三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

文字の大きさ
123 / 307
第五章 四人きょうだい

14.庚申待・3

しおりを挟む
 あたしは車座になって座っているメンバーに、第二回水無月会の開会をラフに宣言する。

 「じゃあ、第二回水無月会を始めましょう。
 今回は庚申待も重なるので長丁場になるけど、権中納言様もご参加くださったし楽しく過ごしましょうね」

 拍手が起こる。
 それを合図に、女房さん達がお菓子を盛った高坏を次々と運び込んでくる。

 「後で夜食もあるんだけど、とりあえずおしのぎに。
 えーっとね、これはかりんとう。
 揚げ菓子ね。蜂蜜をまぶしてあります」

 「これは蒸しパン。蒸し菓子…かな。
 中に小豆餡が入ってます。
 で、これは、もとの…左近衛中将様からの水無月会への差し入れの唐菓子」

 「甘いものばかりでは殿方がおつらいと思うので、おせんべいも用意しました。
 もち米の米粉を整形して、乾かして、揚げて醤を塗ったもの。
 それから、塩をつけて焼いたもの。
 美味しいからぜひ召し上がってみて」

 鍛冶師さんに餅網も作ってもらったんだ~。
 ふふふ、早くお醤油が出来上がらないかな。

 「会の進行の都合上、お酒はまだ控えて頂きます。
 飲み物はお茶か甘酒くらいになってしまいますが、しばしのご辛抱を」

 うへえ~、とやんちゃ二人組が情けない声を出す。
 うるさい、令和日本ならあんたたちまだ未成年だからね!

 六人で美味しいものを囲んで食べるのは、とても楽しいもので、シャイな縫姫や二の姫も顔は隠さずに袖口で少し口元を覆うくらいで、よく食べ笑っている。
 
 きょうだいの気安さがあるのかもしれないな。
 良かったなぁ。水無月会に誘ってみて。
 あたしは皆の笑顔をとても嬉しく眺めていた。


  権中納言様も、最初からこの会にいたように皆と打ち解けて様々な話を姫たちに聞かせている。

 整いすぎて冷たいくらい端正な顔立ちに、柔らかな笑みを浮かべて話す権中納言様に、縫姫も二の姫もうっとりしているのが判る。
 
 わかるよ、その気持ち!
 あたしも平安美男子の良さが理解できるようになってきたから!

 だけどそれでも、元信様は最初からずっとイケメンのまま。
 浅黒い顔も、引き締まった顎のラインも、大きな瞳も。
 平安美男子からはかけ離れてるけど、あたし好みの顔なんだよね、きっと。

 「さて、ではそろそろ、遊戯に移りましょうか。
 この四つの文机に、一人ずつ向かってください。
 伊靖、二の姫、義光、縫姫の順ね」

 皆はなになに?何が始まるの?と言いながら立ち上がる。
 二の姫の手を伊靖君が引き、縫姫の手を権中納言様が取って文机の前にいざなう。

 あたしは、簡単な四則演算を書いた紙を皆に配る。
 あたしが書いた下書きを、内侍さんと式部さんで綺麗に清書してくれた。

 「まず、やり方を説明するね。
 足し算と引き算は、簡単だと思うけど…
 掛け算割り算は、できなくてもいいよ」

 和算って結構レベル高くて驚いた。
 鶴亀算植木算旅人算、なんて中学受験の人しかやらないよね、令和日本でも。
 独特の解法がたくさんあって、本当に面白い。

 あたしが例題を解いてみせ、皆に解き方を解説する。
 意外と皆、食いついてきた。
 筆に墨を含ませて、問題に取り掛かる。
 
 あたしは権中納言様と顔を見合わせて、微笑みあった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...