三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第一章 何処へ?

12.日記

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 翌朝、あたしは内侍さんに起こされた。
 寝室の中は朝でも薄暗くて、よく判んないんだよ~
 硬い枕と重い布団(綿の入った掻い巻きみたいな形状のもの)だし、長い髪の毛に邪魔されて寝返りとか打てなくてすごく寝づらかった。
 
 高くて硬い枕をよく見たら、なんと陶器製だった。
 開くようになってて、中にお香が仕込んであった。
 高貴な方々は、寝相が良いんだなぁ…

 着替えてから朝食が出されて、あたしは内侍さんに給仕してもらいながらひとりで食べた。
 式部さんは昨夜宿直だったから、今日は午後からの勤務なんだって。
 結構ちゃんとシフト制なんだ…

 お粥・海藻(わかめかな?)・茄子のお漬物・干し椎茸の汁物・いわしの丸干し・スモモ。
 
 味付けはやっぱり塩中心。
 あ、でもひしおという、味噌みたいなものがお皿に盛ってあって、わかめにつけながら食べたらしょっぱかったけど、美味しかった。

 典薬の助さんが来て、震える手で脈と熱を診てくれて「回復傾向にありますぞ。ゆっくりなさって、あまり物思いに耽ったりひどく思いつめたりなさらぬように」と慰めるように言った。
 はい、とあたしが素直に頷くと、典薬の助さんはビックリしたようにしわに埋もれた目を見開いた。
 内侍さんが思わずといったように、ふっと笑いを零し、慌てて咳払いした。

 それからは内侍さんや他の女房さん・侍女さんたちもそれぞれに仕事があるようで、あたしは暇になってしまい、重い十二単に辟易しながら寝室を出てみた。
 この十二単という着物、重すぎて立つことが困難なので、みんな膝でいざって進むのだ。
 裳《も》という、ズボンみたいな履き物の膝部分が傷みそう。
 
 結構広い、板敷の部屋だった。
 外との境界には簾が降ろしてあるけど、漏れてくる日光で意外と明るい。
 家具や調度が広い部屋に点在している感じ。

 いつも居る場所かな?
 畳が置いてあって、その上に座布団が敷かれている。
 脇息きょうそくというんだったか、寄りかかる肘置きのようなものもある。
 
 文机ふづくえもあった。
 美しい蒔絵の文箱ふばこも傍に置いてある。
 文机の上に、何か書物のようなものがあった。
 見たってどうせ解らないけど…と思いながらめくってみる。
 ミミズののたくったような文字の行列。
 うへっ、やっぱしな。

 いや、でも…待って。
 じっと見つめていると、朧気ながら意味が取れるようになってくる。
 あっと思った。
 会話もそうなんだよ!
 
 最初は「まいらせたまいて」「ひとつなおとしそ」みたいな言葉、まったく何言ってるか解らなかったんだけど、聞いてるうちにだんだん現代語みたいに聞こえるようになった。
  
 伊都子姫の感覚器官を通して見たり聞いたりしているからなのか。
 イヤ何にしても有り難い。
 ここで生きていく上では、必要不可欠だから。

 で、手に持った冊子をずーっと見ていると…これ、あれだよ!
 伊都子姫のつけていた、日記だ!

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