三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十一章 露顕と三日夜の餅

23.西の対屋にて

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 内侍さんは家人に命じて少輔さんと式部さんを呼び、二人が駆けつけてくると、三人がかりで元信様の装束とあたしの身だしなみを整えてくれた。
 あたしは式部さんに頼んで、首のキスマークを可能な限り白粉で隠してもらった。

 晩秋の陽は既に傾き始め、釣殿には寒さが漂いはじめている。
 「餅つきが終わり、皆様西の対屋にお集まりでございます。
 これから餅撒きが始まりまして、お屋敷の外に設えたやぐらから撒くそうでございます」

 えーっ!見てみたい!
 あたしが無邪気に手を打ち合わせて言うと、何故か女房さん達と元信様は顔を見合わせた。
 
 「姫…それはやめておいた方が宜しいかと」
 元信様は、言いにくそうに話す。
 「姫様のご覧になられるようなものではございませんわ」
 女房さん達も表情を曇らせる。

 何でよ?!
 お祝い事なんでしょ?
 あたしが、この屋敷の主になったっていう(なりたかないけど!)。

 あたしが言い募ると、困ったように顔を見合わせて「…とりあえず、西の対屋に行きましょう」とあたしの手を引いて歩き出した。

 西の対屋はリニューアルされて、新しい木の香が漂っていた。
 すっごい仕事早い!
 だって、露顕したの一昨日だよ?

 「月子姫!」
 といち早く手を上げてあたしを呼んだのは、権中納言様。

 あれ?
 権中納言様の横にいるのは、太政大臣となったお殿様!
 お殿様の前にある、オセロの盤を挟んで向かいにいるのは…元信様のお父様、さきの左大臣。
 元信様のお兄様の定信様が前の左大臣の横にいる。

 元信様が「父上、義父上!」と声をかけながらあたしの手を引いて近づいていく。
 ま、発音はどちらも「ちちうえ」なんだけど、便宜上書き分け。

 「おお、伊都子姫。こんにちは。
 お招きありがとう」
 前の左大臣がにこやかに言ってあたしの手を取る。

 「いらしてくださってありがとうございます…」
 あたしは不得要領のまま、とりあえずお礼を言う。
 周りの公達が笑いをかみ殺しているのが判る。
 ったく、あんたたちのサプライズ好きには、もう呆れたわ…

 「前の左大臣殿とは、良い碁敵になってねえ…。
 屋敷を行ったり来たりで打って居るのだ」
 お殿様が嬉しそうに言う。

 へえ…本当に、馬が合うんだな。
 良かった。

 「しかし、この伊都子姫考案のオセロとやらも、楽しいですな。
 囲碁に比べると、易しくて勝負が早いのが良い。
 太政大臣殿、これからはこれも取り入れましょう」
 元信様のお父様がパチリパチリと駒をひっくり返しながら笑う。

 元信様が盤を覗き込み、ほう、と声を上げる。
 「父上たちと言うより兄上と権中納言様の戦いですね」
 うわ、本当だ。
 すっごい頭脳戦。

 「治部卿殿、私もあなたの『義兄上』になるのですよ」
 権中納言様は整った顔に美しい笑みを浮かべて言う。

 え?
 あたしと元信様は顔を見合わせる。
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