三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第二章 賀茂祭・流鏑馬神事

23.流鏑馬神事・3

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 糺の森というのは川に挟まれた場所にある、広い森だった。
 下鴨神社というところの境内なんだって。
 すごい。

 入り口を少し入ったところまで馬で行き、降ろしてもらう。
 斉矩さんが二頭の手綱を取り、厩舎へ連れて行った。

 「さて…受付をすれば、良い席にありつけるとは思うけど…
 色々聞かれても面倒だし、名前を出すのは控えたいな」
 伊靖君が呟く。
 あたしはうんうんと頷いて同意を示した。
 面倒くさいお付き合いは避けたい。
 
 「じゃあ、この民衆の中を紛れて、観に行きましょうか」
 ふうっと大きくため息をつき、あたしの手を取って歩き出そうする。

 「あれっ、治部大輔!こんなところで何を…」
 後ろから親しげに声をかけてきた男の人がいた。
 振り向いて人物を確かめ、伊靖君は小さく舌打ちする。
 「めんどっくせえ…」
 
 「ああ、左京亮さきょうのすけ
 君こそ、見物か?」
 打って変わってにこやかに話しかける。

 「ああ…って、おっ、女連れかよ。
 すげえ美人じゃないか…紹介しろよ」
 左京亮という人は、下品な物言いをしながら近づいてくる。

 「この方は私の叔母だ。
 嵯峨野の方からわざわざいらしたんで、案内しているだけだ」
 さ、叔母上、行きましょう、とあたしを促して歩き始める。

 叔母じゃねえよ!
 とか怒り出すほど、あたしも空気読めない人間ではないので、左京亮さんに軽く会釈して背を向けた。

 「あーあ…宮中で言いふらされるぞこりゃ」
 うんざりしたように伊靖君が言う。
 「宮中の金棒引きでしてね…最悪の奴にってしまいましたよ」

 「そりゃあ悪いことしたわねぇ 
  ごめんなさいね…」
 あたしが俯いて言うと、伊靖君は慌てたように「いや、大丈夫ですよ」とあたしの手を取った。
  
 伊靖君に手を引かれ、ぶつかりそうに歩いてくる人々から守ってもらいながら、流鏑馬神事の会場である、馬場にたどり着いた。
 「終着点の方に来ちゃったなあ…まあでもこちらの方が桟敷席からは遠いし。
 父上に見つかることもないだろう」

 あ、お殿様も来てるんだ!
 あたしは思わず、市女笠を深くかぶる。
 
 「今更でしょ、姉上」
 伊靖君が笑いだす。
 「ちょうど、次の出走が左近衛中将様のようですよ。
 間にあって良かった」

 顔を上げると、流鏑馬の長~いコースの思い切り向こうの方に、豆粒のような馬と人が見える。
 伊靖君がぐいぐいと人込みをかき分けて、前の方へあたしを押し出してくれた。

 左近衛中将様!
 がんばってっ!

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