頭に神子様方は試飲も兼ねて昼間から酒を飲んでいたらしいが、将軍達は当然ながら、飲んでいなかったらしい。
リーはギルベルト将軍達と同じものが飲めると喜んでいた。


「ミーシャちゃんはお酒は飲まないの?」


キンキンに冷えた麦酒を飲みながら、リーが聞いてきた。

カボチャとほうれん草のキッシュをぱくついていたミーシャは口の中のものを飲み込んでから答えた。


「お酒は飲めますけど、お酒より甘いものの方が好きなんです。だからお酒は滅多に飲みませんね」

「あ、そうなんだ」

「甘い果実酒とかは比較的好きなんですけど、麦酒みたいに苦いのとか、辛くてキツいのはあんまり得意じゃないです」

「私も甘いのが好きー」

「俺もー」

「ははっ。俺も麦酒は好きだけど、辛いのはあんまり得意じゃないんだ。甘いのがいい」

「気が合いますねぇ」

「ギルベルトは強くて辛いのも好きだよね」

「火の国の酒はそういうものが多いので」

「俺、酒の好みに関してはギルベルトやジンとは合わない気がするよ」

「ジン?」

「あ、火の王の名前なんだ。慣例で形式的に結婚したんだけど、とりあえず友達になってみようかなって思ってさ。マーサさん達みたいに陛下って呼ばないで、名前で呼ぶようにしてるんだ」

「あぁ、なるほど」

「でも酒の好みはマーサさんの方が二人に合うみたい」

「母様、辛い酒好きだものね」

「そうなんだよ。だから俺マーサさんとも同じのあまり飲めないんだ」

「リー様だけじゃなくて、フェリ様もマルク様も母様好みのお酒はそんなに好きじゃないから、二人とは一緒だね」

「せいぜい麦酒くらいじゃないの?一緒に飲むの」

「あとはワインかしらね」

「ワインといえば、風の国ですごい美味しいのを飲ませてもらったんだ。風の国ってワインが有名なんだってね」

「そうなんだ。だからフェリ様がちょいちょいお土産で持ってきてくれるのか」

「甘くてすっごい美味しかったんだ」

「あ、ここのお店、ワインはないけど確か果実酒ならありますよ。頼んでみます?」

「え、本当?ならお願いしようかな。ギルベルトはどうする?」

「いただきます」

「イーとエーは?」

「結構です!」

「身長が伸びる間はお酒も煙草もしないって決めてるから!」

「あらそう?じゃあ三人分頼みましょうね」


三人分の果実酒を頼んだ後は、それを飲みながら様々な話で盛り上がった。ギルベルト将軍は寡黙なのか、時折相づちをうつだけだったが、その分双子とリーが楽しそうにお喋りしていた。

皆お腹いっぱいになって店を出ると、街中観光組と街の子供達と一緒にサッカーやる組に分かれることになった。

学校の校庭で今からサッカーをやるという子供と道端で遭遇して釣られちゃった子らがいたからだ。

サッカー大好きのリーとフェリ、ミーシャと運動が苦手なチーファ、まだ幼い下二人以外の子供達全員と土の陛下親子はサッカーをするために、学校の校庭へ走って行った。
監督という名目でナーガと祖父二人が後ろからゆっくり歩いてついて行った。

結局、街中観光組に残ったのは、マーサ・リチャード夫婦とマルク、アルジャーノ、各将軍四人、叔父で魔術師長のフェンリル、神官長のムティファ、ミーシャ、チーファ、ターニャ、サーシャの14人になった。


「最近、運動らしい運動できてなかったから、皆遊びたかったのね」


サーシャを抱っこしているマーサが呆れたように笑った。


「身体動かすの好きなやつの方が多いからな」

「アルはサッカーしに行かなくていいのか?」

「行きたい所だけど、兄上からお使い頼まれてる。そういうマルクはいいのか?」

「俺も買いたいものがあるから今日はいい」

「母様。街中観光ってどこ行くの?」

「今日は、とりあえず本屋とサンガリア商会、あとは将軍達の寄ってみたい所かな?」

「商会は兎も角、ここでも本屋に行くの?うちの領地で売ってる本は、全部うちにも買い取り納品してるでしょ?」

「マーサが買うんじゃなくて、俺らが買うんだよ」

「風の国に行った時に初めて知ったんだが、兄さんが挿し絵を描いてる絵本があるんだ。それを買う」

「兄上達に頼まれたんだよ。出版されてるもの全部、保存用、読書用、布教用に三冊ずつ買ってこいって。あと二番目の兄上から土の国の魔術書買ってきてくれって。魔術師なんだ」

「へぇ。知らなかった。フェリ様、絵を描くんだ」

「描いてるのは知らなくても、描いたものなら、うちの子達皆読んでるわよ。全部うちにあるもの」

「マジでか。母様、教えてくれたらいいのに」

「本人が恥ずかしがって、絶対言うな!って言うんだもの。まぁ、今回ペロッと言っちゃったけど 」

「言っちゃったの?」

「言っちゃったの。ふふっ」


マーサが悪戯っぽく笑った。
マーサがニコニコしているのにつられてか、抱っこされてるサーシャも、フフッー、とご機嫌である。
立ち話していてもしょうがないので、本屋を目指して歩くことにした。

といっても、領地で一番大きい本屋は食事をとった店から歩いて5分の距離なので、すぐに着いた。

この本屋は三階建てで、一階は一般書、二階は専門書、三階は怪書や奇書と呼ばれている書物が置かれていた。
専門書は兎も角、怪書や奇書なんて誰が買うのか。わざわざ専門スペースを作る意義が全く見いだせないが、ここは母のよく来る店である。多分なんとなく面白いから(マーサが)とかいう理由なのだろう。

それぞれ思い思いに自分の本を求めて、店内にバラけた。
ミーシャも折角来たので、二階の専門書コーナーで、良さそうな本を探すことにした。




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