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第6話 証拠集め
証拠集めは驚くほどに順調だった。
レウリオが帰って来ている事を知らないエウリカとユーベルは密かに逢瀬を重ねていた。新しい侍女には、レウリオから二人の恋を応援しているように装えと言ってある。
エウリカは邸にいる者達が、自分に同情的だと知っていたので、簡単にそれを信じたようだ。
それから、執事長の方からユーベルにはシシュリカが誤って池に落ちて体調を崩していると伝えて貰った。それを好機と見たらしい……。
ユーベルはシシュリカにクッキーを持ってお見舞いに来る――侍女長に、寝ていますのでと告げられると、土産を渡しておいてくれと言って侍女長にクッキーを手渡し、サッサとエウリカの部屋に向かうのだ。豪華な花束を持って――こんな感じの行動をユーベルは繰り返していた。
「そもそも、あの野郎、体調不良の婚約者に会う気が無いな――?」
地を這うような声を出しながら、レウリオは水晶の中に映る記録を見ていた。
エウリカと密通しているとは言え、婚約者はシシュリカである。シシュリカとユーベルを会わせないようにと指示したのはレウリオであったが、この時までレウリオはユーベルが『婚約者』としての最低限の礼儀を持ってシシュリカに接していると思っていたのだ。
けれど今回の件でユーベルが、密通しただけでは無く、シシュリカへの最低限の礼儀すら行っていないクズだと知ったのだ――……レウリオは今すぐユーベルを殴り殺したい衝動にかられたけれど、それをじっと堪えていた。
そんなにアッサリ終わらせてなるものか……!そんな気持ちで堪えていたのだ。
ユーベルのシシュリカに対する態度は、執事長と侍女長もここまで酷いとは知らなかったらしい。侍女長が青褪めた顔で持って来たブローチ型の記録媒体……そこに映されたユーベルの顔を見れば、シシュリカに会えない事にホッとした後、嬉しそうな笑顔でエウリカの部屋に向かう様子が良く分かるように撮られていた。
「しかも、持って来たクッキーがコレか!」
有名な菓子店のものだ。若い娘が好みそうなものでもあった……けれど。
「体調が悪いと言っている病人に、消化の悪いナッツのクッキーね……?アイツ、本当にシシュに興味が無いんだな……」
レウリオがそう憎々しげに言ったのには理由がある。健康そのもののシシュリカにも、一つだけ気を付けなければならない事があったからだ。――ナッツである。シシュリカはナッツにアレルギーを持っていた。
下手にこれを食べたなら、死ぬ事もありうるアレルギーだ。知っていて渡したのなら、お前など死んでしまえと言っているようなものだろう。けれど、ユーベルの態度から感じるのは、知らずに適当に買って来た物のようにレウリオには見えた。
つまり、婚約者であるシシュリカの事を、ユーベルが知ろうとすらしなかった事を或る意味証明したと言える。
レウリオは閨事はまだ見ていない。侍女からの報告ですでに胸やけがしそうであったからだ。けれど、いつかは見なければならないだろう……。
レーン子爵夫妻が帰って来るのは二日後――レウリオはそれまでに、全ての準備を終わらせなければならなかった……。
____________________________________________________
誤字脱字のご指摘を頂き、ユーベルをレウリオと書いてしまっていた箇所を修正いたしました。
教えて頂き、ありがとうございます!2021.03.30
ユーベルをユージンと書いていた箇所を修正しました。誤字報告、ありがとうございます!(2021.04.02)
レウリオが帰って来ている事を知らないエウリカとユーベルは密かに逢瀬を重ねていた。新しい侍女には、レウリオから二人の恋を応援しているように装えと言ってある。
エウリカは邸にいる者達が、自分に同情的だと知っていたので、簡単にそれを信じたようだ。
それから、執事長の方からユーベルにはシシュリカが誤って池に落ちて体調を崩していると伝えて貰った。それを好機と見たらしい……。
ユーベルはシシュリカにクッキーを持ってお見舞いに来る――侍女長に、寝ていますのでと告げられると、土産を渡しておいてくれと言って侍女長にクッキーを手渡し、サッサとエウリカの部屋に向かうのだ。豪華な花束を持って――こんな感じの行動をユーベルは繰り返していた。
「そもそも、あの野郎、体調不良の婚約者に会う気が無いな――?」
地を這うような声を出しながら、レウリオは水晶の中に映る記録を見ていた。
エウリカと密通しているとは言え、婚約者はシシュリカである。シシュリカとユーベルを会わせないようにと指示したのはレウリオであったが、この時までレウリオはユーベルが『婚約者』としての最低限の礼儀を持ってシシュリカに接していると思っていたのだ。
けれど今回の件でユーベルが、密通しただけでは無く、シシュリカへの最低限の礼儀すら行っていないクズだと知ったのだ――……レウリオは今すぐユーベルを殴り殺したい衝動にかられたけれど、それをじっと堪えていた。
そんなにアッサリ終わらせてなるものか……!そんな気持ちで堪えていたのだ。
ユーベルのシシュリカに対する態度は、執事長と侍女長もここまで酷いとは知らなかったらしい。侍女長が青褪めた顔で持って来たブローチ型の記録媒体……そこに映されたユーベルの顔を見れば、シシュリカに会えない事にホッとした後、嬉しそうな笑顔でエウリカの部屋に向かう様子が良く分かるように撮られていた。
「しかも、持って来たクッキーがコレか!」
有名な菓子店のものだ。若い娘が好みそうなものでもあった……けれど。
「体調が悪いと言っている病人に、消化の悪いナッツのクッキーね……?アイツ、本当にシシュに興味が無いんだな……」
レウリオがそう憎々しげに言ったのには理由がある。健康そのもののシシュリカにも、一つだけ気を付けなければならない事があったからだ。――ナッツである。シシュリカはナッツにアレルギーを持っていた。
下手にこれを食べたなら、死ぬ事もありうるアレルギーだ。知っていて渡したのなら、お前など死んでしまえと言っているようなものだろう。けれど、ユーベルの態度から感じるのは、知らずに適当に買って来た物のようにレウリオには見えた。
つまり、婚約者であるシシュリカの事を、ユーベルが知ろうとすらしなかった事を或る意味証明したと言える。
レウリオは閨事はまだ見ていない。侍女からの報告ですでに胸やけがしそうであったからだ。けれど、いつかは見なければならないだろう……。
レーン子爵夫妻が帰って来るのは二日後――レウリオはそれまでに、全ての準備を終わらせなければならなかった……。
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誤字脱字のご指摘を頂き、ユーベルをレウリオと書いてしまっていた箇所を修正いたしました。
教えて頂き、ありがとうございます!2021.03.30
ユーベルをユージンと書いていた箇所を修正しました。誤字報告、ありがとうございます!(2021.04.02)
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