三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十一章 露顕と三日夜の餅

5.新居

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 主上は苦く笑うとあたしを見る。
 「先ほど、宮中で余は、薫物合わせに見事実力で勝利した月子姫に、未練がましく入内を勧めてみた。
 が、姫は『わたくしの希望は、治部卿様と一緒になること』と言い切った。
 いろいろな意味で、余はこの二人に完敗だ」

 「皆もこの二人を褒めて、寿いでやって欲しい。
 余や東宮、その他の公達の幾多の妨害にもめげず、また政変で立場がさまざまに変わりながらも、ひたむきに互いの想いを貫いた」

 主上…
 あたしは思わず両手で口を覆った。

 主上は「では、皆の者、酒杯を持て」と言い、皆は盃をお膳から取った。
 「二人の幸せな未来に、乾杯!」
 「乾杯!」

 あたしと元信様は、顔を見合わせて、杯を合わせた。
 嬉しくて、涙が止まらなかった。

 元信様はあたしの頭を撫でて、涙を拭いてくれる。
 「嬉しいですね、姫。
 有り難く、皆様からの祝福を受けましょう?」

 あたしは泣きながら頷く。
 こんなふうに、皆から祝ってもらえるなんて…
 こんな日が来るとは、思いもしなかった。

 「ああそうだ。
 酔っ払ってしまう前に、話しておこう」
 と東宮が大きな声で言う。

 「この屋敷は、さきの関白のものでね。
 あの人は普請道楽で、こんなバカでかい土地にいろんな建物を建てて、一部は迷宮のようになっているらしい」

 「まあそれはともかく、この屋敷は何しろ宮殿に近い。
 東宮御所よりも。宮廷のお隣さんと言ってもいいくらいだ。
 で、兄上や皆と話し合って、前の関白を追い出し月子姫の屋敷にすることにした」

 …はあ?
 あたしは、持っていたお箸を取り落とす。
 何を言ってるの?

 「まあできればここの部屋が良いんだが…
 私たちが自由に月子姫に会いに来られる場所にする。
 政治の向きの会議もするし、幾望会もここで引き続き開催する。
 今度は兄上も参加者だ」

 主上はニコニコして頷く。
 他の公達も、うんうんと首肯している。

 「なんですかそりゃ」
 あたしは間抜けな声で呟く。
 隣で元信様がくすくす笑う。

 「我らの月子姫であり続けて頂くために、治部卿に大切な姫を預けるのだ。
 月子姫の望みを叶えたのだから、我らの望みも叶えて頂かなくてはね」
 東宮は悪戯っぽい笑みを浮かべ、片目をつぶってみせる。

 そんなでっかいオマケがついてくるの~…
 あたしは脱力して、両手を床についた。

 そのうち、なんだかよく判らないけど、笑いが込み上げてきた。
 …そっか。
 そうなんだ。

 ものすごく楽しかったこの半年間が、この先一生続くんだ。
 リアルネバーランド。

 「義光が言ってた通りになったね」
 あたしが顔を上げて義光に向かって声をかけると、義光は嬉しそうに「覚えていてくださいましたか」と笑う。

 「さて、今日は宮中、東宮御所、太政大臣家から厨司長が集まって、祝いの膳を作ってくれた。
 太政大臣家の副厨司長が、新たにこの家の厨司長になった。
 月子姫と共に、また新しい創作料理を生み出してくれるだろう」

 東宮が上機嫌に言い、あたしはあっと声を上げた。
 一週間くらい前に、太政大臣家の厨に行ったら料理長がそんな話をしてたわ!
 
 あれって、この家の話だったんだ…
 皆して本当にやってくれたなぁ!
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