100 / 307
第四章 上達部との交流
17.社交会の名称
しおりを挟む
「筆と、何か紙を頂戴」
あたしは内侍さんに言う。
内侍さんは先ほど何か書いていたからか、すぐに用意してくれた。
何だ簡単じゃん…
あたしは計算式を立てて、問題を解いていく。
権中納言様はあたしの手元から目が離せないといったように、あたしの背後に回って背中から覗き込む。
「見たことのない数式だ…これはどういう…」
そうか、置き換える数字がXやYじゃないんだ。
あたしは紙の最初の方を見て、該当する文字を見つける。
しかし、漢数字で解答を書くのって、意外とめんどくさい。
「…すごい、すべて正解です」
驚愕したように権中納言様が呟く。
東宮やお殿様、伊靖君も驚嘆の表情であたしを見ている。
いやあそんなあ…中学生か、せいぜい高1くらいの問題だったし。
あたし、微積分とか好きだったんだよね。
「姫は、どこでこんな学問を?」
筆と硯を女房さんに片付けさせて、東宮があたしの手を取って訊く。
あたしは笑って「さあ、どこでしょう」とごまかし、東宮の手をさりげなく外す。
権中納言様は、あたしが計算式を書いた紙を、食い入るように見ている。
見ても判らんだろうなあ…
東宮はしばらく、あたしを真剣な眼差しで眺めていたが、「…そうだ、そうしよう」と呟いた。
「え、何ですか?」
あたしが訊き返すと、にこっと笑ってまたあたしの手を取る。
「貴女という方は、まったく底が知れない。
不可思議な魅力に溢れている女人だ。
民部大輔が貴女を『月子姫』と呼んでいたが…
貴女は本当に、月から来た人ではないのか」
ちょっと違うな。残念。
パラレルワールドの未来から来たんだよ。
っていうか、義光君は『物の怪憑きの憑き子姫』って言いやがったんだよ!
そんなかぐや姫みたいな、ロマンティックな命名じゃないのすぁ!
「社交会の名前を変えてほしいというご希望でしたので、いろいろ考えていたのですが…
月子姫から採って『望月会』とか…いや、望月では先がないなあ。
望月は十五夜、満月だから…
先は新月に向かって先細りの感じだな」
考え込みながら手を伸ばして、あたしの髪をすっと撫でた。
そして両手をポンと打つ。
「そうだ。
『幾望会』ではどうかな」
「ほう、十四日の月ですな。
小望月とも言いますね」
お殿様が相槌を打つ。
「『希望』という音にも通じるし。
若い私たちには、ぴったりの名前だと思いませんか」
幾望会、か。
良いかも。
あたしが頷くと、嬉しそうにあたしの手の甲に頬ずりする。
こらやめろ。
だんだん義光君化してきたぞ、アンタ。
あたしは内侍さんに言う。
内侍さんは先ほど何か書いていたからか、すぐに用意してくれた。
何だ簡単じゃん…
あたしは計算式を立てて、問題を解いていく。
権中納言様はあたしの手元から目が離せないといったように、あたしの背後に回って背中から覗き込む。
「見たことのない数式だ…これはどういう…」
そうか、置き換える数字がXやYじゃないんだ。
あたしは紙の最初の方を見て、該当する文字を見つける。
しかし、漢数字で解答を書くのって、意外とめんどくさい。
「…すごい、すべて正解です」
驚愕したように権中納言様が呟く。
東宮やお殿様、伊靖君も驚嘆の表情であたしを見ている。
いやあそんなあ…中学生か、せいぜい高1くらいの問題だったし。
あたし、微積分とか好きだったんだよね。
「姫は、どこでこんな学問を?」
筆と硯を女房さんに片付けさせて、東宮があたしの手を取って訊く。
あたしは笑って「さあ、どこでしょう」とごまかし、東宮の手をさりげなく外す。
権中納言様は、あたしが計算式を書いた紙を、食い入るように見ている。
見ても判らんだろうなあ…
東宮はしばらく、あたしを真剣な眼差しで眺めていたが、「…そうだ、そうしよう」と呟いた。
「え、何ですか?」
あたしが訊き返すと、にこっと笑ってまたあたしの手を取る。
「貴女という方は、まったく底が知れない。
不可思議な魅力に溢れている女人だ。
民部大輔が貴女を『月子姫』と呼んでいたが…
貴女は本当に、月から来た人ではないのか」
ちょっと違うな。残念。
パラレルワールドの未来から来たんだよ。
っていうか、義光君は『物の怪憑きの憑き子姫』って言いやがったんだよ!
そんなかぐや姫みたいな、ロマンティックな命名じゃないのすぁ!
「社交会の名前を変えてほしいというご希望でしたので、いろいろ考えていたのですが…
月子姫から採って『望月会』とか…いや、望月では先がないなあ。
望月は十五夜、満月だから…
先は新月に向かって先細りの感じだな」
考え込みながら手を伸ばして、あたしの髪をすっと撫でた。
そして両手をポンと打つ。
「そうだ。
『幾望会』ではどうかな」
「ほう、十四日の月ですな。
小望月とも言いますね」
お殿様が相槌を打つ。
「『希望』という音にも通じるし。
若い私たちには、ぴったりの名前だと思いませんか」
幾望会、か。
良いかも。
あたしが頷くと、嬉しそうにあたしの手の甲に頬ずりする。
こらやめろ。
だんだん義光君化してきたぞ、アンタ。
1
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる