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第一章 何処へ?

11.伊都子姫の事情・2

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 やがて、二人は灯りを吹き消して寝室を出て行った。
 式部さんは寝室の外で衛門さんと交代で夜明かしするらしい。
 ご苦労様です…

 生まれた時から、やがては天皇に嫁ぐというつもりで皆から大切に育てられてきて、政治的な要因で(恐らくは右大臣であるというお殿様の失脚)嫁入り話が頓挫したという話、だよね?

 そりゃショックだよね。
 肥大したプライドのやり場がなくて、苦しかっただろうなぁ。
 女房や侍女の人たちも、それが判ってるからワガママ姫に黙って仕えてるんだろう。
 姫にしてみればその同情すらも腹立たしい、ってところかな。

 三途の川のほとりで伊都子姫が般若の顔で言っていた『許さぬ!そなたのような女子が主上を誑かしたのに違いないのじゃ!地獄に堕ちるが良い!』という言葉が甦る。
 太政大臣の娘さんが自ら主上をたぶらかしたとは考えられないけど、そうとでも思わなきゃ辛すぎて生きていけなかったのかも。

 だけどさ。
 お殿様と北の方様は両親だから当たり前かもしれないけど、あたしが目を覚ました時の式部さんや内侍さんたちの喜びようはすごかった。
 伊都子姫の息が止まった時の悲しみようもありありと想像できるやつれかただった。
 
 彼女たちにとっては、仕事の一部かもしれないけど、でも絶対にそれ以上に伊都子姫のこと大切に思ってると思う。
 友達も全然いなかったあたしには、すごく羨ましいよ。
 伊都子姫の魂が、今はどうか安らかでありますように。

 しかし、左近衛中将様が、今の左大臣の息子とはなあ…
 あたしは思わず、小さくため息をついた。
 右大臣であるお殿様の政敵だって言ってたし。

 ロミジュリってやつかしら…
 ううっ、なんて不幸なの。

 彼氏が居たことないあたしには、もうなんか嬉しいことばっかりだった。
 大きな目で見つめて、くしゃっという感じで笑うのがすごく可愛い。
 男の人と一緒に食事するとか初めてだったし、手や頬や髪を優しく撫でられるのも心地よかった。

 あたし左近衛中将様のこと、結構好きかも…
 なんて、きゃっ♡
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