三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十一章 露顕と三日夜の餅

10.庭と厩舎

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 かぽかぽと軽快な蹄の音と共に、広い庭を横切っていく。
 いかにもお金のかかっていそうな立派な庭木や庭石や築山を配し、工夫を凝らした庭を進んでいきながら、義光が呟いた。

 「これは…手入れも大変そうですね。
 立派で広大なお屋敷だ」

 そうだねえ…主婦がどこまでこれの維持に関わらなきゃいけないんだろ。
 あたしはちょっと不安になる。

 「こんなお屋敷の女主人になられて、月子姫も大変ですね」
 「え?主人は元信様でしょ?
 あたしは…北の方?」
 
 「ま、対外的にはそうですけどね。
 主上や殿下、私たちはそうは思ってないですよ。
 治部卿殿には申し訳ないけれど」

 いやいやいや。
 あたしは首を横に振る。
 あたしに女主人なんて無理!
 
 元信様の唯一の妻。
 ただそれだけで良いんだ。

 義光はあたしの身体を支えている腕に力を籠める。
 「でもとうとう、貴女は治部卿殿の妻になられたんですね…
 我々は、昨夜は宮中で飲み明かしましたよ」

 うわ、そうなんだ。
 どうりで…
 
 「酒臭いよあんた。
 さっきから気になってたんだけど、そういうことか…」
 あたしが顔をしかめると「つれないなあ!」と嘆く。

 「だけど誰も諦めてないです、貴女を。
 隙あらば…ってとこですかね。
 昨夜は、皆でその新たな決意を確認しあったんです」

 嫌だぁ!
 もういい加減にしてくれ!

 あたしは義光のお腹をグーで殴る。
 義光は大袈裟に「うっ!」と呻き、あたしの方へ寄りかかってくる。
 二人で顔を見合わせて笑い合う。

 「月子姫…やっぱり大好きだ」
 義光はあたしを抱きしめる。
 「だってあんた、結婚するんでしょうよ。
 そんなこと言ってちゃダメでしょ」
 
 「しますよ。
 だけどそれとこれとは話が別です。
 親が決めてきた結婚相手は、向こうもぜんっぜん私のことなんて好きじゃないですから」
 庭の遠くの方を見つめて、義光はさらっと言う。

 ふうん…貴族も大変なんだなあ。
 あたしはちょっと同情した。

 馬場を馬上から見て、厩舎にも行った。
 でかいでかい、両方とも。
 あたしは圧倒されて口も利けなかった。

 「これは、馬好きの治部卿殿が喜ばれますね。
 お二人で遠乗りなども楽しいことでしょう。
 もちろん、私とも遠乗りしましょうね」
 義光も楽しそうに言う。
 
 西の対屋に戻ってくると、義光はあたしを降ろして「では、太政大臣家に行って淡香花を連れてきますね。楽しみにしていらしてください」と言って丹波に乗ったまま駆けて行った。

 おう、よろしく頼むよ。
 あたしが階の上で見送っていると、工事中の部屋から「姫!」と呼ばれて振り返る。
 
 「元信様!…と、あれ?」
 元信様の後ろから、東宮と権中納言様、右近衛大将様が「月子姫、ご機嫌よろしゅう」と笑いながら歩いてきた。

 あたしは「お帰りなさい」と元信様に駆け寄る。
 元信様はあたしを抱きしめて「ただいま」と言ってキスした。

 「月子姫、これからおやつでしょう。
 今日は私が御所から持参しましたよ」
 東宮が笑いながらあたしの手を取り、自分の方へ引き寄せる。

 何だよもう…
 今までと変わらないじゃん!!
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