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第四章 王宮で
9.狩猟会
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私はお庭がすっかり気に入り、寒くて外に出られなくなるまではなるべく行こうと思って、天気の良い日は図書室から本を持ち出し、お茶の用意をさせて侍女やクラウスと一緒にお庭に行っていた。
ジェルヴェもちょくちょく来ては、何くれとなく気を遣ってくれて、思い通りのお庭になりつつあった。
春が楽しみだわ。
私は大好きなダリオルやゴーフルといったお菓子をつまみながら、自然の光の中で本を読んだり、宮廷のヴァイオリニストに優しい音楽を奏でてもらったり時にはジェルヴェと踊ったり、侍女たちと今ルーマデュカで流行しているお化粧やドレスについて語ったり、クラウスやガレアッツォ翁と様々な話をしたり、司厨長と野菜や料理について語らった。
あー私、この国にお嫁に来て本当に良かったわあ~♡
こんなに素晴らしい放置生活が待っているなんて思いもよらなかった。
この生活が一生続くといいなあ。本気でそう思うわ。
アンヌ=マリー、末永く王太子と仲良くね。
ま、他の女性でも私は一向に構わないけど。
秋も深まって、晴れた日の日中しか外へ出られなくなってきたころ。
その日も私は支度をして、お庭に行っていた。
お城の中が朝から騒然としていて、何かの行事があるようだとは思っていたけれど、私にはまったく関係のない事で(実際、誰も何も言ってこなかった)気にも留めていなかった。
「今日は狩猟会の日なので、朝から騒がしかったですね」
クラウスがえっちらおっちら荷物を抱えて歩きながら言う。
「ああ、そういえばジェルヴェがそんなこと言ってたような、言ってなかったような」
私も重い本を抱えて、クラウスに歩調を合わせてゆっくり歩く。
「姫様は、ジェルヴェ殿下のことをどう思っていらっしゃるのですか」
クラウスに訊かれ、私は少し赤くなってしまう。
「どうって…
この国で一番親しい友人、というか…
私の庇護者的な側面もあると思うけど」
「殿下はそうは思っておられない様子ですが」
私は足を止めて、クラウスに向き直る。
「何よ、何が言いたいの?」
「いえ…」
クラウスは足を止めずにお庭を目指して歩いていく。
私は追い抜かれてしまって慌てて後を追う。
「クラウス!なんなのよ!」
私が声を荒らげると、漸くクラウスは私を振り向いた。
「あの途方もない行動力をお持ちでバイタリティ旺盛な殿下が、このまま曖昧な関係を続けて満足なさるとも思えないのですよ」
「どういうこと?」
訊いてもクラウスはそれ以上何も言わず、黙って歩いていく。
私はなんだか不安になりながら、クラウスの後をついていった。
「姫様!今日はご機嫌麗しく」
仕事熱心な庭師のシモンが帽子を取って挨拶してくれる。
「こんにちは、シモン」
私は持っていた本をグレーテルに預けシモンに近づいて、仕事の様子を眺める。
綺麗な花壇だったところは、レンガや石が取り払われてむき出しの土になっており、今はそれが美しい畝になっている。
「今日は豌豆の作付けを進めようと思っておりますだ」
「そう、楽しみだわ」
へえへえと興味深そうに聞いてくれるシモンと、笑いながら豌豆の料理の話などをしていると、グレーテルとクラウスの「姫様!」という焦ったような声が聞こえて、私は何事かと顔を上げる。
「これは…どうしたことだ?」
驚愕の表情で、お庭の入り口に立っているのは…
王太子!
ジェルヴェもちょくちょく来ては、何くれとなく気を遣ってくれて、思い通りのお庭になりつつあった。
春が楽しみだわ。
私は大好きなダリオルやゴーフルといったお菓子をつまみながら、自然の光の中で本を読んだり、宮廷のヴァイオリニストに優しい音楽を奏でてもらったり時にはジェルヴェと踊ったり、侍女たちと今ルーマデュカで流行しているお化粧やドレスについて語ったり、クラウスやガレアッツォ翁と様々な話をしたり、司厨長と野菜や料理について語らった。
あー私、この国にお嫁に来て本当に良かったわあ~♡
こんなに素晴らしい放置生活が待っているなんて思いもよらなかった。
この生活が一生続くといいなあ。本気でそう思うわ。
アンヌ=マリー、末永く王太子と仲良くね。
ま、他の女性でも私は一向に構わないけど。
秋も深まって、晴れた日の日中しか外へ出られなくなってきたころ。
その日も私は支度をして、お庭に行っていた。
お城の中が朝から騒然としていて、何かの行事があるようだとは思っていたけれど、私にはまったく関係のない事で(実際、誰も何も言ってこなかった)気にも留めていなかった。
「今日は狩猟会の日なので、朝から騒がしかったですね」
クラウスがえっちらおっちら荷物を抱えて歩きながら言う。
「ああ、そういえばジェルヴェがそんなこと言ってたような、言ってなかったような」
私も重い本を抱えて、クラウスに歩調を合わせてゆっくり歩く。
「姫様は、ジェルヴェ殿下のことをどう思っていらっしゃるのですか」
クラウスに訊かれ、私は少し赤くなってしまう。
「どうって…
この国で一番親しい友人、というか…
私の庇護者的な側面もあると思うけど」
「殿下はそうは思っておられない様子ですが」
私は足を止めて、クラウスに向き直る。
「何よ、何が言いたいの?」
「いえ…」
クラウスは足を止めずにお庭を目指して歩いていく。
私は追い抜かれてしまって慌てて後を追う。
「クラウス!なんなのよ!」
私が声を荒らげると、漸くクラウスは私を振り向いた。
「あの途方もない行動力をお持ちでバイタリティ旺盛な殿下が、このまま曖昧な関係を続けて満足なさるとも思えないのですよ」
「どういうこと?」
訊いてもクラウスはそれ以上何も言わず、黙って歩いていく。
私はなんだか不安になりながら、クラウスの後をついていった。
「姫様!今日はご機嫌麗しく」
仕事熱心な庭師のシモンが帽子を取って挨拶してくれる。
「こんにちは、シモン」
私は持っていた本をグレーテルに預けシモンに近づいて、仕事の様子を眺める。
綺麗な花壇だったところは、レンガや石が取り払われてむき出しの土になっており、今はそれが美しい畝になっている。
「今日は豌豆の作付けを進めようと思っておりますだ」
「そう、楽しみだわ」
へえへえと興味深そうに聞いてくれるシモンと、笑いながら豌豆の料理の話などをしていると、グレーテルとクラウスの「姫様!」という焦ったような声が聞こえて、私は何事かと顔を上げる。
「これは…どうしたことだ?」
驚愕の表情で、お庭の入り口に立っているのは…
王太子!
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