三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第五章 四人きょうだい

15.庚申待・4

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 伊靖君と二の姫は、存外サクサク解いていく。
 伊都子姫はどうだか判らないから断言はできないけど、お殿様か北の方様の血筋に、理系の素質があるのかもしれない。

 義光はてんでダメで、あたしはつききりになる。
 「月子姫~解らない~ですよ~」
 と情けない声をあげる。

 あんた絶対文系だね…
 手紙とかすっっごいマメに、結構上手に書いてくるもんね。
 お歌も、なかなか筋が良いって内侍さんが言ってた。

 縫姫は…と見ると、権中納言様がついてくれて、丁寧に質問に答えている。
 縫姫もまったく初めての割には理解が早いようだ。
 とすると、お殿様の血筋かな。

 一通り、皆が解き終わったところで、権中納言様が答え合わせをして解説をしてくれる。
 解答を見ると、伊靖君はほぼすべて正解、二の姫は八割方、縫姫は半分ちょっと、義光は…三割くらいかな。

 「伊靖、二の姫、すごいわね!」
 あたしが驚いて褒めると、「右大臣家のごきょうだいは、算学に強いようですね」と権中納言様がニコニコしながら言う。
 
 「月子姫の、その恐ろしいほどの数学の知識はいったいどこで得られたのですか?
 もし、教授してくださる方がいらっしゃるなら、私もぜひ師事したい」
 一転して、真剣な表情であたしを見つめる。
 
 平安イケメンの真剣な瞳に気圧されて、あたしは袖で顔を隠した。
 どうしよう…

 「わたくしは名の通り月から舞い降りたので…月に師匠がいるのですわ」
 苦し紛れに言って、にっこり笑う。

 権中納言様は、あたしの言葉を聞くと、ほっと大きく息をついて天井を見上げた。
 「…諦めませんからね、月子姫。
 いつか本当のことをおっしゃってくださるまで」

 うーん。誤魔化せないか、やっぱり。
 義光が意味ありげな視線を送って寄こす。
 
 しゃべったらぶっ殺す。 
 あたしが目顔に殺意を込めて脅すと、慌てて口に手をあてた。
 けっ、ヘタレめ。

 「さてじゃあ、お勉強はここまで。
 今の簡単な足し算を使って遊べる、玩具を用意したのよ」

 皆、ああーっと伸びをする。

 「面白かったですよ、姉上。
 これまたやりたいなあ。
 ね、二の姫」
 伊靖君が言って、二の姫はこくんと頷いた。

 「縫姫も、とても筋が宜しいですよ」
 権中納言様が縫姫を見て微笑む。
 
 縫姫は恥ずかしそうに「権中納言様の教え方がお上手だからですわ」と言って、頬を赤らめる。
 仕草がとても美しいんだよね、縫姫は。
 あたしなんかよりずっと、お姫様っぽい。
 
 「権中納言様、後ほど幾望会のご相談に乗っていただけますか?」
 とあたしが言うと
 「もちろんです。そのために今日は参りましたのですから」
 と笑い、眩しそうに目を細めて言い足す。

 「あ、あと…数学の問題も考えて来ましたので、それもできればご一緒に」
 「まあ、楽しみ!ぜひ、後で見せてくださいな」
 おお、受けて立つぜ!
 ワクワクするっ!

 「お姉様、玩具ってどんなもの?」
 二の姫が可愛らしく首を傾げて訊いてくる。
 
 「ああ、えーとね、トランプっていうの。
 この文机を片付けてから、やりましょうか」

 女房さん達と男どもが片づけを始めたところで、庭の方が騒がしくなった。
 
 …ああ、やっぱり。
 思った通りだよ…
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