三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第八章 暗雲

6.御鷹狩

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 右近衛大将様からはすぐにお文が来た。
 あなたの気持ちも考えず大変申し訳なかった、二人になれる機会を逃すまいと必死だったという文章から始まり、謝罪文かと思いきや、喘ぐ声がとても可愛らしかった興奮した、と続き、あたしは真っ赤になった。

 コイツ全っ然反省してない!
 もう絶対許さないから!

 それからは、右近衛大将様が御鷹狩の打ち合わせに来ても、あたしは御帳台から出なかった。
 どれだけ懇願されても泣かれても、顔を見せることはしなかった。
 またあんな風にされたら…自分がどうなってしまうか、怖かった。

 東宮や権中納言様から、右近衛大将が酷く落ち込んでいて参内がままならない日もあって心配だという手紙が来た。
 何があったのか、とあたしに訊かれても、答えられないよ…

 右近衛大将様のキスが忘れられない。
 他の誰とも違う、優しく甘やかなキス…
 もう一度、と思ってしまう。

 あたしは頭を振って妄想を追い出す。
 ダメだ考えちゃもう…あたしは元信様が好きなの!
 
 元信様は相変わらず、嫉妬に萌え萌え(誤用)の主上からこき使われ、御鷹狩の準備に走り回っているようだった。
 でも主上の嫉妬のお陰で、宮中では「主上の懐刀」的な扱いを受けるようになっているそうで。

 人生、何がどう転ぶか判らないものだねえ…

 そんなこんなでバタバタ過ごしているうちに、あっという間に御鷹狩の日になった。
 
 朝早くから、人が大勢母屋に出入りし、お殿様も落ち着かない様子で行ったり来たりしている。
 伊靖君は御鷹狩りの方へ行っているらしい。

 あたしも早くに叩き起こされ、暑いのに十二単を着せられ念入りに化粧される。
 こんなに早くから準備したって、来るのは夕方でしょう…

 屋敷内の散歩も禁止された。
 どこもかしこも衛士が立ち、厳重に警戒している。

 こ…んな厳重な警戒の間をかいくぐって、牛車から抜け出してきたりできるの?!
 あたしは今更ながら不安になる。

 主上のこの無茶っぷり…東宮をも凌ぐわ。
 そんなにしてまで、あたしに会いたいという気持ちが、まったく判らない。
 
 怖い。
 主上の気持ちが。
 
 時間はゆっくり過ぎ、右大臣家にはいちいち進行状況が実況中継のように報告が入る。
 いくら訓練された鷹でも、晩夏の青々と茂った木々の間から獲物はなかなか見つけられないらしく、いまひとつ戦果があがらない。

 それを承知でやってても、やっぱり苛々するらしくて、早めに切り上げるか、という空気になってきたという報告の後に、大至急の使者が飛び込んできた。

 「申し上げます!
 東宮殿下に誤って矢がかすり、お怪我をあそばされました!
 殿下と主上の強いご要望で、これからすぐ右大臣家ここにお越しあそばされます!」

 はあっ?!
 なんでえーっ?!
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