世間が狭いお陰で変態を釣り上げてしまった。

3.メール受信数１３７件

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……。もう会うことはないと思っていたのに
ここで冒頭の話に戻るわけだ。

「あっああ、…マリア様…私の見えていますか？
　貴女様を思い浮かべるだけこんなに…卑しい私にどうか罰を！！」

画面の向こうからはくぐもった、厭らしい声が聞こえてくる。


あの男の回線を切った後
どうやって調べたのか、毎日　毎日　毎日
飽きもせず駄犬のしつけをしてください。
貴女なしではイケない体になってしまいました。

という風なメールがブロックしても、ブロックしても
送られてくるのだ。


恐怖を通り越して　ただただ面倒臭くなった
私は何回か調教してしまっていたのだ。


でも流石に私の生活衛生上この関係は
良くないと思い　一昨日あたりから一切メールに反応していない。


メールボックスを見ると件数が百を超えとんでもない
数字をたたき出しているが気にしない。ここで負けたら終わりなのだ。


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今日の仕事も無事終わり、
これから帰る支度をしようデスクの周りを整理し
同僚や上司から連絡が入っていないか
スマホを見る。

――メール受信数１３７件。
まただ。
衝撃の男との出会いから１週間
毎日百件を超えるメールを開かずに消すのが私の日課となっていた。


「…はぁ。」

「何ですか？先輩？
　ため息つくと幸せが逃げますよー？」


私の可愛い後輩ももちゃんが心配そうにこちらを見る。
ミルクティー色のふわふわした髪の毛が
彼女によくにあっている。

「幸せねー…」


「えっ！？先輩マジな病み期ですか？
　…よくないですよーそういうの！！
　あっほら？気分転換にでも出かけたらどうですか？」


「気分転換ねー。
　んー家でビール開けて、風呂にでも入ろうかなー」


どこか行く元気もないし、
実際風呂場でビールって最高なんだよね。


「嫌ーーー！！先輩おじさん！！
　そういう時は、男に金払わせて美味しいものに
　食らいつくのが一番なんですよ！！」

「ももちゃんも案外腹黒だねー。」

「いいんですよ、男どもだってキャバに払うと思えば
　安いもんでしょっ！…わかりました。先輩！！」


「ん？」


「私に任せてください！速攻で
　合コンメンバー集めますから飲み行きましょっ！！」



いや、いや、こんな急にいくら何でも無理でしょっ！
っと言おうとしたときにはもう既に遅し
ももちゃんは鬼のように誰かに電話をかけていた。


…さすが、きらきら女子。
私とは違うな。


思わず関心してしまう。
まぁ最悪集まらなくても、たまにももちゃんと二人で飲むのも
イイかもしれない。



ふふっ楽しみになってきた。
私は電話をかけまくるももちゃんを置いて
一足先にロッカールームへ向かった。

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あの後ももちゃんは急いでロッカールームに入り
私を追い越す勢いで支度をした。

そして、支度が終わったかと思うと私の腕を引っ張り
会社の外に出てタクシーを拾った。

「はぁはぁ、先輩てきぱき動かないと
　他の部署の女どもにイケメン掻っ攫われますよ？
　先輩の為に合コンするんですからね！！」


「いや、ごめんごめん。
…それにしてもこんな短時間でよく、人集まったね？」

そう聞くとももちゃんは
得意げな表情で


「今回はレア中のレア！宮岡専務が来るんですよ！！」

宮岡専務…確か30前半の独身。性格も紳士的で
身のこなしもスマート、でもなぜか女性の影がない不思議な人。だっけ？


「それは、それは専務も可哀そうに。
　腹ペコの猛獣に草食動物が一頭ぽつんといるようなものだね」


何人来るのかわからないが私の出る幕はなさそうだな。

「なに、客観視してるんですか？
　先輩にも食らいついてもらわないと！！
　あっ！！…もう着きましたよ先輩。」


ほらっあそこです！と指をさした先を見ると
おしゃれ過ぎないちょうどい居酒屋が見えた。


「おお！美味しそうなところだね！」

「もうっ！！先輩！色気より食い気なんだから
　これから男女の戦場です。先輩もくれぐれ
　傷を負わないように気を付けてくださいね。」

「…戦場って。物々しいな
　まぁなるべくわたし邪魔にならないように
　空気となって美味しいものを食べてるから安心してよ。」

ももちゃんはまだ言い足りなさそうに
私を見るが、一つため息をつくとあきらめて
店内へと足を進めた。


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