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第十章 裁きと除目と薫物合わせ
19.勝敗
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評議の間、あたしたちはお菓子など食べてお茶を飲む。
宝鏡殿の女御様は、勝敗の行方よりも、あたしと内侍さんにいろんなことを訊きたくてうずうずしていたようだ。
内侍さんは、ここ最近のクソ忙しさ(幾望会の記録をまとめたり、宮殿に呼ばれて書記官まがいの事させられたり)にも拘らず、ちゃんと『月子姫物語』の続きも書いているらしい。
今はもう、宮中での牡蠣中毒事件と、厨司長の中宮殺害未遂事件&月子姫容疑者まで進んでいるんだって。
内侍さんの取材力は凄くて、主上の居室での、皆の密談まで克明に描いてあるみたい。
「とても臨場感があって、素晴らしいですわ!
他にこんなに面白い物語は見たことがありません。
しかも本当にあった話で、登場人物も知っていると思うと…」
宝鏡殿の女御様は興奮を抑えきれぬ様子。
「わたくしが頂いたことのないような、素敵な言葉をちりばめた主上からのお文など…
憧れていた夢の世界が、伊都子姫様の周りには現実としてあるんですのね」
うっとりと言う。
うっ…
何気ない言葉が胸に刺さるわ。
内侍さんに、主上や東宮、その他の公達からの手紙を公開していいって言っちゃったんだよね。
こんな素敵な手紙、あたしだけが見るのはなんか勿体ないなって思って。
内侍さんはその手紙をさらにアレンジして、固有名詞とか出さないようにしてくれてる。
手紙を晒された誰からも文句来たことないし、良いかと思ってたんだけど…
女御様が見たら、どう思うかは考えてなかった。
うーん。
再考の余地あり。
コンコン、と合図が鳴った。
「お集まりの皆様、お席にお戻りください。
評議の結果を、発表いたします」
ざわざわと皆が着席する。
主上が、大して張ってもいないのに良く響く声で「では、皆で話し合って出した結果を表する」と言う。
わあ…なんかドキドキする。
あたしは胸の前で手を組み合わせた。
「満場一致で月子姫の薫物が一番だった」
…は?
あたしは、思わず几帳をどかす。
個人競技じゃないでしょ?
御簾の向こうの主上を凝視していると、ごほん、と咳が聴こえた。
「…薫物合わせの勝者としては、宝鏡殿の女御側、ということになるが…」
「わたくしは、伊都子姫様の勝利で宜しいですわ」
宝鏡殿の女御様があたしを見て微笑む。
「凡そ、わたくしなどには想像もつかない材料をお使いになって、このお題の情景を見事に薫りで表現なさった伊都子姫様に、惜しみない賛辞と拍手を」
と白くてきれいな手をたおやかに打ち合わせる。
瞬く間にその拍手は皆に広がり、内裏は祝福に沸いた。
宝鏡殿の女御様は、勝敗の行方よりも、あたしと内侍さんにいろんなことを訊きたくてうずうずしていたようだ。
内侍さんは、ここ最近のクソ忙しさ(幾望会の記録をまとめたり、宮殿に呼ばれて書記官まがいの事させられたり)にも拘らず、ちゃんと『月子姫物語』の続きも書いているらしい。
今はもう、宮中での牡蠣中毒事件と、厨司長の中宮殺害未遂事件&月子姫容疑者まで進んでいるんだって。
内侍さんの取材力は凄くて、主上の居室での、皆の密談まで克明に描いてあるみたい。
「とても臨場感があって、素晴らしいですわ!
他にこんなに面白い物語は見たことがありません。
しかも本当にあった話で、登場人物も知っていると思うと…」
宝鏡殿の女御様は興奮を抑えきれぬ様子。
「わたくしが頂いたことのないような、素敵な言葉をちりばめた主上からのお文など…
憧れていた夢の世界が、伊都子姫様の周りには現実としてあるんですのね」
うっとりと言う。
うっ…
何気ない言葉が胸に刺さるわ。
内侍さんに、主上や東宮、その他の公達からの手紙を公開していいって言っちゃったんだよね。
こんな素敵な手紙、あたしだけが見るのはなんか勿体ないなって思って。
内侍さんはその手紙をさらにアレンジして、固有名詞とか出さないようにしてくれてる。
手紙を晒された誰からも文句来たことないし、良いかと思ってたんだけど…
女御様が見たら、どう思うかは考えてなかった。
うーん。
再考の余地あり。
コンコン、と合図が鳴った。
「お集まりの皆様、お席にお戻りください。
評議の結果を、発表いたします」
ざわざわと皆が着席する。
主上が、大して張ってもいないのに良く響く声で「では、皆で話し合って出した結果を表する」と言う。
わあ…なんかドキドキする。
あたしは胸の前で手を組み合わせた。
「満場一致で月子姫の薫物が一番だった」
…は?
あたしは、思わず几帳をどかす。
個人競技じゃないでしょ?
御簾の向こうの主上を凝視していると、ごほん、と咳が聴こえた。
「…薫物合わせの勝者としては、宝鏡殿の女御側、ということになるが…」
「わたくしは、伊都子姫様の勝利で宜しいですわ」
宝鏡殿の女御様があたしを見て微笑む。
「凡そ、わたくしなどには想像もつかない材料をお使いになって、このお題の情景を見事に薫りで表現なさった伊都子姫様に、惜しみない賛辞と拍手を」
と白くてきれいな手をたおやかに打ち合わせる。
瞬く間にその拍手は皆に広がり、内裏は祝福に沸いた。
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