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第五章 四人きょうだい
13.庚申待・2
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早めに夕食を済ませた後、あたしは女房さん達に手伝ってもらって、庚申待のための部屋の室礼を調えた。
学校みたいに、文机を横に並べてみたのだ。
ふふ、なんか幼いころに遊んだ、おままごとのようで楽しい。
最初に二の姫が来て、それから縫姫が来た。
水菓子などつまみながら、三人でおしゃべりする。
二人の趣味を訊いてみる。
二の姫は、絵を描くことが好きなのだそうだ。
あと草紙を読むこと。
幼いころから身体が弱くてあまり外にも出られなかったそうで、部屋に籠っていたそうだ。
縫姫は、お裁縫と草紙。
染物も好きだそうで、色の研究なんかもしているらしい。
意外と学究肌のようでビックリした。
二人が好きな「草紙」というものが何なのか訊いてみると、戸惑いながら教えてくれた。
そりゃそうか、この時代の識字できる人間が知らないわけないのか。
主に女性好みの物語とか詩とか日記とか、そういった文章を和綴じにした本らしい。
男の人が読むような学術書や詩歌集は巻物なので、それと区別してるみたい。
へえ…最近、流行りの草紙ってどういうのなの?と訊くと、二人は顔を見合わせて、なぜか口ごもる。
ご存じない方が宜しいのでは…とかなんとか、口の中で呟いている。
なんで?とあたしが訊こうとしたとき「杉原権中納言雅孝様、ご到着でございます」と先触れの声がして、すぐに「失礼いたします、月子姫」と優しい声が聴こえた。
二の姫と縫姫は、えっ?という顔であたしを見る。
「今日の水無月会でやる遊戯の、まあ先生というか…
これ、次回の幾望会でもやろうと思ってるから、今日の結果を見て改善点を話し合いたくて」
「せっかくのきょうだい会に他人が混ざってしまって、大変申し訳ありません。
御迷惑は承知で罷り越しましたが…帰った方が宜しいでしょうか」
入り口近くに座って、手をついて深く頭を下げる。
あたしが二の姫と縫姫にお願い、と目配せすると、二人は戸惑ったように頷いた。
ごめんよ勝手なことして。
「いえいえ、大丈夫でございますわ。
こちらへお越しくださいまし」
あたしが立って、座布団の方へ案内する。
あたしは姉妹を権中納言様に引き合わせる。
権中納言様は「美人三姉妹でいらっしゃいますね。無理いって押しかけて良かった」と穏やかに笑う。
セクハラ発言だけど、権中納言様が言うとそう聞こえない。
心からそう思っているのが判る。
「この室礼、良いですね。
大学寮を思い出しますよ」
と並んだ文机を見ながら言う。
そこへドタバタとやんちゃ二人組が駆け込んできた。
「姉上、遅くなってすみません。
二人で退出しようとしたら、主上と若公達の方々にお前らどこ行くんだと矢のような質問攻めに遭いまして…」
「家で庚申待を過ごすだけですと申し上げたのですが…あの伊都子姫がご一緒なら何かあるんだろうと」
「結局、水無月会のことまで全部吐かされました」
なっさけないなあ…お前ら男だろう。
あら、わたくしったら性差別発言。
あたしが思わずため息をつくと、権中納言様が「ああ、すみません…私も皆に詰問されたので、右大臣家で庚申待すると言ってしまいました」と苦笑する。
嫌な予感しかしない。
今から夜食を増やしてもらえるかしら…
学校みたいに、文机を横に並べてみたのだ。
ふふ、なんか幼いころに遊んだ、おままごとのようで楽しい。
最初に二の姫が来て、それから縫姫が来た。
水菓子などつまみながら、三人でおしゃべりする。
二人の趣味を訊いてみる。
二の姫は、絵を描くことが好きなのだそうだ。
あと草紙を読むこと。
幼いころから身体が弱くてあまり外にも出られなかったそうで、部屋に籠っていたそうだ。
縫姫は、お裁縫と草紙。
染物も好きだそうで、色の研究なんかもしているらしい。
意外と学究肌のようでビックリした。
二人が好きな「草紙」というものが何なのか訊いてみると、戸惑いながら教えてくれた。
そりゃそうか、この時代の識字できる人間が知らないわけないのか。
主に女性好みの物語とか詩とか日記とか、そういった文章を和綴じにした本らしい。
男の人が読むような学術書や詩歌集は巻物なので、それと区別してるみたい。
へえ…最近、流行りの草紙ってどういうのなの?と訊くと、二人は顔を見合わせて、なぜか口ごもる。
ご存じない方が宜しいのでは…とかなんとか、口の中で呟いている。
なんで?とあたしが訊こうとしたとき「杉原権中納言雅孝様、ご到着でございます」と先触れの声がして、すぐに「失礼いたします、月子姫」と優しい声が聴こえた。
二の姫と縫姫は、えっ?という顔であたしを見る。
「今日の水無月会でやる遊戯の、まあ先生というか…
これ、次回の幾望会でもやろうと思ってるから、今日の結果を見て改善点を話し合いたくて」
「せっかくのきょうだい会に他人が混ざってしまって、大変申し訳ありません。
御迷惑は承知で罷り越しましたが…帰った方が宜しいでしょうか」
入り口近くに座って、手をついて深く頭を下げる。
あたしが二の姫と縫姫にお願い、と目配せすると、二人は戸惑ったように頷いた。
ごめんよ勝手なことして。
「いえいえ、大丈夫でございますわ。
こちらへお越しくださいまし」
あたしが立って、座布団の方へ案内する。
あたしは姉妹を権中納言様に引き合わせる。
権中納言様は「美人三姉妹でいらっしゃいますね。無理いって押しかけて良かった」と穏やかに笑う。
セクハラ発言だけど、権中納言様が言うとそう聞こえない。
心からそう思っているのが判る。
「この室礼、良いですね。
大学寮を思い出しますよ」
と並んだ文机を見ながら言う。
そこへドタバタとやんちゃ二人組が駆け込んできた。
「姉上、遅くなってすみません。
二人で退出しようとしたら、主上と若公達の方々にお前らどこ行くんだと矢のような質問攻めに遭いまして…」
「家で庚申待を過ごすだけですと申し上げたのですが…あの伊都子姫がご一緒なら何かあるんだろうと」
「結局、水無月会のことまで全部吐かされました」
なっさけないなあ…お前ら男だろう。
あら、わたくしったら性差別発言。
あたしが思わずため息をつくと、権中納言様が「ああ、すみません…私も皆に詰問されたので、右大臣家で庚申待すると言ってしまいました」と苦笑する。
嫌な予感しかしない。
今から夜食を増やしてもらえるかしら…
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