三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

1.義光の誘い

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 縫姫が局に帰り、あたしは女房さんを呼んで着替えをした。
 御帳台から出てみると、うわぁ、もう午後の日差し。
 暑いはずだよ…

 この世界で文月に入り、太陽暦では8月の半ばくらいだから、ほんっとうに暑い。
 しかも京都…鍋底にいるような暑さ。

 生絹すずし単衣ひとえという着物を出してくれたんだけど…
 スっケスケのシースルーで、あたしは引いてしまった。
 確かに涼しそうだがこれニップレスないと…透けますよ全部…

 文机にはまたも手紙攻勢で、読むのも大変だった。
 適当に返事を書いて、従者さんに届けてもらう。
 ごめんね、この暑い日中に…水筒持って行ってね!

 義光からは、今日の乗馬の稽古は夕方から少しにしましょうとあった。
 今日はもう疲れてるからいいや…と断りの返事を出した。

 のに。
 自分が来たければ来る男、義光。

 「月子姫~」
 と夕方、のんびりとした声が庭から聞こえてくる。
 なんでだよ…断ったじゃん…

 のろのろと外廊下に出て端近に寄る。
 義光がいつもの笑顔で庭に立ってあたしを見上げている。

 ん?
 手に何か持ってる?
 …釣り竿?

 「昨夜はお疲れ様でした。
 昼前にご挨拶に伺ったんですが、お寝み中とのことでそのまま失礼しました。
 お馬のお稽古もお休みなさりたいとのお文を頂いたので、他のことをなさってみてはどうかと」

 手に持った道具を持ち上げて見せる。
 「釣殿つりどのの使用許可は頂いてきましたが、お舟も出せますよ」

 そうか…母屋の周りにはえらい広い庭があったな…
 母屋から池の上にせり出してる場所が釣殿で、池には舟も浮かべられるのか。
 優雅だなぁ。

 今の身体の疲労度を考えると船酔いしそうだったので、釣殿に連れて行ってもらうことにした。
 釣りってやったことない。
 面白そう。

 義光は釣りの準備を家人けにんに命じて、竿を渡した。
 沓を脱いで階を登ってくると、あたしの手を取って立たせた。

 「お疲れのところ申し訳ありませんが、お屋敷内を歩いていきましょう。
 どうなさったんですか、いつものお元気がないですね」

 と言うと腰をかがめて、あたしの膝の後ろに手をあてて抱き上げる。
 
 「っ…」
 あたしが驚いて降りようとすると、ぐっと腕に力を入れて自分の方へ引き寄せる。
 
 「私の首に腕を回してつかまってください。
 大丈夫ですよ。落としたりしませんから。
 案外軽いんですね、単衣だからかな」
 
 軽い?そう?
 じゃあ、連れてってもらおうかな。

 あたしはちょっと気を良くして義光の首に手を回す。
 式部さんがあたしの重い髪を持ってついてきてくれる。

 義光なりにあたしを慰労してくれようとしてるんだろう。
 あたしは意外と逞しくて安定感のある義光の腕に抱かれて釣殿へ行った。
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