三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第十二章 終わらない物語

7.具体的方策案

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 あたしがどれだけ力説しても、皆が黙っているのであたしは訝しく思って皆の顔を見まわした。
 
 「ちょっと、聞いてるのっ?」
 少し声をあららげる。

 すると、賛成もしくは反対論を考え込んでいるのかと思いきや、皆、唖然としていることが判って、あたしはちょっと慌てた。

 「あの、飢えた民が群がる恐ろしい光景をご覧になって、月子姫は何故、そういうお考えに到達なさったのか…
 あの場でおっしゃったことは、本気でいらっしゃったのですね」
 右近衛大将様が、ため息交じりに言った。

 あったりまえじゃないの。
 あたしは憤慨する。
 何故あの場で嘘や冗談が言えるのよ。
 そっちの方が異常でしょうよ。

 「…判った。
 明日、大臣たちと協議しよう。
 というか、承知させる」
 主上はようやく口を開いた。

 「京職に命じて、鴨川治水のための地図や今までの工事の経緯などを揃えさせる。
 それから『救い小屋』とやらも、どれほどの数や規模が必要なのか皆目見当がつかないので、坊令の坊長にも書類を提出させる。
 あと…なんでしたか」
 主上は急に弱気になったようにあたしを見る。
 
 あら珍しい。
 あたしはちょっと可笑しくなった。
 主上がこういう風に、自信なさそうな顔することもあるんだ。

 「衛生対策ですわ。
 上水道と下水道、街路の側溝の設置。
 それからできれば、治水と一緒に灌漑事業もやった方が、後に農業政策を見直すときにラクだと思います」

 「あのね月子姫、申し訳ないのだけど何をおっしゃっているのか、全然判りません」
 蔵人頭様が無邪気に割って入る。

 皆の顔も、大体似たような表情が浮かんでいる。
 こりゃ、大変だ。

 「誰か、唐渡りの工人とかいらっしゃいませんか?
 平安京は、唐の都の様式を真似て作ったものなのだから、お話を聞けないかしら」
 あたしは主上に訊いてみる。

 「工人…は来ていないが、僧なら居る。
 宮中に滞在なさって居られるから、話を聞いてみよう」
 また自信なさげにまばたきする。

 「あの…できれば月子姫にも同席して頂きたいのだが…」
 扇子を口許に当てて、呟くように言う。

 いやそれは…ヤダ。
 あたしは
 「京職の方々を、ここにお寄越しになっていただけませんか?
 具体的なことを話したいと思いますの。
 大臣たちの説得は、主上にお任せいたしますわ」
 と言ってニッコリ笑った。

 「あ、じゃあ私も右京大夫・左京大夫と一緒にここへ参ろう」
 と東宮がちゃっかり逃げる。

 「『救い小屋』建設に必要な資料集め、私も右衛門督うえもんのかみと共に集めてみます」
 と左衛門督様が元気よく言った。

 「そち達は、宮中に居れ!」
 主上は怒ったように、他の公達に命じる。
 ええー…という空気が流れ、主上は本格的にむくれてしまった。

 あたしは主上の顔が可笑しくて、こらえきれずに噴き出してしまった。
 主上の膨れた頬を指でつついて「飢えた民とわたくしのために、頑張ってくださいまし」と笑う。

 主上はあたしの手をつかんで引き寄せる。
 「何かご褒美がなくてはね?」

 うわ、また面倒なことを…
 でもまあ、仕方ない。主上には頑張ってもらわないと。
 「判りました。何か考えておきますわ」
 
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