三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

19.第二回幾望会・3

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「今宵の幾望会には、この三人が参加してくれた。
 まず、左大弁。
 左近衛中将の兄」
 
 水色の直衣がとてもよく似合う、元信様のお兄様が爽やかに微笑み、洗練された物腰で会釈する。
 あたしの後ろに控えている、女房さん達がほーっとため息をつく。

 「それから蔵人の頭」
 「どうぞよろしく」
 と、緋色の直衣の若公達がにこっと笑って頭を下げた。
 袖口から見える指貫の色は新緑の色。
 お洒落だねえ…

 「最後に、参議」
 深緑の直衣の公達は、ぎくしゃくと身体を折り曲げるように会釈した。
 口がへの字になってて眼光も鋭い…あたしはなんだか不安になる。
 来たくなかったんじゃないのかな。

 元信様は、お兄様の横に座っている。
 遠いよ…こっちに来てほしい。

 「本当は、あともう一人参加するはずだったのだが…
 最近、具合が良くないと言って、今日は参内もしていなかったな。
 …どうも、二の姫の病と同じではないかと思うのだが」
 と言って、あたしを見る。

 ああ、脚気かあ。ありそうだよね。
 「後で、治療食をお教えいたしますわ」とあたしが頷いて言うと、
 東宮は「さすが、察しが早い。頼みますよ」と笑った。

 「それでは主催の月子姫から一言」
 と言って、東宮はあたしに微笑みかける。

 あたしは一礼して口を開く。
 「皆様、今宵はお暑い中、幾望会にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。
 この社交会のあるじの、伊都子でございます。
 小さく拙い会ではございますが、皆様と御一緒に楽しませていただきたいと存じます」

 拍手が起こり、それを合図に女房さん達がお膳を捧げ持ってしずしずと入ってくる。
 皆の前にひとつずつ、お膳を据え、盃に冷やした甘蔓あまずらのお茶を注ぐ。

 「まず、お食事前のおしのぎに、軽いおやつをご用意いたしました。
 葛粉を使用いたしました、葛餅でございます。
 冷やしてありますので、今日のような暑い日には宜しいかと」

 へえ…と皆、珍しそうに見る。
 この時代、葛って生薬だったらしく、澱粉を取り出す技法がなかったみたいで、料理長が苦労してくれた。
 あまり量がなくて、試作が十分ではないんだけど、まあそれらしくなってはいる。

 「葛餅にかけて召し上がっていただく、ソースが二種類。
 両方とも黒いのですが、とろみのある方が、東宮様から頂戴した黒砂糖を煮詰めたもの。
 さらっとしている方が醤油でございます」

 「ちょっと待って…黒砂糖も醤油も何だか判りません」
 と困惑したように蔵人の頭様が言う。

 ちょいとお待ち、今から説明したげるから。
 あたしはにっこり笑って、蔵人の頭様の方へ向かって口を開く。
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