三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

20.第二回幾望会・4

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 「申し訳ありません。ご説明申し上げますわ。
 黒砂糖は、薬として重用される、植物から採取した甘味料でございます。
 精製が難しく、なかなか手に入らないのですが…東宮様はさすがでございますわね」

 「それから醤油でございますが、これはわたくしの考案した(んじゃないけど、他に説明できる言葉がない)、大豆から作った調味料でございます。
 まだ、発酵させる時間が短いので、薄いかとは存じますが、お菓子に使うくらいなら…」

 お殿様がこの醤油をすごく気に入ってくれて、たくさん作る許可をくれた。
 荘園の、味噌を作る蔵の隣に、醤油蔵を作ってくれるって!
 料理長と手を取り合って喜んでしまった。

 説明している間に、東宮は行儀悪く先に食べ始めている。
 聞けよっ!人の話!

 「おお、これは美味しいですね!
 甘いのも、醤油とやらのも、両方ともそれぞれに美味い。
 砂糖をこう使うとは…驚きましたよ。
 月子姫なら何か面白いことをなさってくださるとは思っていましたがね」

 今回は敢えて、きなこは使わなかった。
 ソースだけで葛餅の冷たさを味わって欲しかったから。

 東宮がめちゃめちゃすごい勢いで食べているのを見て、皆、恐る恐る箸をつける。

 そうか。
 皆が、こういうゲテモノっぽい食べ物を口に入れるのを嫌がらないように、率先して食べてくれてるんだ。

 「こういったものは、女人や子供が食べるものだと思っていましたが…
 醤油をつけると、男にも食べやすいですね、甘くなくて大変美味しいです」
 意外に柔らかい感じで、参議様が評してくれる。

 良かった。
 ホッとしてあたしは思わず東宮を見る。
 東宮は片目をつぶってみせた。
 悪戯っぽい笑顔が可愛いな、なんか。

皆が完食してくれてお膳を片付けた後、今度は文机を庚申待の時のように設《しつら》える。

 「これから遊戯を致します。
 『数独』と申しますもので、解き方は後ほどご説明申し上げます。
 お二人ずつの組になっていただいて、競走しようと考えております。
 一番先に正解された組には、賞品を差し上げますわ」

 おお、何ですか?と蔵人の頭様が無邪気に尋ねる。
 「わたくしが作りました、蚊除けの液体でございますわ」
 とあたしはにこっと笑う。

 「蚊除け…?」
 訝し気に、元信様のお兄様。

 「この部屋の四隅にも、その液体を置いてございますのよ。
 御簾にも塗り付けてあります。
 薄荷を使っておりますので、清涼感がございますでしょう?」

 義光と自分の身をもって人体実験した結果、劇的な効果があることが判った。
 汗とかで流れちゃうとすぐに効果が無くなるから、なかなか使い方が難しいんだけど。

 「ああ…そういえば。
 ここに入ってきた時から、すうっとする薫りがするとは思っていましたが…
 蚊除けとは思いませんでしたよ」
 と東宮があたしの髪を撫でて言う。
 触んなって、もう。

 「伊都子姫は、さまざまな珍しいものを手ずからお作りになるのですね!
 いつも宮中でお話を伺っておりますよ。
 私はもう、羨ましくて仕方なかったです」
 参議様の隣に移動しながら、蔵人の頭様がにこやかに言う。

 参議様もうんうん、と頷いて、ほんのり笑った。
 「数独とはどんな遊戯ですか?
 ぜひ、やってみたいですね」
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