三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第二章 賀茂祭・流鏑馬神事

13.卯月の日常

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 女房さん達に頼んで、屋敷内のお散歩も続けさせてもらうことにした。
 お供に侍女さんを必ず連れていくこと、との条件付きだったが、あたしとしては別に全然OK。
 
 むしろ、ついてくる侍女さんの方が戦々恐々としてる感じだった。
 いやあねえ、苛めたりしなくってよ、ほほほ。
 無茶ブリはするかもしれないけど♪ 
 
 薫物たきものの勉強の方も、いつまでも逃げているわけにもいかず、嫌々始めた。
 丁子《クローブ》とか、伽羅とか、麝香《ムスク》とか、現代の高卒生のあたしでも聞いたことがあるような材料が結構あって、とっかかりは何とかつかめそう。
 主上や女御の為ではなく、あたしの身近な人たちの為に、頑張ろう。

 左近衛中将様へのお手紙も、少しずつ自分で書くようにした。
 左近衛中将様がものすごく喜んでくれるから。
 この時代、手紙って本当に重要な意思疎通の手段だったんだな、と改めて驚く。

 伊都子姫の書いたものを見ると、さすがに位の高い女人だけあって美しい手蹟だった。
 あたしなんて、毛筆と言えば小学校の書道しかやったことないという為体ていたらく
 だけど驚くなかれ、筆を持った手に意識を集中して書くと、伊都子姫の手蹟に似た筆跡になるんだよ!
 良かった~~疲れるけど…

 手紙と言えば、左近衛中将様は言葉通り毎日必ず、多い時には二回お文をくれる。
 あたしは毎回、女房さん達の前では嬉しさを何とか隠そうとするんだけど、もうとっくにバレているようなので最近はもう隠さなくていいか、と思い始めている。

 そして謎なのが義光君。
 ほとんど毎日、文を寄越す。
 あたしは一切返事していないのに、からかうような短い文面で楽しげに送ってくる。

 一度なんかは鏡面をすすで真っ黒にした手鏡を手紙に同封してきて
 『物の怪は鏡に映らないと申しますね。
 鏡は魔除けですから。
 月子姫も鏡に映っていないのが他人に見られたら大変ですから、この鏡を使ってくださいね』
 と書いてきやがった。

 こんの、クソガキっ!
 あたしは心の中で罵倒し、無言で鏡を磨いて綺麗にしてやった。
 鏡自体はとても高価な良いもののようだから(式部さん談)、使ってやる。

 あたしの情けないほど少ししかない平安時代についての知識をかき集めて考える。
 あたしが今いるこの平安王朝らしきところは、あたしがいた現代の、過去の時間軸上にある平安王朝とは微妙に違うみたい。

 まず藤原氏とか菅原氏とか橘氏とか源氏とか、聞いたことのある苗字が出てこない。
 お寺や通りなんかの場所の名前も、ちょっと違うんだよね…

 そう考えると、あたしと伊都子姫がどうして三途の川で出会ったのか、ものすごく不思議だ。
 パラレルワールドが交錯する場所なんだろうか。
 死んだらどこの世界の人も一緒の場所に行くことになっているのかな?
 
 うーん、判んない。
 考えても答えなんか出るわけがない。
  
 あたしは諦めた。
 他に考えなければいけないことはたくさんある。

 そんなこんなで、卯月しがつはあっという間に過ぎていった。
 
 
 
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