三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第七章 宮中

11.今後について

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 「しかし、あの太政大臣が素直に白状するとはとても思えないな。
 証拠もないし…
 いつものように薄笑いを浮かべて、のらりくらり逃げて言質げんちを取らせないだろう」
 東宮は悔しそうに右のこぶしを左のてのひらに打ち付ける。

 「…とすれば、司厨長を締め上げるしかないな。
 誰に頼まれてやったのか。
 昨日、食中毒の原因を引き起こした牡蠣を夕食に出した責任を負って、奴はいずれにせよ馘だ。
 痛めつけてやれば吐くだろう」
 ニヤッと笑って右近衛大将様が物騒なことを言う。

 「あの…痛めつけたりはなさらないで」
 あたしは言う。
 21世紀の日本人としては、拷問なんか嫌だよ…

 あたしの言葉で、その場の雰囲気がちょっと変わる。
 「伊都子姫…そなたを冤罪に落とそうとした男ですよ」
 と主上が少し笑いを含んだ、バリトンの声で言う。

 まあ、そうなんだけど…
 「でも…わたくしのせいで、これ以上犠牲になる人が出るのは、嫌なのです」
 
 「貴女のせいではない!」
 権中納言様が強く言う。
 みんな、うんうんと頷く。
 ありがとよ、みんな。

 「のせいであるな。
 そなたに会いたいばかりに、無理をして楓間の更衣にここまで呼ばせてしまった」
 主上がうつむいて低く呟く。

 「いえ、そんな…」
 あたしは慌てる。
 「わたくしも今日はお久しぶりにお会いできると楽しみにしておりましたの。
 皆様で楽しく過ごそうと思っておりましたのに…」
 
 うっそっだっよっ!
 ちょーめんどかったよっ!
 おまけに、今日初めて会ったし!
 …でも、主上の苦渋の顔を見たら、そんなこと言えないじゃん。

 主上はあたしの頬に触れる。
 「左近衛中将や東宮から、いつもそなたの話を聞いていた。
 余も…もう少し身軽な身の上であったなら…と思わずには居られなんだ…」

 「また、参りますわ、楓間の更衣様ともあまりお話しできなかったし。
 宝鏡殿の女御様とも今日は、お話どころではありませんでしたし」

 愛しげに頬を撫でられて、あたしはドキドキしてしまう。
 伊都子姫の感覚が…?

 そう、秋の薫物合わせとやらで、あたしは宝鏡殿の女御と組んでチーム戦を展開することになってるのよ。
 だから少しでも、事前に会って話ができたらなあ…と思っていたんだけど。
 今日はお腹が痛くて苦しんでいる女御様を見ただけだった。

 「それは、いつになる?
 明日か、明後日か」
 主上は身体ごとあたしの方を向いて、あたしの手を取る。

 ええー…東宮みたい。
 意外なところで似てるなあ、この兄弟。

 「さあ…いつになるかは…確約できませんわ。
 女御様や更衣様の体調がお戻りになられてからですわね」
 あたしは素っ気なく言って、手を払った。

 東宮がニヤニヤしてこちらを見ている。
 あーんたもだよっ!
 急に来るのはめてよね!

 その時、「陛下!殿下!」と大声で呼ばわりながら、廊下を駆けてくる足音が響いてきた。
 部屋の入り口に片膝をついて、頭を下げる。

 「奏上します!
 司厨長が、服毒して自死を図りました!」
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