6 / 307
第一章 何処へ?
6.左近衛中将様
しおりを挟む
にわかに部屋の中が慌ただしくなり、多くの女性が出入りして部屋を整えているようだ。
式部さんと内侍さんは平伏して、式部さんが言う。
「伊都子様、わたくしども少し席をお外し申し上げます。
すぐに戻ってまいります」
急いで出て行ってしまった。
えーっ!待ってぇ!置いてかないでっ
左近衛中将って誰だよ~
いいなずけって何なのよ~
あたしの心の叫びも虚しく、誰かが部屋に入ってきた。
簾の外、あたしが寝ているベッド(ではないんだろうなぁ。でもちょっと高さがあるのよ)がある、小さく仕切られた寝室の前に座った。
簾越しでよく見えないけど…若そうな男の人。
彼の方からいい香りが漂ってくる。
「伊都子姫…今朝、早馬が来てあなたが危篤だと聞いたときには…私は宮中で倒れそうになりました。
主上も非常にご心痛のご様子であらせられて、何度かこっそり涙を拭われて居られたのですよ。
本当に良かった…助かって…」
懐紙を取り出し涙を拭いている様子。
よく泣くなあ皆。
まあ、死にそうになったんだから、そういう反応もあるのかな。
…とその時は思ったんだけど、後から全然違うと気づくことになる。
「姫…そちらへ行っても宜しいですか」
おずおず、といった感じで尋ねてくる。
この男の人は誰だろう。
ここに入ってきちゃっても良い関係の人なのか?
どうしよう、なんて返事すればいい?
「左近衛中将様、お姫様は大変お疲れのご様子で…」
いつの間にか式部さんがあたしの横に来て、紅筆でさっとあたしの頬に紅を刷いた。
失礼いたします、と小さく呟いて、眉を描き、唇に紅を差す。
「そうですか…」ものすごく残念そうな左近衛中将様の声。
あたしは何だか可哀相になって、式部さんを見る。
髪や化粧を整え、綺麗になった式部さんは、あたしを見て微笑した。
承知しておりますよ、といったように。
「ですが、お姫様も左近衛中将様にお目にかかりたいと仰せでございます。
まだお熱がおありですので、さほど長くは無理かと存じますが…」
言葉が終わらないうちに簾を巻き上げて、烏帽子を被り美しい直衣を着て太刀を刷いた男の人が入ってきた。
あたしの周りにいた侍女の人たちがきゃっと言って、顔を袖で隠しながらそそくさと寝室を出て行く。
「伊都子姫…」
左近衛中将様はあたしの手を取って、はらはらと落涙。
泣きすぎだよあなた…
あたしは呆れて、左近衛中将様を見上げた。
涙に濡れた瞳であたしを見つめる左近衛中将様をみて、あたしは何故かドキッとした。
意外にイケメン…
っていうか、現代風の顔。
顎が割とほっそりしていて、目が大きく鼻が高くて口も大きめ。
肌の色も少し浅黒い。
平安時代ではあまり評価が高くない顔貌かもしれないなぁ。
この人は誰?
あたしというか、伊都子姫の何?
きーにーなーるー!!
式部さんと内侍さんは平伏して、式部さんが言う。
「伊都子様、わたくしども少し席をお外し申し上げます。
すぐに戻ってまいります」
急いで出て行ってしまった。
えーっ!待ってぇ!置いてかないでっ
左近衛中将って誰だよ~
いいなずけって何なのよ~
あたしの心の叫びも虚しく、誰かが部屋に入ってきた。
簾の外、あたしが寝ているベッド(ではないんだろうなぁ。でもちょっと高さがあるのよ)がある、小さく仕切られた寝室の前に座った。
簾越しでよく見えないけど…若そうな男の人。
彼の方からいい香りが漂ってくる。
「伊都子姫…今朝、早馬が来てあなたが危篤だと聞いたときには…私は宮中で倒れそうになりました。
主上も非常にご心痛のご様子であらせられて、何度かこっそり涙を拭われて居られたのですよ。
本当に良かった…助かって…」
懐紙を取り出し涙を拭いている様子。
よく泣くなあ皆。
まあ、死にそうになったんだから、そういう反応もあるのかな。
…とその時は思ったんだけど、後から全然違うと気づくことになる。
「姫…そちらへ行っても宜しいですか」
おずおず、といった感じで尋ねてくる。
この男の人は誰だろう。
ここに入ってきちゃっても良い関係の人なのか?
どうしよう、なんて返事すればいい?
「左近衛中将様、お姫様は大変お疲れのご様子で…」
いつの間にか式部さんがあたしの横に来て、紅筆でさっとあたしの頬に紅を刷いた。
失礼いたします、と小さく呟いて、眉を描き、唇に紅を差す。
「そうですか…」ものすごく残念そうな左近衛中将様の声。
あたしは何だか可哀相になって、式部さんを見る。
髪や化粧を整え、綺麗になった式部さんは、あたしを見て微笑した。
承知しておりますよ、といったように。
「ですが、お姫様も左近衛中将様にお目にかかりたいと仰せでございます。
まだお熱がおありですので、さほど長くは無理かと存じますが…」
言葉が終わらないうちに簾を巻き上げて、烏帽子を被り美しい直衣を着て太刀を刷いた男の人が入ってきた。
あたしの周りにいた侍女の人たちがきゃっと言って、顔を袖で隠しながらそそくさと寝室を出て行く。
「伊都子姫…」
左近衛中将様はあたしの手を取って、はらはらと落涙。
泣きすぎだよあなた…
あたしは呆れて、左近衛中将様を見上げた。
涙に濡れた瞳であたしを見つめる左近衛中将様をみて、あたしは何故かドキッとした。
意外にイケメン…
っていうか、現代風の顔。
顎が割とほっそりしていて、目が大きく鼻が高くて口も大きめ。
肌の色も少し浅黒い。
平安時代ではあまり評価が高くない顔貌かもしれないなぁ。
この人は誰?
あたしというか、伊都子姫の何?
きーにーなーるー!!
2
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる